システムのクラウド移行を進める保険会社AIA Group。マルチクラウドの活用やベンダーロックイン回避の対策などについて、同社でクラウド移行を推進するディレクターに話を聞いた。
香港に本社を置き、アジアを中心に事業を展開する保険会社AIA Group(AIA)は、2023年3月時点でシステムの86%をクラウドサービスに移行した。同社でエンジニアリングおよびデリバリー(クラウドとインフラ)担当ディレクターを務めるビカス・バンダリ氏に、クラウドサービスを利用する上で重視する方針を聞いた。
バンダリ氏によると、AIAはオンプレミス型のプライベートクラウド(リソース専有型のクラウドインフラ)で幾つかのアプリケーションを稼働させていた。そうしたアプリケーションは、大きな変更を加えることなくスムーズにパブリッククラウド(リソース共有型のクラウドサービス)に移行できた。同氏はこの取り組みの他に、データベースを仮想マシン(VM)からPaaS(Platform as a Service)での稼働に切り替えたと付け加える。
AIAは複数のクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」を採用している。クラウドサービス群「Alibaba Cloud」を利用している中国支社を除き、同社はMicrosoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」を主要クラウドサービスとして使っている。クラウドベンダーの選定に際しては、支社が設置されている国や地域ごとの規制要件、業務内容とクラウドサービスとの整合性といった要素を考慮しているという。
自社のサービス提供に深刻な影響を及ぼす可能性を持つダウンタイム(停止時間)の軽減も、クラウドサービス選定における重要なポイントだ。AIAは複数のリージョンとアベイラビリティゾーン(リージョン内のデータセンター)を活用してシステム群を構成している。
特定のクラウドサービスの仕様や技術に縛られてしまう「ベンダーロックイン」の懸念に対して、AIAはどのような対策を講じているのか。バンダリ氏によると、AIAはコンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」をはじめとしたオープンソースソフトウェア(OSS)を幅広く活用しているという。クラウドベンダー1社に依存するリスクを最小限に抑える取り組みを実施しているのだ。
後編は、「クラウドファースト」を成功させるためにAIAが重視した要素を解説する。
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