「Oracle Database」を「Amazon Web Services」(AWS)で直接利用できる「Oracle Database@AWS」が登場した。「Microsoft Azure」と「Google Cloud」に続いてAWSとの連携を強化したOracleの狙いとは。
2024年9月、Oracleは年次カンファレンス「Oracle CloudWorld 2024」で新サービス「Oracle Database@AWS」を発表した。これはクラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)で、「Oracle Autonomous Database」や「Oracle Exadata Database Service」といったOracleのデータベースサービスを直接利用できるサービスだ。Oracleはクラウドサービス群「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)の一部としてOracle Autonomous DatabaseやOracle Exadata Database Serviceを提供しており、これらのデータベースサービスがAWSでもそのまま使えるようになる。その概要と、Oracleがクラウドサービスとの連携を強化している背景を探る。
Oracle Autonomous Databaseはパッチ適用やアップグレード、チューニングなどの定期的なデータベースメンテナンスタスクを自動化する自律型データベースだ。Oracle Exadata Database Serviceは高度な機能を複数備えるデータベース管理システム(DBMS)で、高速処理やセキュリティ機能、クラウドサービスとの連携機能などを搭載する。
Oracle Autonomous DatabaseとOracle Exadata Database Serviceは、AI技術を活用してデータ管理機能を強化したデータベース管理システム「Oracle Database 23ai」で稼働する。Oracle Database 23aiには以下の機能が含まれており、組織はデータを移動せずにデータ処理や分析にAI技術を利用できる。
OracleのOCIプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントであるレオ・ルン氏は、同社の戦略が「データの移動を最小限に抑えること」だと説明する。データの移動を減らすことで、コストとセキュリティリスクを低減できるためだ。それを実現するために同社は、データを同じ場所に保管し、さまざまな用途に活用できるようにすることを重視している。
Oracle Database@AWSの提供は、Oracleが2023年9月に「Microsoft Azure」、2024年6月
に「Google Cloud」と、クラウドサービスでのOracleデータベースの提供に合意したことに続くものだ。サービス名はそれぞれ「Oracle Database@Azure」「Oracle Database@Google Cloud」となっており、利用可能なOracleデータベースサービスはOracle Database@AWSと共通している。
クラウドベンダー各社は、Oracle Databaseを自社のAIサービスと統合して提供することを見込んでいる。例えばAWSのLLM(大規模言語モデル)「AWS Bedrock」やGoogleの機械学習モデル構築支援ツール「Vertex AI」を使う際、Oracle Databaseのデータを用いてAIアプリケーションのトレーニングや展開、管理が可能になるといった具合だ。
調査会社IDCのアナリストであるデーブ・マッカーシー氏は、クラウドベンダーがOracle Databaseを積極的に自社クラウドサービスで利用できるようにする背景を指摘する。それはクラウドベンダーが、Oracle独自のハードウェアやソフトウェアを使用せずに、Oracle Databaseと同等の性能や機能を再現することに成功できていない点だ。「この動きは、Oracle Databaseユーザーが簡単には他のデータベースに移行したがっていないことを物語っている」とマッカーシー氏は言う。
Oracle Database@AWSの登場によって、企業はAWS、Microsoft Azure、Google Cloudという3つの主要なクラウドサービスでOracle Databseを直接利用できるようになった。「これによって、Oracle Databaseをオンプレミスシステムからクラウドサービスに移行する新たな波が生まれる可能性がある」とマッカーシー氏は見込む。
メディア企業SiliconANGLE Media(theCUBE Researchとして事業展開)のアナリスト、ロブ・ストリーチェイ氏は、Oracle Database@AWSの発表時点で、Oracle Database@AzureやOracle Database@Google Cloudで利用できる一部の機能が使えないことに言及する。ストリーチェイ氏は続けて、「最初は幾つかの制限があるだろうが、将来的に変化するのを期待している」とも語る。
複数のアナリストが、OracleはOCIの強化に努めているものの、生成AIアプリケーションの展開と運用においてOCIはAWS、Microsoft Azure、Google Cloudに後れを取っていることを指摘する。「OCIで利用できるGPUはスタートアップ(新興企業)にとっては事足りるものだが、大企業はさらに高性能なGPUを求めている」とマッカーシー氏は述べる。
Oracleは「OCI Generative AI」(OCI生成AI)で、競合他社とのギャップを埋めようとしている。OCI Generative AIは、チャットやテキスト生成、要約といったさまざまな用途で利用可能なLLMを提供するクラウドサービスだ。企業は学習済みLLMを使ったり、カスタマイズしたLLMを専用インフラでホスティングしたりして、さまざまなアプリケーションにLLMを組み込めるようになる。
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