処理性能や信頼性の懸念から、オンプレミスシステムに残り続けるOracle Databaseを、そのままMicrosoft Azureに移して稼働させる方法がある。物理的な制約を打ち破る構成の仕組みとは。
マルチクラウド戦略が企業の標準になる一方で、IT部門は基幹データベース(DB)の扱いに苦慮している。アプリケーションをクラウドサービスに移しても、大量のデータを抱えるDBがオンプレミスシステムや別のクラウドサービスに残留している場合、システム間の通信遅延がボトルネックになり、システム全体の処理性能を損なうからだ。
性能低下を招く「物理的な距離」の壁を突破する手法として、クラウドベンダーの枠組みを越えたインフラの相互配備が進んでいる。その一例が、クラウドサービス群「Microsoft Azure」のデータセンター内部にOracle専用のハードウェアを設置する「Oracle Database@Azure」だ。
Oracle Database@Azureは「クラウドサービス間の距離をゼロにする」ことで、OracleのデータベースサービスをMicrosoft Azureで直接利用できるようにしている。特定の条件下においては、通信の往復遅延を、オンプレミスシステムのローカル接続に匹敵する200マイクロ秒にまで短縮できる。性能維持を理由に移行を断念していたミッションクリティカルなシステムであっても、Microsoft Azureの生成AIサービスやデータ分析ツールと低遅延で連携し、業務プロセスを近代化する道が開かれている。
物理的な距離を解消するOracle Database@Azureは、具体的にどのようなインフラ設計で実現されているのか。移行後の運用効率を高める一元管理の手法や、基幹システムに不可欠な可用性を確保する仕組みを解説する。
2025年11月に開催された「Microsoft Ignite 2025」のセッション「How to modernize Oracle workloads on Azure」では、MicrosoftとOracleの両担当者が登壇し、システム構成の核となる「物理的近接配備」の具体的な仕組みを解説した。
Oracle Database@Azureの核心は、クラウドサービス群「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)の計算資源とストレージを、Microsoft Azureのリージョン内に直接配備するアーキテクチャにある。これは単なるクラウドサービス間の接続ではなく、Microsoft Azureのデータセンターの中に「Oracleの専用領域」を設けるという物理的なアプローチだ。
この構成によって、Oracle DatabaseはMicrosoft Azureの仮想ネットワーク内に直接組み込まれる。IT担当者は、Microsoft Azureの管理ポータルサイトから他のリソースと同じ感覚でOracle DBの構築や運用を行える。異なるクラウドを意識せずに済むため、設定ミスによるセキュリティリスクを抑え、構築にかかる手間を大幅に削減できるのが特徴だ。
性能面についても、200マイクロ秒未満という遅延は、リアルタイムな処理が求められる金融系システムや大規模な在庫管理システムで用いる上での利点になる。処理速度を妥協せずに、既存の資産をクラウドサービスに移行することが現実的になった。
ミッションクリティカルな業務をクラウドサービスに移す際、避けて通れないのがビジネス継続性の確保だ。Oracle Database@Azureは、Oracleの高可用性アーキテクチャ「Oracle Maximum Availability Architecture」(MAA)を、Microsoft Azureのインフラでそのまま再現できる。クラウド移行後もオンプレミスシステムと同等、あるいはそれ以上の信頼性を維持可能だ。2025年11月時点では、以下の3つのレベルを業務の重要度に応じて選択可能だ。
インフラが密結合されたことで、管理面でも大きな変化が生じる。セキュリティにおいては、データベースの暗号化キーを機密情報管理サービス「Azure Key Vault」で一元管理し、データベースの動作ログをセキュリティイベント管理ツール「Microsoft Sentinel」で分析可能になった。これによって、インフラごとに分断されていた監視体制を集約し、ガバナンスを強化できる。
データ活用の幅も広がる。Oracle Databaseにあるデータを移動させずに、Microsoft Azureの生成AIサービスやデータ分析ツール「Microsoft Fabric」と直接連携できるため、最新の業務データに基づいたAIエージェントの構築が容易になる。例えばAIエージェント開発ツール「Microsoft Copilot Studio」を介して、従業員が自然言語で在庫状況や販売予測をDBから引き出すといった仕組みが、低遅延なネットワーク下で、実用的な速度で動作する。
Oracle Database@Azureは2025年11月時点で日本を含む世界31のリージョンで展開されており、2026年4月にはブラジルやイタリアなどにも提供地域が拡大された。特定のベンダーに縛られず、最適なインフラを組み合わせてシステムを近代化する手法は、今後のエンタープライズITにおける標準的な選択肢になるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
瞬時にM365が乗っ取られる――全社員に周知すべき“新フィッシング”の教訓
MFA(多要素認証)を入れたから安心という常識が崩れ去っている。フィッシング集団「Tycoon2FA」が摘発されたが、脅威が完全になくなったというわけではない。

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...