2010年01月21日 08時00分 UPDATE
特集/連載

実践! 中堅・中小企業のための賢いIT投資【第3回】知らないと損? 中小企業が税制・ベンダー両面でフル活用したい支援制度

中小企業が限られた予算をITに振り向ける上でぜひ検討したいのが、IT関連優遇税制やベンダーが実施する支援制度。初期投資の負担を減らせるだけでなく、運用後の状況変化に伴う投資も軽減することができる。

[岩上由高,ノークリサーチ]

 前回記事「ハードウェア購入で役立つレンタル/リースの基礎知識」では連載の第2回と第3回の順番を入れ替え、レンタル/リースの基本について紹介した。当初第2回として予定していた「中堅・中小企業向けの支援制度の活用方法」は、政府の税制調査会の方針が未確定であったため、その結果を待ってからの解説とさせていただいていた。そうした中、2009年12月22日に税制改正大綱が閣議決定され、ようやく中小企業向け優遇税制の今後が明らかになった。そこで今回は、2010年4月以降のIT関連の優遇税制の最新情報と、各ベンダーが独自に提供する支援制度について解説していくことにする。

中小企業のIT投資を支援する優遇措置

 これまで中堅・中小企業が利用できるIT関連優遇制度としては、「中小企業等投資促進税制」と「情報基盤強化税制」があった。いずれも2010年3月末で期限を迎えるものだが、現行制度の内容をいったん整理しておこう。

・中小企業等投資促進税制(2010年3月まで)

 企業がIT関連機器(ハードウェア)やソフトウェアを購入する際に特別償却や税額控除といった会計上の処理を認める制度(この制度そのものの対象はITだけでなく、企業が事業を営むための設備投資全般となっている)。

項目 区分
対象となる企業 特別償却の場合:資本金1億円以下の法人(大企業の子会社などを除く)
税額控除の場合:資本金3000万円以下の法人など
対象となる資産と価額 単体での取得価額が120万円以上のコンピュータ、およびデジタル複合機または取得価額が70万円以上のソフトウェア(研究開発用途およびOSは除く)
適用な可能な処理 取得価額の30%までの特別償却または取得価額の7%までの税額控除(※)

※詳細な条件については国税庁のWebサイトを参照のこと。

・情報基盤強化税制(2010年3月まで)

 情報処理システムのセキュリティ強化を主な目的として、IT関連投資に対して特別償却や税額控除といった会計上の処理を認める制度。

項目 区分
対象となる企業 すべての企業
対象となる資産 ・サーバ用OSおよびそれがインストールされたサーバ機器
・データベース管理ソフトウェア(DBMS)およびそれを利用するアプリケーション
・IPA(情報処理推進機構)が認めた製品リストに該当する各種の連携ソフトウェア
・ファイアウォール(ただし上記3つと同時に設置されたもののみ)
対象となる価額の条件 資本金1億円以下の法人や個人事業主の場合:70万円以上
資本金1億円超〜10億円以下の法人の場合:3000万円以上
資本金10億円超の法人(※):1億円以上
適用な可能な処理 取得価額の35%までの特別償却または取得価額の7%までの税額控除

※資本金10億円超の法人については特別償却や税額控除の上限は200億円まで。詳細な条件については国税庁のWebサイトを参照のこと(同制度は2008年3月31日が期限であったが、その後2年間延長されている)。

2010年4月以降はどうなる?

 2010年度(2010年4月以降)に有効となる税制改正大綱では、情報基盤強化税制が廃止される一方、中小企業等投資促進税制はさらに2年間延長となった。また、中小企業等投資促進税制の対象として新たに「仮想化ソフトウェア」が追加となっている。

図1 IT関連優遇税制の主な変更点

 つまり、資本金1億円以下の中堅・中小企業であれば、今後も継続して中小企業等投資促進税制の活用が可能だ。また、同制度の対象に仮想化ソフトウェアが加わったことよって、複数の業務システムを1つの物理サーバに集約し、運用管理面でのコスト削減などを実現する「サーバ統合」への取り組みがしやすくなったといえる。

 そのほか、中堅・中小企業にとってのさまざまな税制面での支援策については、経済産業省の資料「平成22年度経済産業省関係税制改正のポイント」(PDF文書)にまとめられているので参考にしていただきたい。

ベンダー各社が実施する支援制度

 次に、ITベンダー各社が独自に提供している支援制度について見ていく。ユーザー企業にとってITへの投資、特にハードウェア投資は償却などの面で負担が大きくなりがちだ。それを軽減するため、ベンダー各社はリースやレンタルといったファイナンス面のサポート充実に努めている。さらに昨今の厳しい経済環境を踏まえて、手軽に導入検討が行える「無償のアセスメントサービス」や「リース料の支払い据え置き措置」「リースを途中解約しての機器変更」などといったさまざまな施策を提供している。

 こうした施策を積極的に展開しているのは、主に外資系のベンダーだ。日本国内ではベンダーとリース/レンタル事業者の役割が比較的分担されている一方、欧米ではベンダーが子会社などを通じて自らリース/レンタルのサービスを提供する形態がよく見られる。また、オフコン時代から地場の販社・システムインテグレーターとの密接な関係を築いてきた国産ベンダーと違い、外資系ベンダーは販売チャンネルの点では不利な面がある。種々の支援策への取り組みにはそれを補う意味合いもある。

 以下に、ベンダー各社の支援策を「導入検討時」「初期調達時」「運用開始後」の3つの時間的フェーズに分けて紹介する。

導入検討時

 ユーザー企業が限られた原資をITへと振り向けることを決断するためには、相応の効果を確信できなければならない。だが、投資効果を得るために別途コストが掛かるのでは「IT投資のための投資」になってしまう。それを防ぐ手段が導入効果を手軽に試算/測定できる「無償アセスメントサービス」の活用だ。仮想化やストレージの重複排除といった、比較的新しい技術を採用した製品の導入効果を見極めるために提供されるケースが多い。具体例としては、以下のようなものが挙げられる。

無償アセスメントサービス例
ベンダー サービス名
EMCジャパン TCOアセスメント・サービス
大塚商会 仮想化 簡易アセスメントサービス
ヴイエムウェア 仮想化効果測定ツール

 実際にIT機器を試験導入できるものからWebサイト上で実施する簡易評価まで、多様な提供形態が存在する。投資対効果を測る際には、手始めにこれらの無償サービスを試してみるといいだろう。

初期調達時

 リースやレンタルなどさまざまな手法を駆使したとして、それでもなお費用負担が重いという状況は十分考えられる。例えば、現行システムからのリプレースを行った場合には新旧システムを並行運用する期間を設けることが多い。既存システムに関連する費用に加えて新規システムのリース/レンタル費用を払う「二重負担」は避けたいところだ。そうしたときのために利用開始時期と支払い開始時期をずらす「支払い据え置きサービス」を提供するベンダーもある。具体例としては、EMCジャパンの「お支払い据え置きレンタルプログラム」が挙げられる。

図2 費用負担の支払い据え置き支援制度

 また、前回紹介した「オペレーティングリース」を提供するベンダーも増えてきている。残価設定を行うことでリース料の低減とオフバランス処理を実現するもので、ファイナンス面でのユーザー企業負担を軽減する手段としてベンダー各社の訴求が進みつつある。

 このようにリース/レンタルを単に利用するだけでなく、「支出のタイミングをずらす」といった手段もあることを知っておくと、システム刷新の際などに役立つだろう。

運用開始後

 IT機器を導入し、運用を開始した後の段階でメリットを享受できる支援制度もある。まず挙げられるのが、「従量課金の要素を組み入れたリース制度」である。例えば、ストレージなどの将来的な容量増加を見込んで導入することの多いIT機器では、将来を見越してある程度余裕を持ったスペックの製品を選ぶことが多い。だが初期段階において、そうした余裕は過剰投資であるともいえる。そこで、当面必要となるディスク容量に基づいたリース料金を算出しておき、超過した分は追加ディスク容量に応じてリース料金を追加で支払う形にする。こうすれば、初期段階で過剰投資の発生を防ぐことができるわけである。

図3 従量課金の要素を組み入れた支援制度

 もう1つの代表例が「リース契約期間中でのIT機器変更への対応」だ。ITは進歩が非常に早いことに加え、事業環境の変化や経営方針の変更などによってシステム刷新を求められることも多々ある。そうすると、リース契約期間中にIT機器を変更しなければならないという事態も発生する。従来は既存リース契約の解約に掛かる違約金に加え、新規に導入するIT機器のリース/レンタル料が加わるため、リース契約期間中でのIT機器変更は非常にコストの掛かる選択だった。

 しかし、特定ベンダー製品間での変更であればリース解約費用の一部を免除する制度や、リース解約費用をベンダー側がいったん肩代わりして新規のリース契約費用に案分する制度などが登場してきている。それぞれの具体例としては以下が挙げられる。前者(EMCジャパン)は従量課金の要素を組み入れたリースの例、後者(シスコシステムズ)はリース契約期間中でのIT機器変更の例である。

リース期間中のIT機器変更に対応するサービス例
ベンダー サービス名
EMCジャパン オープンスケール・プログラム
シスコシステムズ セイフティネット・エクスチェンジプラン/シスコレベルアップリースプラン

図4 契約期間中の機器変更を考慮した支援制度

 以上、IT関連の優遇税制およびベンダーが独自に提供する支援制度について解説した。中堅・中小企業がIT投資を検討する際には、初期の投資負担を軽減することばかりに目が向いてしまいがちだ。だが重要なのは、将来の状況変化も見据えた計画性を持つことである。上記で取り上げた支援制度でも、将来的なスペック増加や機器変更を考慮したものが少なからずあったことにぜひ注目していただきたい。これらの支援制度をフル活用して、「変化に強いIT投資計画」を実践することが肝要だ。

<筆者紹介>

岩上由高

ノークリサーチ シニアアナリスト

ソフトウェアベンダー数社でソフトウェア製品の企画、設計、開発、コンサルティング、トレーニングなどに携わった後、ノークリサーチに入社。シニアアナリストとしてITのさまざまな領域の調査・分析に従事し、その成果を記事執筆やコンサルティング活動を通じて積極的に発信している。



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