対面でのやりとりこそが成長の鍵――。こう考える経営者は、コロナ禍が落ち着きを見せる中でテレワークを終了しようと息巻いている可能性がある。だがテレワークは安易に終わらせない方がよい。その理由は。
「『顔を合わせて働くことは、全ての従業員に不可欠だ』という強い経営哲学を持つ経営者や昔かたぎの経営者は、テレワーカーを目の敵にする可能性がある」。調査会社Forrester Researchのバイスプレジデント兼プリンシパルアナリスト、J.P.ガウンダー氏はこう語る。ガウンダー氏によれば、テレワーク導入企業に務める従業員は総じて、テレワークとオフィスワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」をしている。
ガウンダー氏は「テレワーカーは、仕事上の不安が高まりやすい可能性がある」と語る。管理職と顔を合わせる機会が、オフィスワーカーに比べて少ないからだ。「それでも実際にはテレワーカーの方が、オフィスワーカーより生産性が平均的に高いことが分かっている」と同氏は言う。テレワークの方がワークライフバランスは良くなる傾向にあり、通勤時間が発生しないという利点があるという。
経営者がテレワークの選択肢をなくす場合には「注意が必要だ」と、ガウンダー氏はアドバイスする。「ユニークなスキルや、複合的で希少なスキルを持つ従業員は、テレワークを選ぶのに十分な雇用の選択肢を持っている」と同氏は指摘。「こうした従業員は、自身が求める働き方を提供する経営者の下で働く機会を探す」とみる。
勤務形態としてテレワークやハイブリッドワークを選べるようにすることは、その企業の人材採用における強みになる。競合他社に差をつける武器にもなり得る。
従業員をレイオフ(一時解雇)する方便として、企業がテレワークを終了する可能性がある。だがそれは「融通の利く職場を求める人材にとって、企業の魅力が薄れることになる」と、人事コンサルティング会社Workplace Intelligenceでマネージングパートナーを務めるダン・ショーベル氏は指摘する。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が起きている間に、専門的なスキルを持つ人材は、融通の利く勤務形態で働ける職場を優先して選ぶようになった」とショーベル氏は話す。テレワーク終了は、企業の短期的なニーズを解決する場合もある。だが、企業を競争上、不利な立場に追いやる可能性もあるとショーベル氏は述べる。
第4回は、テレワークを継続した場合と、終了した場合、それぞれで起こり得る企業にとってのリスクを紹介する。
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