オンプレミス回帰に新たな潮流【第4回】
「脱クラウド」はオンプレミスへの“単なる揺り戻し”ではなかった?
クラウドサービスからオンプレミスのインフラに回帰する動きは、単なる“揺り戻し”ではない。企業は新たなインフラ戦略の一環として、どのような観点からオンプレミス回帰を選択しているのか。
クラウドサービスからオンプレミスインフラへと、アプリケーションやデータを戻す「脱クラウド」(オンプレミス回帰)の動きが一部で見られる中、「クラウドは万能ではない」という認識もまた広がりつつある。その動きの本質を見極めるには、単にオンプレミスに移行する動きがあるという表層的な観測にとどまってはいけない。
脱クラウドが戦略的に選択されている背景を取り上げた第3回「『脱クラウド』『オンプレミス回帰』がブームではなく“戦略”として広がる理由」に続き、本稿は脱クラウドの動きと共にどのようなインフラ戦略が求められるようになっているのかを考える。
クラウドからの全面撤退は非現実的
併せて読みたいお薦め記事
「オンプレミス回帰」の真相
英国の公正取引委員会(CMA:Competition and Markets Authority)が2025年1月に更新した調査報告書は、英国のクラウドサービス市場の大部分のシェアが米国のハイパースケーラー、特にAmazon Web Services(AWS)とMicrosoftによって占有されており、行政、医療、教育といった公共部門のクラウドサービス調達の健全な競争が妨げられていると警告した。
報告書によると、米国の大手クラウドサービスは、英国の公共部門がマルチクラウドに移行したり、公正な条件で価格交渉したりするのを難しくしているという。CMAは、クラウドサービス間の互換性の義務付け、ソフトウェア製品とのバンドル(組み合わせて販売)の規制、そして新規参入を容易にする市場構造への変化といった改善策を提案した。
報告書は、英国政府が、公共部門を保護するために、より強力な監視や規制を実施するようになる可能性を浮き彫りにした。これは、たとえクラウドサービスの完全な国産化が非現実的だとしても、クラウドサービスの調達戦略において、デジタル主権やレジリエンス、リスク軽減といった要素がますます加味されるようになっている世界的な傾向を裏付けている。
ブースト氏は英国の公共部門のクラウドサービス調達戦略に批判的だ。同氏はデジタル主権とレジリエンスに対する懸念の高まりにもかかわらず、政府が米国のクラウドベンダーを依然として優遇していると指摘する。「英国政府は自国で生まれたイノベーションを後押しすることで模範を示すべきだ。重要な産業を海外の勢力に明け渡してはならない」と警鐘を鳴らす。
とはいえ、実際には全てが国内回帰することはないだろう。AIアプリケーション、機密データ、需要の予測が可能なワークロードは国内に回帰しているが、パブリッククラウドを全面的にやめてしまうケースはまれだ。
2025年のクラウド分野におけるトレンドはレジリエンスにある。ハイブリッドクラウド、デジタル主権、柔軟性の考慮は、技術と規制の今後の変化に耐え得るITインフラ構築に不可欠な要素となりつつある。
ロビンソン氏は今後の流れについて次のようにシンプルにまとめた。「誰もが完全な脱クラウドではなく、より賢くクラウドサービスを管理する方法を探している。オンプレミス回帰でも国内回帰でもなく、真のレジリエンスが次のトレンドだ」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握 -
製品資料
[株式会社マクニカ] 「脆弱性総まとめ」解説 被害事例から考える必須の対策ポイント -
製品資料
[Splunk Services Japan合同会社] サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには -
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」完全ガイドブック:メリットから資格取得のポイントまで -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] はじめての「自治体/官公庁入札」 必要な知識がすぐに学べる入門ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
5
AI基盤は本当に「オンプレ回帰」する? Broadcomの言い分と企業の本音
-
6
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
7
「攻撃側にナイフ、防御側にパン」 OpenAIの10億ドル支援に潜む危うさ
-
8
「世界一給与にハングリー」な日本のエンジニアが“雇用の安定”を求める理由
-
9
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
10
「Linuxサーバの長期運用とRed Hat Enterprise Linux」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー