巨大DBをOCIでクラウド化 パナソニックIT会社が年間7000万円を削った移行術安易な「脱オンプレミス」は危険

大規模データベースのハードウェア保守切れが迫る中、安易なクラウド移行は高額な費用を生む。パナソニック デジタルはいかにしてデータベースの性能を落とさず、年間7000万円の費用削減を実現したのか。

2026年05月20日 05時00分 公開
[CaseHub.NewsTechTargetジャパン]

 企業を支えてきた大規模データベースの中核を担うハードウェアやOSの保守期限切れ(EOL)は、IT部門にとって頭の痛い問題だ。将来の事業成長を見据え、アジリティー(俊敏性)と拡張性を確保するためにはクラウドサービス前提の再設計が妥当な選択に思える。しかし、長年オンプレミスシステムで肥大化・複雑化した巨大データベースをそのままクラウドサービスに持ち込むと、従量課金モデルに苦しむことになる。特にデータ転送に伴う通信費の全容を見積もり段階で把握することは難しく、「オンプレミスシステムの頃よりもトータル費用が高くついた」という悲劇を引き起こしかねない。

 パナソニックグループのIT事業を担うパナソニック デジタルも、まさにこの巨大な集約システムの保守切れという壁に直面していた。この課題に対して同社は、単なるインフラのリプレースにとどまらず、グループ内で最大規模を誇る販売統計分析システムにおいて、年間7000万円もの運用費用の削減に成功している。クラウド化における「費用見積もりの甘さ」をいかに回避し、オンプレミスシステムと同等の高い性能と可用性を維持した手法とは。

IT部門とアプリケーション部門の“分断”をどう乗り越えたか

 パナソニック デジタルは、パナソニックグループの社内システムを支える統合データベースインフラとして、Oracleのクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)を採用した。2026年5月11日、パナソニック デジタルが発表した。グループ内でのリプレース需要に応え、拡張性の高いクラウドサービスへの移行を進めることで、全体最適の設計と大幅な運用費用の低減を図る。

 パナソニック デジタルは、2026年4月1日に設立された、パナソニックグループのIT事業を集約した新会社だ。旧IT関連3社(インフォメーションシステムズ、ソリューションテクノロジー、ネットソリューションズ)を統合し、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)、グローバルERP(統合基幹業務システム)、ITインフラ構築、セキュリティなどを一気通貫で提供する。

 パナソニック デジタルは、これまでオンプレミスの「Oracle Exadata」を中心とした大規模なインフラを運用してきた。しかし、各システムのハードウェアやOSの保守期限が迫っていたことや、将来の事業成長を見据えたアジリティーと拡張性の確保が急務となっていた。これを受け、パナソニックグループのDX推進方針「PX」(Panasonic Transformation)の一環として、クラウドサービスを適材適所で活用するITモダナイゼーションへとかじを切った。

 OCIの選定に当たっては、オンプレミスシステム同等の高い性能と可用性を維持しつつ、他社クラウド・サービスと比較して通信費用や仮想サーバの利用料が安価に設定されている点を評価した。特に、オンプレミスシステムとクラウドサービス間の通信費用が抑えられていることで、移行時の費用の見積もりが立てやすく、全体的なコストパフォーマンスに優れていることが決め手となった。

 システム移行においては、パナソニック デジタルのDB基盤課がハブとなり、アプリケーション部門と密に連携する内製体制を構築した。国内の家電販売情報を一元管理する最大規模の「販売統計分析システム」の移行では、1年以上の定例会を通じて課題を解消し、データベースのみならずアプリケーションサーバや負荷分散装置を含めた全面クラウド化を完了させた。

 OCIへの移行によって、各システムで10〜50%の費用削減が確認されている。中でも販売統計分析システムでは、年間7000万円の費用削減を実現した。2026年2月時点で、サーバ168台、容量540TB、25件を超えるシステムがOCIで安定稼働しており、CPUリソースを無停止で増減できるクラウドならではの俊敏な運用が可能となった(図)。

図 OCIの利用状況(提供:パナソニック デジタル)《クリックで拡大》

 今後、パナソニック デジタルは自社グループ内での豊富な構築・運用ノウハウを生かし、グループ外の顧客に対してもOCI導入支援サービスを提供していく。

(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「パナソニック デジタル、OCI移行で統合DB基盤を刷新 年間7000万円のコスト削減」(2026年5月12日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。


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