香港に本社を置く保険会社AIA Groupが、「クラウドファースト」の方針の下でシステムの全面的なクラウド移行を進めている。同社がこのシステム移行において重視するポイントとは。
さまざまな個人情報を抱える保険会社は、セキュリティ確保の観点からクラウドサービスの導入には慎重になりがちだが、AIA Group(AIA)は違う。香港に本社を置き、アジアを中心に保険事業を展開する同社は、グループ全体でシステムのクラウド移行を進めている。同社のクラウドサービス活用の方針とは。
AIAは、ITインフラとしてクラウドサービスを優先的に採用するIT戦略「クラウドファースト」を掲げ、2023年3月時点でITインフラの86%をクラウドサービスに置き換えた。需要に応じてシステムを拡張するといった取り組みを通じて、同社は1カ月で13億件の保険取引件数を達成したという。
同社のクラウド戦略を支えるのは、「Technology」(技術)、「Digital」(デジタル)、「Analytics」(分析)の頭文字を取った「TDA」(Technology, Digital and Analytics)という方針だ。特に顧客エンゲージメント(顧客とのつながり)や見込み客の開拓(リードジェネレーション)の領域でTDAを重視し、事業の成長や生産性の向上、効率性を促進する。
顧客との接点をデジタル化する他、人工知能(AI)技術やデータ分析技術を活用し、AIAは顧客からの要求に迅速に対処できる体制にすることを重視している。そのためには、新たなシステムの要件を満たすITインフラが必要になる。同社は、x86系サーバで稼働させてきたシステムを全面的にクラウドサービスに移行してきた。この取り組みにより、従来使用してきた技術のうち、継続して使用している技術は8%を下回る状況になったという。
中編は、AIAのクラウド移行を推進するために、AIAがどのような取捨選択をしたのかを探る。
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