Salesforce Chatterでできること・できないこと【最終回】
Chatterの拡張性と9つの技術的な制約
Chatterはモバイル対応や外部連携といった豊富な拡張性を持つ一方で、幾つかの技術的な制約もある。現時点におけるユーザー視点で気になる制約をまとめた。
第1回「Salesforce Chatterの基本機能とエディションによる違い」、第2回「ChatterとTwitter/Facebookの違いとChatter利用時の注意点」では、基本機能や他ツールとの違い、Chatter利用時の注意点などを解説してきた。連載の最終回では、Chatterの拡張性と技術的な制約について解説していく。
また、連載の終了に伴い、本連載の検証用に筆者が用意したChatterデモ環境をTechTargetジャパン会員限定で公開している(2011年7月1日まで)。実際にChatterを触ってみたい方は、記事最終部のリンクからご利用いただきたい。
Chatterの拡張性
1.モバイル対応
BlackBerry、iPad、iPhone、iPod touch向けの「Chatter Mobile」アプリケーションは、2010年末から提供されており、Android端末向けのChatter Mobileは、2011年初旬に提供開始予定となっている。注意点として、Salesforceの標準機能のモバイル対応は既に行われているが、ここでいうChatter MobileとはChatterのみを行うモバイルクライアントアプリケーションのことを指している。
2.外部連携、アプリケーション開発、API
ChatterはさまざまなAPIが提供されており、外部連携や独自のアプリケーション開発が可能だ。例えば、Twitterのようにボットを開発したり、特定のレコードや人を自動フォローしたり、ソーシャルグラフのようなものを作ったりすることもできる。Salesforce関連のアプリケーションマーケットプレースである「AppExchange」には、「Chatter Exchange」というコーナーが設けられており、そこには70のChatter関連アプリケーションが公開されている(2011年1月現在)。
日本企業によるChatter関連アプリケーションの例としては、マッシュマトリックスがChatterとTwitterを連携したマッシュアップ製品「mashmatrix Widget for Salesforce Chatter」を発表している。
3.デスクトップガジェット
Chatterには専用のデスクトップガジェット「Chatterデスクトップ」が提供されている。Adobe Airで作成されているガジェットで、自分のSalesforceアカウントでログインすると自分のChatterタイムラインを常に表示することができる。
Chatterの技術的な制約
1.発言可能な文字数は1000文字
発言可能な文字数についての記載はどこにも見つけられなかったのだが、検証したところシングルバイト/マルチバイト共に1000文字までのようである。Twitterの140文字と比べるとかなり多い。この文字数設定を変更することはできなかったので、制限したい場合には開発で対応することになる。
2.フォロー可能数は500まで
1人のユーザーがフォロー可能な数は500までである。これはユーザーのフォローとレコードのフォローを合わせた数である。多量のデータが流通する組織の場合、案外あっさり到達する数なので、がむしゃらにフォローするのではなく不要なフォローは解除する運用が望まれる。
3.対応Webブラウザ
最近のメジャーなWebブラウザはほとんど対応しているが、Internet Explorer(IE) 6には対応していない。これはChatterの導入時に必要となるSalesforce の新インタフェースがそもそもIE 6に対応していないためである。
4.タイムライン上でプレビューできるファイル形式
Chatterでは投稿したファイルをタイムライン上でプレビューすることができるが(関連記事:「Salesforce Chatterの基本機能とエディションによる違い」)、プレビュー可能なファイル形式はMicrosoft Officeファイル、PDFファイル、JPG、GIF、PNGなどの一般的な画像ファイルだ。なお、Microsoft OfficeファイルのプレビューはMicrosoft Office 2003形式のみ対応しており、Microsoft Office 2007形式のファイルはプレビューできない。その他、コピー保護されたPDF、不明なファイル形式、25Mバイトを超えるファイルなど、プレビューできないファイルもある。
5.ダイレクトメッセージ機能はない
ChatterにはTwitterのようなダイレクトメッセージ機能は存在しない。あくまでオープンなコラボレーションを行うことが前提である。ただこれについては開発をすれば容易に実装可能だろう。
6.特定ユーザーのみのChatter利用はできない
ChatterをSalesforce組織で使えるように有効化するには、組織全体で行う必要がある。例えば、全社でSalesforce を使っている場合、情報システム部門だけでChatterを有効化する、ということはできない。
7.投稿した発言やファイルはSalesforceのストレージ使用量に加算される
Chatterで投稿やフィード追跡を行うと、データストレージ使用量に加算される。コメントは1つ当たり0.25Kバイトになる。また、Chatterからアップロードしたファイルも全てファイルストレージ使用量に加算される。Salesforceではデフォルトで1組織当たり1Gバイトのストレージ容量なので、単純計算でChatterの発言だけをしている組織であれば全体で400万発言ができる。実際は他にもストレージを利用するのでもっと少なくなるが、それでもこれは十分な量だろう。もちろん、必要に応じてストレージは追加購入することもできる。
8.ポータルユーザーはChatterを利用できない
Salesforce では自社組織外のユーザーが組織内のデータにアクセスできる「ポータルユーザー」という仕組みがある。ポータルユーザーアカウントを社外関係者に付与することで、例えば、Salesforce上で取引先担当者や顧客がダイレクトに問い合わせや受発注を行うことができる。このポータルユーザーが利用するポータルサイト上では、Chatterを利用することはできない。
9.複数のSalesforce組織間でChatterの発言を共有できない
Chatterの発言はあくまで利用している1組織単位で閉じている。複数のSalesforce 組織間でChatterの発言を共有することはできない。もし実現しようとしたら何らかの開発が必要になる。
Salesforceは今後Chatterを中心に進化していく
以上、全3回にわたってChatterを紹介してきた。本稿では技術的制約を紹介したが、セールスフォース・ドットコムが「できないことをできるようにしてきた」ことは、Saleseforceで既に実証済みである。今できないことが1年後にもできないとは誰にも言えない。Salesforceは、Chatterのリリースに当たってバックエンドで動いている全システムを見直し、作り替えたといわれている。今後展開する全ての機能を、Chatterに対応していくという本気度がうかがえる。セールスフォース・ドットコムはこれまでもWebのトレンド技術をエンタープライズに転用するということを行ってきた。FacebookやTwitterが世界を作り替える波を、エンタープライズの世界でも起こそうとしている。
爆発的に普及し浸透していくソーシャル分野での進化は、エンタープライズの世界でも有効活用できるものが多い。文化や技術、そこで培った人材やノウハウがそれに当たる。セールスフォース・ドットコムはその活用のバランスが非常に優れていると筆者は感じている。Chatterという機能と概念がその象徴的な姿だ。Chatterは「そこにあって当然」の機能となり、同様の概念は他製品でも形を変えて展開されていくことが予想されるだろう。
なお、ChatterはFacebookやTwitterなどで情報交換されているので、興味のある方はそちらでも情報収集が可能だ。また、本連載執筆に伴って筆者が検証用に用意したChatterのデモ環境をTechTargetジャパン会員限定で公開している。実際にChatterを触ってみたい方は、以下リンクからアクセスしてほしい。
TechTargetジャパン会員限定 Salesforce Chatterデモ環境
TechTargetジャパン連載記事「Salesforce Chatterでできること・できないこと」の検証用に作成したChatter Free環境。Salesforce Chatterに関する機能だけが利用できる(2011年7月1日まで)。
阿部友暁
株式会社ウフル 取締役/最高技術責任者(CTO)
携帯着うたシステム開発、インターネットラジオサイト「ねとらじ」創設、デジタルサイネージシステム開発と、インターネット畑を転々とした後、現職。現在はクラウドシステム開発を通じて、インターネット技術の他分野への応用の可能性を追求中。Force.comを中心としたクラウド技術ブログ「deferloader」を執筆。
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