クラウドサービスへの大規模なシステム移行をスムーズに進めるには、どの作業から始めるべきなのか。AWS移行を進めるNasdaqのCIOが、クラウドサービス移行の前に検討すべきポイントを説明する。
「自社と既に関係があり、自社のビジネスや技術のニーズを理解しているベンダーと連携して、クラウドサービス移行を進めるべきだ」。米国の新興企業向け株式市場を運営するNasdaqのCIO(最高情報責任者)であるブラッド・ピーターソン氏は、大規模なクラウドサービス移行を検討する企業にこうアドバイスする。
NasdaqとAmazon Web Services(AWS)の連携は13年以上に及ぶ。AWSは米国と欧州の各市場で利用するNasdaqの収益管理システムや、幾つかの市場分析機能をホストしている。
ピーターソン氏は「最も難しい作業から先に取り組む」という、従来のソフトウェア開発の手法に警鐘を鳴らす。「システムの最適化とチューニングは、クラウドサービス移行後の作業だと考える必要がある」と同氏は言う。「開発者はクラウドサービスの能力と限界を把握しつつ、簡単なものでよいので幾つかの成功を体験すべきだ」(同氏)
Nasdaqのクラウドサービス移行における重大な課題は、従来のアプリケーションの設計を再検討し、クラウドサービスのメリットを十分に生かせるようにすることだ。
「従来のアプリケーションをそのまま移行させたり、廃止したりするだけでは、クラウドサービスのメリットを十分に生かせるとは限らない」とピーターソン氏は強調する。構成を変えずに、そのままクラウドサービスに移行させたアプリケーションは「機能追加やインフラの拡大、縮小がしづらくなる可能性がある」とピーターソン氏は言う。クラウドサービスに移行する前に、移行作業やアプリケーションの再設計を最前線で実施できる人員をあらかじめ増員しておくことでスムーズな移行が可能になると、ピーターソン氏は続ける。
クラウドサービスで重要な事業活動を実施することに対して、金融サービス業界の関心が大きくなりつつある。Goldman Sachsは近頃AWSと連携して、金融データ分析システム「Goldman Sachs Financial Cloud for Data」を開始させた。これはGoldman SachsのAI(人工知能)技術とAWSのクラウドサービスを用いた、金融データの分析ツールだ。
「Facebook」を運営するMeta Platformsは、AWSを長期の戦略的クラウドベンダーにすると発表した。Metaによれば、今後の買収先の事業を継続的にAWSで稼働させる。
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