銀行のデジタル戦略において、クラウドサービスの重要性が高まっている。クラウドサービス利用にどのような傾向があり、銀行はクラウドサービスへの移行をどのように進めるのか。
調査会社IDCによると、アジア太平洋(APAC)地域の銀行のデジタル戦略において、クラウドサービスの重要性が高まっている。銀行のクラウドサービス利用には、ある傾向が見られる。
IDCで金融分野の調査を担う組織IDC Financial Insightsのアソシエイトバイスプレジデント、マイケル・アラネタ氏によると、銀行は特に基幹システムである勘定系システムや、その関連アプリケーションのクラウドサービス移行を検討している。「勘定系システムほどミッションクリティカルなアプリケーションはない」とアラネタ氏は語る。
勘定系システムにおけるクラウドサービス利用には2つの流れがある。1つ目は、デジタルバンキングのサービスを立ち上げたり、デジタル利用のみを前提にしたアプリケーションを構築したりするような銀行によるものだ。アラネタ氏は、こうした取り組みを進める銀行は率先してクラウドサービスを利用する傾向にあるとみる。
2つ目は、レガシーアプリケーションの最新化に取り組む銀行によるものだ。例えば、従来はモノリシック(一枚岩的)だった預金や貸付、決済のような主要機能の仕組みを、「マイクロサービスアーキテクチャ」にリファクタリング(動作を変えずに内部構造を書き換えること)する動きがある。マイクロサービスアーキテクチャとは、複数の小規模サービスを組み合わせて1つのアプリケーションを構築する仕組みを指す。銀行はレガシーアプリケーションのリファクタリングを進め、その後、段階的にクラウドサービスに移行させる。
約200万人の顧客を抱えるBendigo and Adelaide Bankは、重要なアプリケーションのクラウドサービス移行に注力しているオーストラリアの銀行だ。同行は利用する技術の最新化に取り組む。その一環で、「レンディングプラットフォーム」(貸付や融資などの金融サービス事業者のアプリケーションを提供するクラウドサービス)を構築したり、以下のような方針を取り入れたりしている。
Bendigo and Adelaide Bankはクラウドサービスへのアプリケーション移行により、業務効率化の成果を出している。同行で最高情報責任者(CIO)を務めるアンドリュー・クレスプ氏は、「重要な決済機能についてもクラウドサービスを利用することで、数週間かかっていた処理時間を数時間にまで短縮することができた」と語る。
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