IBMとCisco、量子コンピュータのネットワークを構築 接続技術開発で手を組む「量子インターネット」が実現?

IBMとCisco Systemsは複数の量子コンピュータを接続して計算能力を高める「量子インターネット」の実現を目指し、接続技術の開発で提携する。共同で何に取り組むのか。

2025年11月26日 11時30分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 IBMとCisco Systemsは2025年11月20日(米国時間)、量子力学を用いて複雑なデータ処理を実施する技術「量子コンピューティング」分野で提携すると発表した。2030年末までに、分散された大規模量子コンピュータ同士を接続するネットワークの概念実証(PoC)を実施することを目指しており、その先の2030年代初頭の本格的なネットワーク実現を見据える。この提携によって、「量子インターネット」への道が開くのか。

IBMとCiscoの提携内容

 両社は、IBMの量子コンピューティング分野の知識と、Cisco Systemsのネットワーク分野の知識を組み合わせ、耐障害性を持った量子コンピュータの大規模なネットワーク構築を目指す。今後、そのPoC(概念実証)を2030年末までに実施することを目標としており、複数の量子コンピュータを接続できることを示す計画だという。

 量子コンピュータネットワークができれば、複数の量子コンピュータが協力して動作し、数万〜数十万量子ビット(キュービット)規模の計算の実行が可能になるとみられる。IBMとCisco Systemsは量子コンピュータネットワークの用途として、複雑な材料や医薬品の開発といった領域における問題解決を想定していると説明する。

 IBMとCisco Systemsによると、別々の場所にある複数の量子コンピュータを接続するには、量子トランスデューサーやその専用ソフトウェアなど、さまざまな技術を開発する必要がある。量子トランスデューサーとは、マイクロ波と光など異なる周波数帯の電磁波を、量子力学的な性質を保ったまま変換する仕組みを指す。両社はこれらに加え、長距離でキュービットを送信する方法も探る計画だ。

 複数の量子コンピュータを接続するに当たり、適切なインターフェースも必要になる。IBMは量子コンピュータの“頭脳”であるプロセッサ「Quantum Processing Unit」(QPU)へのインターフェースとして機能する「量子ネットワーキングユニット」(Quantum Networking Unit:QNU)を開発する計画だという。QNUは、QPUの静止した量子情報を取得して「動く」量子情報に変換し、ネットワークを通じて複数の量子コンピュータ間でリンクさせる。

 Cisco Systemsとの提携について、IBMの研究開発部門IBM Researchのディレクターを務めるジェイ・ガンベッタ氏は、「量子の計算能力を高める方法を一緒に追求する」と述べる。Cisco Systemsのインキュベーション部門Outshift by Ciscoのゼネラルマネージャー兼上級副社長、ビジョイ・パンデイ氏は、「量子コンピューティングの用途を広げるには、高性能な個々のマシンを構築するだけではなく、それらを接続することも重要だ」と語る。

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