企業が複数のSaaSを利用するとき、データの保管場所や管理手法がばらばらになればデータ活用は簡単ではなくなる。こうした課題を解消するために、市場にはどのような製品が登場しているのか。
一般的な企業は何種類もの異なるベンダーのクラウドサービスを利用している。複数のツールを利用することで、管理の複雑さが増したり、データのサイロ化(データの分散)を招いたりするリスクがある。「データのサイロ化が進むと、事業の意思決定を不完全な情報を基にせざるを得なくなる可能性がある」。コンテンツ管理システム(CMS)を手掛けるContentstackで製品およびエンジニアリング担当のバイスプレジデントを務めるコナー・イーガン氏はこう指摘する。
クラウド分析プラットフォームを提供するAlteryxは、2023年3月から4月にかけて企業の意思決定に関する調査結果を実施し、その結果を公開している。この調査によると、英国の企業は自社のデータの保管場所や管理手法がばらばらなことを原因とした「分析のまひ」状態に陥っており、洞察に基づいて迅速に判断を下すのに苦労しているという。企業が戦略的判断を下す際には、その半数以上(55%)が平均で4週間もの時間を要していることも明らかにしている。
データのサイロ化を克服することはデータを複数のシステム間で共有する際に重要だが、この際にセキュリティ対策も検討する必要がある。複数のインフラでデータが移動する際にさまざまなツールやサービスを経由することで、予期していなかったトラブルが生じるリスクがある。システムを機能や用途ごとに分割し、状況に合わせて組み替えられるようにする利用形態である「コンポーザブルアーキテクチャ」を採用して、種類の異なるデータを別のシステムに分けることが、セキュリティリスクの低減に役立つとイーガン氏は話す。こうすることでデータ侵害が発生しても、侵入者は特定のシステムで管理されているデータにしかアクセスできなくなるため、他のシステムは保護できる。「モノリシック(一枚岩)なシステムは、侵入者が単一の侵入経路でシステム全体にアクセスできるようになることからセキュリティリスクが上がる」とイーガン氏は補足する。
データのサイロ化が課題となっても、SaaS(Software as a Service)の普及は続くと考えられる。調査会社IDCが2023年初頭に公開したエンタープライズアプリケーションの市場調査結果によると、SaaSをはじめとしたエンタープライズアプリケーション市場は2022年からの5年間で8%の年平均成長率(CAGR)を記録しており、2026年には市場規模が3852億ドルに到達する見込みだという。
IDCでエンタープライズソフトウェアのグループバイスプレジデントを務めるミッキー・ノース・リッツァ氏は、この調査結果について次のように語っている。「ソフトウェアの使用方法と実装方法は、SaaSの登場によって根本的に変化している。現在はAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)や、最小限のソースコード記述またはソースコードの記述なしのローコード/ノーコード開発、ビジネスプロセスオートメーション(BPR)などの技術によって、アプリケーションが実行できる作業は高度化している」
こうした変化は、SaaSのデータ管理の複雑さを緩和するわけではない。データの統合は今後も対処が必要な課題になる。システム間でデータ連携をするためのコネクターツールが市場に増えつつあることは、SaaSによってデータが分断されるという問題を克服するニーズが企業の間で高まっている証しだ。
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