「RAID 1」と「RAID 5」の違いは? パフォーマンスやコストで比較HDD、SSDの運用基礎知識

ストレージの冗長性を確保する「RAID 1」と「RAID 5」は、どちらか一方が全てにおいて優れているわけではない。幾つかの観点で比較することで、どちらがより適しているのかを判断できるようになる。

2024年12月20日 05時00分 公開
[Brien PoseyTechTarget]

 HDDやSSDのデータ保存の信頼性を確保したり、読み書きのパフォーマンスを高めたりするために、さまざまな組織が「RAID」(Redundant Array of Inexpensive Disks)を利用している。RAIDは簡単に言えば「ストレージの冗長性を確保するための技術」だが、その種類は幾つもあり、適切なパフォーマンスの要件や予算によって適切なRAIDは変わる。本稿では代表的な「RAID 1」と「RAID 5」について学んでおこう。

「RAID 1」と「RAID 5」の違い

 RAIDは「Redundant Array of Independent Disks」の略である通り、複数のHDDを組み合わせて冗長性を確保するために生まれた技術だ。そのうち種類の一つであるRAID 1とRAID 5は、冗長性確保のための選択肢として広く選ばれている。データ保護において、冗長性を確保することは非常に重要であり、データのコピーが多ければ多いほど、データ損失のリスクは低くなる。コピーの多さはRAIDの種類を分ける一つの要素になる。

 RAID 1は「ミラーリング」とも呼ばれる。全てのデータを複数のHDDにコピーして保存する方式であるため、1台が故障しても別の1台に完全なコピーが残っている状態になる。

 RAID 5は「分散パリティ」とも呼ばれる。データを複数のHDDに分散して保存し、各HDDには主データとともに「パリティ」(2進数の誤り検出符号)情報も格納する。1台のHDDが故障した場合でも、パリティ情報があればストレージアレイは正常に機能し続けられる。故障したHDDの交換時には、パリティ情報を使用して、新しいHDDにデータが自動で書き込まれる。

 ストレージやバックアップの管理者は、RAID 1とRAID 5のいずれかを選択する際、以下の要素を考慮しなければならない。

  • 冗長性
  • 必要なディスク(ストレージ)台数
  • コスト効率
  • 読み書きパフォーマンス
  • フォールトトレランス(耐障害性)
  • 構成の複雑さ

 RAID 1とRAID 5のどちらかが客観的に優れているわけではない。組織が重視する要素に応じて、適した選択肢は異なる可能性がある。

冗長性

 RAID 1とRAID 5は、いずれも1台のHDDが故障してもシステムが稼働し続けられるRAIDの種類だ。冗長性においては同等と言える。RAID 1では、ミラーリングされたコピーが、故障したHDDの代わりとなる。RAID 5ではアレイ(複数のHDDの組み合わせ)内のHDDに分散するパリティ情報を使用し、故障したHDDのデータを復元する。

必要なHDD台数

 RAID 1は、最低2台のHDDが必要だ。1台のHDDが全データを保持し、もう1台がそのデータの完全なコピーを保持する。RAID 1のアレイにHDDを追加した場合、追加のHDDはそれぞれミラーリングの追加分として機能する。RAID 1のアレイに3台のHDDがあれば、データのコピーは3つ存在することになる。

 RAID 5は最低3台のHDDが必要だが、より多くのディスクをサポートできる。RAID 5は、データを「ストライピング」と呼ばれる方法で複数のHDDに分散させて書き込み、各HDDにはデータの一部とパリティ情報が格納される。パリティ情報は、HDDのいずれかが故障した場合に、失われたデータを再構築するために必要になる。

コスト効率

 RAID 1とRAID 5は冗長性を確保できる半面、相応のストレージ容量を消費する。

 RAID 1は、データを2台のHDD間でミラーリング(複製)する。HDD1台分のデータを保持するために2台分の容量が必要になる。使用可能な総ストレージ容量の50%は実データの保存に使用され、残りの50%は冗長性を確保するために使われる。

 RAID 5は、ストレージの冗長性を提供するためにパリティ情報を使用し、このパリティはアレイ内の全HDDに分散する。HDD1台分の容量がパリティ情報の保存に使用されるため、3台のディスクでは全体の約33%が冗長性に、残りの66%が実データの保存に使われる。HDDが5台の場合、冗長性のために消費される容量は依然として1台分のディスク容量に限定される。このため、全体の20%が冗長性に使われ、80%容量がデータ保存に利用可能となる。

パフォーマンス

 RAID 1は基本的に2台のHDDでデータをミラーリングする。パフォーマンスは使用している単一のHDDとほぼ同等だ。つまり、RAID 1アレイの構造は、データの読み書き速度を向上させるわけではないが、パフォーマンスを低下させることもない。

 RAID 5は、データをアレイ内の複数のHDDに分散して格納する。この仕組みによって読み取り性能が向上するのが一般的だ。データは各ディスクに均等に分散されるため、複数のHDDから同時にデータを読み出せる。この結果、アレイ全体としての読み取り速度は、単一のHDDの場合よりも速くなる。ただしパリティの計算が必要なため、書き込みパフォーマンスは通常、読み取りよりも遅くなる。それでも、RAID 5アレイの書き込みパフォーマンスは、RAID 1アレイを上回る可能性が高い。

フォールトトレランス

 前述のように、RAID 1とRAID 5はどちらもアレイ内の1台のディスクが故障しても機能し続けることができる。RAID 1で故障してでもパフォーマンスにはほとんど影響しないが、RAID 5ではデータ読み取りに利用できるHDDが少なくなるため、パフォーマンスに大きな影響を及ぼす可能性がある。故障したHDDの交換時には、残りのHDDがその負荷を吸収し、失われたデータをパリティ情報を用いて再構築(リビルド)する必要がある。このリビルドのプロセス中はパフォーマンスが低下する可能性がある。

複雑さ

 RAID 1の実装と管理、保守は比較的簡単だ。それに対してRAID 5はアレイにより多くのHDDを使用することになるため、RAID 1よりも複雑になる。とはいえ、どちらも過度に複雑なものではない。

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