クラウド移行も想定した「ファイルサーバ」 オハヨー乳業が選んだ方法は?クラウドを見据えたファイルサーバ集約【中編】

グループ全社で63台あったファイルサーバを集約したオハヨー乳業のグループ全社。新ファイルサーバの軸になった要素の一つが、クラウドサービスだ。どのような仕組みなのか。

2023年03月10日 05時00分 公開
[遠藤文康TechTargetジャパン]

 テレワークを中心にした働き方が普及したり、クラウドサービスの利用が拡大したりするのに応じて、企業の「ファイルサーバ」の在り方も変わってきた。乳製品メーカーのオハヨー乳業と菓子メーカーのカバヤ食品を傘下に持つ日本カバヤ・オハヨーホールディングスは、51拠点に設置していたファイルサーバを8拠点まで集約。それと同時にMicrosoftのサーバOS「Windows Server」をファイルサーバ構築に使うことから脱却し、運用を大きく変更した。

新ファイルサーバの軸は“クラウドサービスかオンプレミスか”

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 前編『「脱Windowsでファイルサーバ集約」をオハヨー乳業のグループ全社が決めた理由』で紹介した通り、日本カバヤ・オハヨーホールディングスが採用したのは、NetAppのストレージOS「ONTAP」を中心とするストレージ製品群だ。選定に当たっては、Dell Technologiesのストレージアレイ「PowerScale」の他、従来と同様にWindows Serverと汎用(はんよう)サーバで構築する選択肢も検討した。

 日本カバヤ・オハヨーホールディングスがNetAppの製品群を採用したのは、グループ全社が目指すIT運用の方針との親和性が良かったことが理由だ。「今後のクラウドサービス利用やAI(人工知能)技術の活用を視野に入れながら、具体的な活用方法を検討できたことが決め手になりました」。グループ全社のIT運用を担うリンク&リンケージで、IT事業部の業務を統括する難波 毅氏は、そう説明する。

 集約用のファイルサーバとして、日本カバヤ・オハヨーホールディングスはNetAppのストレージアレイ「NetApp AFF A250」(以下、AFF A250)と「NetApp FAS2720」(以下、FAS2720)をデータセンターに配置した。AFF A250はSSDのみ、FAS2720はHDDのみを搭載する。アクセス頻度の低くなったデータを、AFF A250からFAS2720へ自動的に移動させる「データ階層化」を実現した。

 難波氏によれば、FAS2720は将来的にクラウドサービスの活用範囲を広げることを想定した設計を採用している。FAS2720は、Amazon Web Services(AWS)のオブジェクトストレージ「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)との互換性を持たせる機能「ONTAP S3」を利用。データはAmazon S3互換のプロトコルを介してAFF A250とFAS2720の間を移動する。Amazon S3互換のストレージインタフェースを採用しているため、「FAS2720の役割をクラウドサービスに移行させることになっても、切り替えの作業は容易です」と同氏は話す。

 バックアップおよびDR(災害対策)用として日本カバヤ・オハヨーホールディングスが使うのも、クラウドサービスだ。具体的にはONTAPをクラウドサービスで稼働させるNetAppのソフトウェア「NetApp Cloud Volumes ONTAP」を、Microsoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」で利用し、ファイルサーバのデータをMicrosoftのオブジェクトストレージ「Azure Blob Storage」で冗長化する構成を採用。NetAppのレプリケーションソフトウェア「SnapMirror」を介して、データセンターのファイルサーバからAzure Blob Storageへ、データを転送する仕組みだ。

 日本カバヤ・オハヨーホールディングスがクラウドサービスの利用を重視するのは、事業方針の変更をすぐにITシステムに反映しやすい特性があるからだという。「“明日にでも変更できる”という俊敏な体制が、グループ全社の今後において、より重要になる可能性を見据えています」(難波氏)

クラウドサービスを使ってデータ分析にも着手

 日本カバヤ・オハヨーホールディングスがAzure Blob Storageで保管するデータは、バックアップやDR用として存在するだけではなく、同社のデータ分析用のデータソースになる。難波氏は「ファイルサーバ集約の目的は単にデータを集約するだけではなく、そのデータとAI技術を使って、エンドユーザーに気付きを与えることが目的の一つです」と説明する。

 リンク&リンケージでファイルサーバの移行作業を担当した野谷怜志氏は、「ファイルサーバの集約によってデータを整理でき、データ分析の取り組みを進めやすくなりました」と話す。データ分析の取り組みでは、例えば社内で成功したプロジェクトについて、会議頻度や作成するファイルの種類といった傾向をデータから抽出し、プロジェクトが成功する要因を分析する。その結果として得られた知見やノウハウを、各プロジェクトを進めるグループ内の関係者に提案できるようにすることが狙いだという。


 後編は、日本カバヤ・オハヨーホールディングスがファイルサーバの更改によって得た成果や、同社の今後の方針を紹介する。

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