使われ続ける「Zoom」はもう“単なるWeb会議ツール”じゃない?脱コラボレーションツール化するZoom【第1回】

コラボレーションツールベンダーZoom Video Communicationsの、EMEAにおける売上高は減少傾向にある。同社が今後も事業の成長を継続させるためには、何が鍵になるのか。EMEA責任者の見方は。

2023年09月08日 07時15分 公開
[Cath EverettTechTarget]

 コラボレーションツールを提供するZoom Video Communicationsにとって、「Microsoftの製品を使用しない」「Microsoftの製品が好きではない」と考える企業の社内コミュニケーションを、いかに支えられるかが鍵になる。Zoom Video CommunicationsでEMEA(欧州、中東、アフリカ)の責任者を務めるフレデリック・マリス氏は、「ベンダーとして成功するには欧州市場が重要だ」と語るが、EMEAにおける同社の売上高は、米国市場に比べて楽観視できる状況ではない。

 Zoom Video Communicationsに入社する前、マリス氏は「AutoML」(自動機械学習)を専門とするAI(人工知能)ベンダーDataRobotでEMEA担当のバイスプレジデントを務めていた。企業としての成長を促進するためには、EMEAにおけるさまざまな業務を監督し、包括的な視野で首尾一貫した計画を立案する人材が必要だとZoom Video Communicationsが判断したと同氏は捉えている。では今後、「Zoom」はどうなるのか。

今後も使われる「Zoom」は単なる“Web会議ツール”じゃない?

 マリス氏は、販売パートナーが売上高の創出に大きな役割を果たすと考えている。製品のローカライズ、セキュリティやデータ主権(データの制御と管理に関する権利)の機能強化も視野に入れている。欧州での売上高が減少傾向にあるZoom Video Communicationsにとって、売上高を増加に転じさせることが重要だ。

 Zoom Video Communicationsの2023年度(2022年2月~2023年1月)の売上高は、米国市場では前年同期比10%増を記録。一方、EMEAでは同9%減となった。原因は、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機や、コンシューマー向け事業の不振などにある。アジア太平洋地域の売上高は5%減だった。

 2024年度第1四半期(2023年2~4月)もEMEAにおける同社の売上高は落ち込み、前年同期比8%減だった。この落ち込みは、ロシアによるウクライナ侵攻に加えて、従業員の約15%に当たる1300人を削減する計画が遅延したことなどに起因するものだ。

 Zoom Video Communicationsは2つの課題に直面している。コラボレーションツール市場における競争激化と、企業としての成長の鈍化だ。投資情報誌「Investor’s Business Daily」は、同社が将来成功を収めるかどうかは、同社が提供してきた既存のWeb会議ツールを、顧客のビジネスを強化するための多様なツール群に変えることができるかどうかに懸かっていると指摘する。

 マリス氏によると、法人市場での同社の売上高は増加傾向にあるという。2024年度第1四半期は前年同期比13%増だった。総売上高に占める法人市場の比率は、前年同期は52%だったのに対し、2024年度第1四半期は57%に上昇した。「法人市場でZoomの魅力を高め続けることが重要だ」とマリス氏は語る。


 第2回は、Zoom Video Communicationsがコラボレーションツールを提供するだけのベンダーから脱却しようとする取り組みを紹介する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

事例 日本ビジネスシステムズ株式会社

SharePointを活用している? Microsoft 365ユーザーなら押さえたい活用の秘訣

Microsoft 365に搭載されている「SharePoint」は活用できているだろうか。製品名は知っていても、その機能やメリットが分かっていないという声もよく聞かれる。そこで実際の活用事例を基に、活用のポイントを紹介する。

事例 日本ビジネスシステムズ株式会社

直感的な社内ポータルに刷新してアクセスが向上、千歳コーポレーションの事例

創立60周年を機に抜本的な働き方改革推進に乗り出した千歳コーポレーション。その一環として取り組んだ社内ポータルの刷新により、コンテンツへの直感的・迅速なアクセスを実現。情報共有やコミュニケーション活性化につながっている。

製品資料 株式会社ネオジャパン

ファイル共有の課題、容量問題やPPAP問題を解消するための方法とは?

ファイル共有手段として多くの企業が利用しているメールだが、大容量ファイルの扱いやPPAP問題など、多くの課題が存在する。本資料では、その解決策として注目されるグループウェアの機能を取り上げ、製品選定のポイントを解説する。

製品資料 オリックス株式会社

DXの第一歩、「紙文書のデジタル化」をオンラインストレージから進める理由

請求書や契約書などの紙文書のデジタル化は、業務効率化に欠かせない取り組みの1つだ。ただ、その取り組みがかえって現場の負担を増やすケースもある。そこで注目したいのが、文書管理に役立つオンラインストレージサービスだ。

製品資料 オリックス株式会社

多様な文書を一元管理する文書管理サービス、選定に当たって留意したい点とは?

紙文書のデジタル化が進む中、社内に散らばる多様な文書を効率的に管理すべく文書管理サービスを導入する企業が増加している。多種多様なサービスがある中、自社に最適なものを選ぶためには、どのような点に留意したらよいだろうか。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。