アプリストア“高過ぎる手数料”訴訟 なぜAppleは勝ち、Googleは負けたのか?待ち受けるのは波乱か?

オンラインゲーム「フォートナイト」の開発元Epic Gamesは、GoogleとAppleが独禁法に違反しているとして両社を提訴した。明暗が分かれたその判決がもたらすIT業界の末路とは。

2024年03月14日 10時30分 公開
[Makenzie HollandTechTarget]

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 GoogleやAppleをはじめとする大手ITベンダーは、その公式アプリケーションストア(以下、アプリストア)の運営において極めて重要な時期を迎えている。今後の大手ITベンダーの動きを左右する可能性があるのが、オンラインゲーム「Fortnite」の開発元Epic Gamesが起こした訴訟だ。

 Epic Gamesはアプリストアを運営するGoogleとAppleのそれぞれを、手数料や決済システムの利用に関して反トラスト法(独占禁止法)違反があるとして提訴した。GoogleとAppleの訴訟にはそれぞれ対照的な判決が下った。いずれにしてもITベンダーは、今後の活動を計画する上でこれらの訴訟による影響を注視せざるを得ないと業界関係者は見ている。

 争点となったのは、Appleのアプリストア「App Store」とGoogleのアプリストア「Google Play」において、アプリ配信に最大30%の高額な手数料がかかる点や、アプリ内決済に他社の決済システムを採用できない点だ。

Appleの訴えは認められ、Googleは敗訴――何が判決を分けたのか?

 2021年9月、連邦地方裁判所のイボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ判事はAppleの主張をおおむね認める判決を下した。Appleに対する申し立て10件のうち9件を、反トラスト法違反に該当しないとした。一方で2023年12月、Googleの裁判では、Google Playの運営が反競争的行為に該当するとの判決が下った。

 GoogleとAppleが提訴された理由は似通っているにもかかわらず、判決は異なるものだった。その理由についてジョージワシントン大学競争法センターのディレクターを務めるウィリアム・コバチッチ氏は、「Appleの裁判は判事が審理したのに対し、Googleの裁判は陪審員が審理した点にある」と指摘する。陪審員を務める一般市民は、判事とは異なる仕方で証拠を解釈する可能性がある。

 Googleは控訴の構えを見せているが、同社はGoogle Playの運営に一部変更を加える計画を明らかにしている。これは別の訴訟を受けてのものだ。Google Playストアの独占禁止法違反を巡り、米国の36州とコロンビア特別区が2021年にGoogleを提訴し、双方は2023年9月に和解していた。

 この和解を受け、Googleは「サイドローディング」(専用アプリストア以外からアプリをインストールすること)のプロセスを簡素化する。アプリ開発者は、Google Playの課金システムと併せて別の課金オプションを導入できるようになる見込みだ。Googleは、消費者のために使われる和解基金に7億ドルを拠出することにも同意した。

GoogleとApple、大手ITベンダーはどう出るのか

 「Googleの敗訴がAppleのアプリストア運営に直接影響することはないが、それでもAppleはGoogleの今後に注視せざるを得ない」。こう指摘するのは、ジョージワシントン大学競争法センターのディレクターを務めるウィリアム・コバチッチ氏だ。

 Appleは一部の判決でEpic Gamesに敗訴している。従来Appleはアプリ開発者に対し、App Store以外の支払い方法を告知することを禁じていた。2021年9月、ロジャーズ判事はこのポリシーを廃止すべきだとの判決を下した。

 「今後Appleは別の原告団から提訴される可能性があり、関連する訴訟の動向には関心を持つはずだ」とコバチッチ氏は指摘する。Epic GamesとApple、Googleの一連の訴訟はまだ完全には終結していない。「他のITベンダーや競争法の政策に携わる組織にとって、重要な判例が出てくる可能性がある」と同氏は話す。

 2024年は、これまで市場を独占してきた大手ITベンダーに逆風が吹くと予測される。欧州連合(EU)は、大手ITベンダーによる市場独占を防ぐことを目的とした「デジタル市場法」(DMA:Digital Markets Act)や「デジタルサービス法」(DSA:Digital Services Act)を施行している。「文字通り、大手ITベンダーの行く手にはさまざまな試練が待ち受けている」(コバチッチ氏)

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