業務効率を上げるはずのITツールがタイムパフォーマンス(タイパ)を下げる――ハイブリッドワークにおける残念な実態を、あるレポートが明らかにした。企業が対策すべきこととは。
ソフトウェアベンダーScalable Softwareは、調査レポート「2024 DIGITAL EMPLOYEE EXPERIENCE (DEX) REPORT EXPECTATION VS REALITY FOR KNOWLEDGE WORKERS」を公開した。同レポートは、従業員デジタル体験(Digital Employee Experience:DEX)の質が業務に及ぼす影響に注目している。DEXとは、ITツールの使用感や使用方法を測定し、それが従業員の業務生産性や満足度に寄与する度合いを考察する概念だ。
“ITツールの使い勝手”という一見するとささいな要因が、ハイブリッドワーク(テレワークとオフィスワークの組み合わせ)の生産性やタイムパフォーマンス(タイパ)にどれほどの影響を及ぼすのか。
調査は2023年11月、Scalable Softwareの委託先である調査会社Censuswideが実施した。対象者はハイブリッドワークが可能な英国企業(従業員数500~5000人以上)に勤めるナレッジワーカー(知識労働者)2005人だ。
ハイブリッドワーク中の業務効率に関する課題については、40%の回答者が「業務に必要なアプリケーション全てにアクセスできない、または特定のアプリケーションやデータにアクセスできないために業務を難しいと感じる」と答えた。この傾向は従業員数1001~1500人の企業(54%)と2001~3000人の企業(55%)において特に高かった。
この課題を理解するためのキーワードが「デジタルフリクション」だ。調査会社Gartnerはデジタルフリクションを「仕事でデータやITを活用することで発生する、不必要な労力」と定義している。これがDEXを低下させる要因の一つだとも指摘している。
Scalable Softwareのレポートが言及するデジタルフリクションの実例は以下の通りだ。
ITツールの利用によって無駄な労働時間が発生している可能性もある。レポートによると、適切なITツールを使えないためにナレッジワーカー1人当たり週2.72時間の無駄な労働時間が発生する可能性がある。ITツールが使い物にならない、動作が遅い、使いにくい設計といった理由では週平均2.83時間の無駄な労働時間が発生し得るという。合計すると週5.55時間を浪費することになる。数千人の従業員を抱える企業であれば、従業員が浪費した時間の合計は膨大な長さになる、とScalable Softwareは指摘する。
IT部門のパフォーマンスに関する設問では、回答者の62%が「従業員それぞれの働き方を理解していない、もしくは個人に合ったサービスを提供していない」と答えた。2021年の調査結果では49%であり、増加傾向が見られる。
43%の回答者が「低質なITツールが仕事の満足度を下げている」と回答。この割合は2021年時点(38%)より高い結果となった。29%の回答者は「離職を考えるようになった」と答えており、この割合も2021年の18%から増加した。
レポートはIT部門と人事部門のリーダーに対して、特に景気が後退している現状において速やかに方策を講じ、無駄な労働時間を減らすよう訴える。かつて「未来の働き方」としてもてはやされたハイブリッドワークが「業務生産性を下げる原因という汚名を着せられている」と指摘するのは、Scalable Softwareの共同創設者兼エグゼクティブチェアマンの共同創設者マーク・クレスウェル氏だ。
「従業員の業務生産性を下げているのはハイブリッドワークではない。従業員がどこで働いたとしても、低質なDEXは生産性向上の足かせになる」。クレスウェル氏はこう指摘する。事実、回答者の半数は「業務の生産性を下げているのは低質なDEXだ」と回答している。
2024年はオフィス回帰に突き進むか、テレワークを続けるべきかという論争が激化する、とクレスウェル氏はみる。「従業員をつなぎとめるには、DEXや生産性の計測方法を進化させる必要がある。従業員がどこでどう働くかを画一的なルールで規定するのは時代遅れだ」(同氏)
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