「SAS接続SSD」が使われ続ける理由とは? “容量30TB”で挑むキオクシアの見解112層×SASで勝負するSSD【後編】

キオクシアは容量30TBのSAS接続のSSDを投入する。業界最大規模の容量を持つSSDを提供するに当たって、キオクシアは何にこだわったのか。SAS市場の今後と併せて考える。

2022年06月01日 05時00分 公開
[Adam ArmstrongTechTarget]

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 フラッシュメモリベンダーのキオクシアは、SAS(Serial Attached SCSI)の後継である「SAS-4」(24G SAS)をストレージインタフェースに採用したSSD、「KIOXIA PM7」(以下、PM7シリーズ)のサンプル出荷を2022年3月に開始した。同シリーズの最大容量は30TBを超えている。

 「PCI express 4.0」(PCIe Gen4)や「PCI express 5.0」(PCIe Gen5)といった他の高速インタフェースが出回る中で、キオクシアはなぜSASの次世代規格にこだわったのか。PM7シリーズの特徴を見ながら、SAS市場の今後を探る。

なぜ「SAS接続のSSD」が使われるのか? 30TBを出したキオクシアの見方は

 PM7シリーズは、データ転送速度が毎秒4.2GB、ランダムリード(データの位置を指定した読み出し)で最大72万IOPS(1秒当たりの入出力数)を実現する。前世代の「KIOXIA PM6」(PM6シリーズ)に搭載済みの機能の幾つかは、PM7シリーズも搭載した。例えば、

  • 電源喪失時のデータ保護
  • エラーを特定して正しい状態に修正する「誤り訂正符号」(ECC)
  • ダイ(半導体チップ)の障害回復
  • データ転送時のエラーを防ぐダブルパリティ(データ復元のための2種のコードを使用)

などがある。

 セキュリティも同様で、PM7シリーズはPM6シリーズの機能を引き継いでいる。例えば、

  • データの復号を防ぐ「サニタイズインスタントイレース」(SIE)を搭載
  • ドライブ自体を暗号化する「自己暗号化ドライブ」(SED)を搭載
  • FIPS(米国連邦情報処理標準)のデータ暗号化規格に準拠

などの特徴がある。PM7シリーズはPM6シリーズと同じく、データ暗号化規格「FIPS-140-3」の取得を済ませている。一歩進んで最新規格「FIPS-140-3」の認定取得に向けた申請も実施済みだ。

 PM7シリーズはPM6シリーズと同じフォームファクター(外装サイズ)の2.5型を採用。提供モデルは、1DWPD(DWPDは1日当たりの書き込み保証数)と3DWPDの2種がある。容量は1.6TBから30.72TBまでラインアップしている。

 30.72TBは商用化しているSSDとしては最大規模だ。キオクシアでSSDのプロダクトマネジャーを務めるスティーブ・ガーソー氏は「大容量SSDの需要は一部の企業にはあるが、限定的だ」と話す。30TBのSSDに障害が起これば、復旧までに長い時間がかかるリスクのあることが主な理由だ。

SAS-4普及の見込みは?

 SAS-4のSSDの採用は、ガーソー氏が当初考えていたよりも進んでいる。主にサーバとハイブリッドストレージ(SSDとHDDの併用)分野で順調だという。

 インタフェース規格「SCSI」を策定する業界団体SCSI Trade Association(STA)によれば、PCIe Gen4やPCIe Gen5など他の高速インタフェース規格と比べると、SAS-4は話題性に乏しい。だがSASのエコシステム(相互依存関係にある領域)には多様な機器が関係している。コンピュータと周辺機器を接続するホストバスアダプター、RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)アダプター、各種のケーブルやコネクター、SSD、HDD、ストレージアレイ、サーバなどだ。この相互依存の関係があるので、SASは今後も多種の機器が使用すると考えられる。

 企業がSASを信頼していることもSASへの関心が継続する理由だとガーソー氏はみる。「需要がなければ、ベンダーはSASの次世代インタフェース搭載の製品を開発しない」(同氏)。

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