なぜ“SSD全盛”時代でも「HDD」どころか「テープ」まで消えないのかSSDとHDDどちらを選択するか【後編】

SSDは性能や耐久性の高さから企業の重要業務に活用されているが、HDDも依然として広く使われている。ストレージとしては第3の選択肢も存在する。それぞれの使い分けを考える。

2025年09月23日 08時00分 公開
[Robert SheldonTechTarget]

 SSDはHDDと比較した場合のパフォーマンスや耐久性の良さから、企業の基幹業務にも広く採用されるようになった。一方で、HDDも依然として使われ続けている。SSDとHDDの基本構造や性能、耐久性、コスト面での違いに触れた前編「『性能では“SSDが勝ち”』でもなぜHDDが使われ続けるのか」に続き、後編で用途別のSSDとHDDの使い分けの実態と、両者を補完する“第3の選択肢”「テープ」にも目を向ける。

SSDとHDDのどちらを選択するか? 第3の選択肢テープも健在

 性能、耐久性、エネルギー効率の観点から、組織は高速なデータアクセスが求められるミッションクリティカル(業務継続に不可欠)なアプリケーションにSSDを採用している。具体的には、ネットバンキングや株式取引、航空予約、リアルタイム分析といった分野で活用されている。

 一方、データセンターや一般企業のIT環境では、コストの低さを理由にHDDが広く使われ続けている。監視カメラの映像やメディアライブラリなど、頻繁なアクセスを必要としない「ウォームデータ」や「コールドデータ」、あるいはバックアップやアーカイブといった用途に適している。特に大容量データの保存では、SSDの価格がネックとなるケースが多く、HDDが選ばれる傾向にある。

 人工知能(AI)の分野でも、SSDとHDDは異なる役割を担っている。例えば、HDDは大規模な生データセットの保存やデータレイクに使われる。一方、SSDは、データの迅速な処理や大規模言語モデル(LLM)の構築、AIトレーニングの実行に用いられることが多い。

その他のストレージの選択肢

 企業におけるデータストレージといえば、一般にSSDやHDDが主流だが、「テープストレージ」(以下、テープ)も依然として重要な選択肢として存在している。データセンターでは数十年にわたりテープストレージが活用されてきた。その終焉(しゅうえん)がたびたび語られる一方で、現在もバックアップやアーカイブ用途を中心に広く使われている。

 テープは、コールドデータ(長期間アクセスされないデータ)や非アクティブなデータを大量に保存するのに適しており、サイバー攻撃からのデータ保護手段としても有効だ。ネットワークから切り離した“オフライン保管”が可能であるため、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)などの脅威から守りやすいという利点がある。

 テープの規格として一般的に採用されているのがLTO(Linear Tape-Open)だ。最新世代である「LTO-9」のテープカートリッジは、1本で非圧縮時18TB、または圧縮時45TBの容量を提供する。

 企業がコールドストレージ用途でテープを選ぶ主な理由は、HDDと比べてコストが低く、管理に必要なリソースも少ないためだ。テープは高い耐久性を備え、長期間にわたりデータを保持できる特性がある。暗号化機能やWORM(Write Once Read Many:1回書き込み/複数回読み取り)機能にも対応しており、セキュリティ要件にも応えられる。

 ただし、テープストレージには課題もある。特に、導入時の初期コストが高くなりがちなことや、リニアアクセス(順次アクセス)の特性により、必要なデータの読み出しに時間がかかる点だ。

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