オンサイトとクラウドの“いいとこ取り” 「ハイブリッドバックアップ」4種「オンサイトバックアップ」の要点【後編】

バックアップデータの保管場所は、クラウドサービスがいいのか、自社インフラがいいのか――。その二者択一だけではなく、両方を組み合わせるという手もある。どのような組み合わせ方があるのか。

2025年09月29日 06時00分 公開
[Helen Searle-JonesTechTarget]

 バックアップデータの保管先として、クラウドサービスを利用してバックアップデータを離れた場所に保管する「オフサイトバックアップ」と、自社のインフラを用いてバックアップデータを社内に持つ「オンサイトバックアップ」の選択肢がある。両者を組み合わせてハイブリッドな手法を採用することも可能だ。ハイブリッドバックアップを実現する4つの組み合わせパターンについて、それぞれの概要とメリット/デメリットを紹介する。

1.オンサイトバックアップとパブリッククラウド

 この組み合わせでは、NAS(ネットワーク接続ストレージ)やSAN(ストレージエリアネットワーク)、バックアップサーバなどに主要なバックアップデータを保管する。加えて、「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)や「Azure Blob Storage」、「Google Cloud Storage」といったクラウドストレージを利用して、社外にもバックアップデータを複製する。

利点

  • オンサイトのバックアップサーバからの迅速なデータ復旧
  • オンサイトの設備がサイバー攻撃、火災、盗難などの被害に遭っても、遠隔地でデータを保護できる障害耐性
  • クラウドサービスの強みである、データ容量に応じた従量課金制での拡張性

欠点

  • 大容量のデータをクラウドストレージに定期的に転送する際に広域な帯域幅(通信路容量)が必要
  • クラウドサービス利用に伴う継続的な支出

使用例

 法律事務所が、迅速なデータ復旧のためにオンサイトのNASに毎時データをバックアップしつつ、災害復旧のためにAmazon S3に毎晩データをバックアップする。

2.オンサイトバックアップとプライベートクラウド

 この組み合わせでは、オンサイトデータは社内のバックアップストレージに保管し、その複製データを企業が管理するプライベートクラウドに保管する。

利点

  • データセキュリティを自社で管理可能
  • 厳しいコンプライアンス要件への準拠
  • クラウドベンダーで発生するトラブルの回避

欠点

  • 初期費用と維持費が高額になる可能性
  • 物理的な制約による拡張の限界

使用例

 医療機関がデータ保護規制を順守するために、オンサイトストレージにデータをバックアップするとともに、盗難や火災の影響を受けない、自組織内の遠隔サーバにバックアップデータを複製する。

3.クラウドサービスとの同期機能を持つオンサイトの専用アプライアンス

 この組み合わせでは、DattoやDruva、Axcient、Unitrendsといったバックアップベンダーが提供する、バックアップ専用のアプライアンスを用いる。このアプライアンスが、オンサイトでのバックアップと、クラウドサービスへの自動的なデータの複製、暗号化を実施する。

利点

  • 導入と初期設定のしやすさ
  • 自動化による運用のしやすさ
  • オンサイトのバックアップサーバからの迅速な復旧と、クラウドサービスを使った災害復旧の両方を実現
  • ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃対策などのセキュリティ機能

欠点

  • 特定のバックアップベンダーが提供する製品/サービスへの依存(ベンダーロックイン)
  • アプライアンス利用に伴うサブスクリプション費用の発生

使用例

 小売業者がDattoのバックアップアプライアンスを使用して、POS(販売時点情報管理)システムのデータを15分ごとにオンサイトでバックアップする。併せて、毎日クラウドサービスにバックアップデータのコピーを作る。

4.ローカルキャッシュを併用するクラウドバックアップ

 RubrikやCohesityなどのバックアップツールベンダーが提供するバックアップツールは、クラウドストレージへのバックアップを基本としつつ、データ復旧を迅速化するためにユーザー企業内にキャッシュ用サーバを設置する。これらを組み合わせることで、頻繁に使うデータの復旧を高速化する。

利点

  • クラウドストレージへのデータ転送の最適化による、帯域幅の効率的な使用
  • キャッシュを利用した迅速な復旧
  • バックアップデータの一元的な管理

欠点

  • システム構成の複雑さ
  • 導入費用

使用例

 ソフトウェア開発会社が、Rubrikのクラウドバックアップツールを使用して仮想マシン(VM)をクラウドサービス群「Microsoft Azure」にバックアップする。同時に、開発プロジェクトのデータを迅速に復旧するために、直近のデータを社内のキャッシュに保持する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...