IT業界の女性進出は進みつつあるが、管理職の割合は依然として20%ほどだ。女性管理職が少ない背景には、「インポスター症候群」や「親和性バイアス」が影響している可能性がある。これらはどのような現象なのか。
英国のIT業界は、女性の就業が進んでいる。しかし管理職における女性の割合は依然として限定的だ。IT業界のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進に取り組む非営利団体Tech Talent Charterの調査によると、2023年の加盟企業の管理職の女性比率は21%にとどまっている。人材紹介事業を手掛けるFrank Recruitment Groupの調査では、2023年のFTSE 100企業(ロンドン証券取引所上場の主要100社)におけるCIOの女性比率は25%だった。
英国で女性労働者や女性起業家の地位向上を促す社会運動団体everywomanの共同創設者のマキシン・ベンソン氏は、この状況について次のように指摘している。「女性のロールモデルの不足やインポスター症候群、ワークライフバランスの問題、管理職になるルートの制約など、多くの課題が存在する。IT分野で女性が働き続けるには、これらの課題に取り組む必要がある」
IT業界の女性は、周囲から良い評価を受けているにもかかわらず、自身のスキルや能力を認められないインポスター症候群が見られることがある。これは女性の成功への障壁となり得る。こうした傾向が見られる女性は、十分な資格を持っていても職務に応募しなかったり、自身の意見を発信するのに躊躇(ちゅうちょ)したりすることがある。
薬剤師の業界団体Royal Pharmaceutical Societyで最高技術責任者(CTO)を務めるエイブリル・チェスター氏は、高い地位にありながら、今でもインポスター症候群による不安に駆られることがある。チェスター氏は、そうした不安と共存する方法を学んでいるという。
管理職を目指す過程で、チェスター氏は直感に従うことを提案する。恐れや不快感を抱くことと、自身の選択が適切でないと判断することには違いがあると、同氏は話す。「直感が『これは違う』と告げているなら、その選択は避けるべきだ。しかし、さまざまな言い訳を探して選択を回避しようとしているだけなら、前向きな決断をすべきだ」
リーダーシップに必要なスキルはさまざまだ。自身のスキルによって、目指すべきリーダーの方向性が決まる。軍需企業BAE Systemsでデジタルトランスフォーメーションディレクター兼エンジニアリング特別研究員を務めるミビー・ジェームズ氏は、リーダーシップの特性が、「力強さ」や「威厳」などしばしば男性的な言葉で表現されることを指摘する。
ジェームズ氏は過去にIT部門のリーダーの役割に適応するために、典型的な「男らしい」振る舞いをしようとしたが、結果として自身のユーモアのセンスを失ってしまったという。
「リーダーになる唯一の方法」は存在しない。自身の個性や長所を役割に持ち込むことが、企業やチームにより価値をもたらす。ジェームズ氏は次のように話す。「私たちはリーダーシップでも多様性を考慮し、その役割で本来の自分らしさを発揮できるようにする必要がある」
IT企業の管理職に多様性が不足していることや、インクルーシブ(包摂的)な文化が確立していないことが、多様な人材の獲得を妨げている可能性がある。男性的な特性をリーダーシップに適していると考える傾向は、IT業界のリーダーシップの多様性が「表面的なレベル」にとどまっている例だとジェームズ氏は指摘する。企業は対外的には、さまざまな人材を抱えているように見せているが、実際に入社してみると包括性が欠如していることもある。「私たちはさまざまな人材を管理職に起用することが必要だ。なぜならあらゆる意思決定には異なる視点が必要だからだ。そうでなければ、画一的な思考に陥り、一部の人々にしか通用しない意思決定になってしまう」
ジェームズ氏は、IT企業の管理職に多様性が欠如している理由の一つとして、自分に似た人物を好意的に捉える「親和性バイアス」を挙げる。親和性バイアスが強い管理職は、自分と似た人物に権限を委譲したり、昇進させたりする方が安全だと感じる傾向にある。
チェスター氏は、女性の昇進を妨げる他の偏った考えや課題として、幾つかの事例を挙げる。例えばある職務に最適な人材であると認められながらも、他の候補者が昇進を待っているという理由で「順番待ち」を強いられるケースや、一定の年齢であることを理由に、「近い将来子どもを持つことで、業務に支障が出るのではないか」と質問されるケースがある。
管理職やリーダーとして働くために、ジェームズ氏とチェスター氏は、自身のニーズや特性に合わせて慎重に企業を選ぶことを勧める。そして一緒に働く人々が重要だと指摘している。
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