SSDベンダーのMicron Technologyは、汎用インタフェース規格に「PCIe 5.0」を採用したSSDを提供する。どのようなメリットと用途が見込まれるのか。
汎用(はんよう)インタフェース規格「PCI express 5.0」(以下、PCIe 5.0)を備える「SSD」のラインアップが充実してきている。Micron TechnologyはキオクシアやSamsung Electronicsの同様のSSDとは一線を画したSSDを提供する。インタフェースを進化させることでMicronが見込んでいるメリットは、データの読み書きが速くなることだけではない。
Micron Technologyの「Micron 9550」は、AI(人工知能)技術向けなどの用途でデータ読み書きのパフォーマンスを向上させると同時に、エネルギー使用量の削減を目指したSSDだ。同社にとっては初のPCIe 5.0準拠のSSDとなる。
Micron 9550が焦点を当てる用途の一つは、データをGPU(グラフィックス処理装置)に転送する必要がある「AIモデルのトレーニング」など、高速にデータを転送する必要がある用途だ。Micron 9550は最新のインタフェースであるPCIe 5.0を採用することで、その帯域幅(伝送路容量)とスループット(データ転送速度)は大幅に向上する。前モデル「Micron 9400」が搭載する汎用インタフェース「PCI express 4.0」(以下、PCIe 4.0)と比較すると、PCIe 5.0の帯域幅とスループットは2倍になる。
半導体市場を調査するObjective Analysisでゼネラルディレクター兼半導体アナリストを務めるジム・ハンディ氏によると、プロセッサとストレージの間のデータ移動が高速になるほど、タスクの処理も早くなる。この特性は、特にAI関連のタスクを実行する際に効果が表れると考えられる。
Micron Technologyによると、Micron 9550はPCIe 5.0のインタフェースを搭載することで、シーケンシャルリード(連続したデータの読み取り)の速度は14GBps、シーケンシャルライト(連続したデータの書き込み)の速度は10GBpsを実現する。IOPS(1秒当たりの入出力)ではランダムリード(不連続なデータの読み取り)で330万IOPS、ランダムライト(不連続なデータの書き込み)は40万IOPSになる見込みで、同社は特にAIアプリケーションをはじめとしたデータ読み書きの高速性が求められる用途で役立つと強調する。
Micronは、既に一部の顧客向けにMicron 9550のサンプル出荷を開始している。Micron 9550の容量は最大30.72TBとなっている。メモリセル(記憶素子)を232層に積層したNAND型フラッシュメモリを採用することで、パフォーマンスを向上させながらも同程度の容量のSSDとも競争できる価格になるとMicronは説明する。
AI関連のアプリケーションの利用が広がるなどの市場の変化がある中で、ストレージ技術は絶え間なく進化を続けている。「急速に変化する要件に対処するため、SSDベンダーが新しい製品の開発を急いでいる」。調査会社IDCでアナリストを務めるジェフ・ヤヌコビッチ氏はそう語る。
MicronはMicron 9550を発表することで、すでにPCIe 5.0準拠のSSDを発表していたキオクシアや、Samsung Electronicsと肩を並べることになった。「今後もPCIe 5.0準拠の新たなSSDが登場し、市場は成長の一途をたどるだろう」(ヤヌコビッチ氏)
次回は、PCIe 5.0に移行する意義を含めて、Micron 9550が市場に与える影響を考える。
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