船舶の乗客と従業員の安全を確保するためには、映像による監視システムが必要になる。そのシステムを維持するため、オーストラリアのフェリー事業者は5Gを導入した。
オーストラリアのフェリー事業者Transdev Sydney Ferries(TDSF)は、船舶に「CCTV」(閉回路テレビシステム)や、緊急時に外部に救助を求める「緊急ヘルプポイント」(Emergency Help Point)システムを設置している。
同社が保有している船舶は1日で最大330GBのCCTV映像を生成する。これは動画配信サービス「Netflix」が提供するHD画質の映画約100本分に相当する。TDSFは「4G」(第4世代移動通信システム)ではこれらのシステムに必要な通信速度と帯域幅(通信路容量)を確保できないことから、「5G」(第5世代移動通信システム)への移行を決定した。
TDSFは、5G導入に関してITコンサルティング企業Australian Sentinelの協力を得て、ネットワーク機器ベンダーCradlepointが提供する5Gルーター「R1900 Series」とネットワーク管理システムの「NetCloud Service」などを導入した。
緊急ヘルプポイントシステム用のIPビデオ監視は、既存の設備を継続して利用。その設備をNetCloud Serviceと連携させることで、TDSFのIT部門は1つのダッシュボードを使って遠隔からでもネットワークの状況を監視できるようになった。
TDSFは5Gを導入することで、鮮明な画質の映像を船舶から運航管理センターにほぼリアルタイムに伝送できるようになった。最適な条件ならば、同社の運航管理センターは1時間分の映像を5分でダウンロードできる。ダウンロードの高速化により、同社は乗客からの苦情や意見の約70%を2営業日以内に解決できるようになった。
第4回は、TDSFが5Gの導入によって映像伝送以外にどのようなメリットを得たのかを紹介する。
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