Oracleのライセンス手法の基礎知識(後編)
「ベンダーロックインの名人Oracle」からの脱却
ユーザー企業に有利に見える契約条件も、実際には投資の柔軟性を奪う足かせになる場合がある。Oracleのライセンスの注意点を再検討する。
前編「Oracleライセンス料節約のポイント」では、Oracle製品のライセンス契約を考える上で欠かせないポイントについて解説した。後編では、Oracleのライセンス契約における「フィーチャー(機能や特徴)とバグ」を検討してみよう。
ソフトウェアのフィーチャーとバグという概念は、単にソフトウェア自体の問題として捉えるだけでなく、ソフトウェア契約の条項との関連において理解することが極めて重要だ。フィーチャーは有益であり、バグはそうではない。
プライスホールドは本当にフィーチャーなのか?
ライセンスの注文に対してプライスホールドを設定するという一般的慣行について、多くの人々はこれをフィーチャーと考えている。プライスホールドの期間中(通常は2~3年)は、ソフトウェアに対して顧客に有利な割引価格が適用される。通常、最低注文金額は約5万ドルだが、この条件さえクリアすれば、顧客は面倒な交渉抜きでプライスホールドに基づくライセンスの注文を行うことができる。なかなか良さそうな話ではないか。
しかしここで、サポートロールインについて再検討する必要がある。前回「Oracleライセンス料節約のポイント」で述べたように、リプライシングは、ユーザーがサポート料金を削減するためにソフトウェアライセンス数を減らす場合には、Oracleが最初の割引条件を解除できる契約上の権利だ。ロールインというのは、個々のサポート契約を結び付け、単一のCustomer Support Identifier(CSI:最初のライセンス注文に付与される独自の識別番号)の下に集約するという仕組みだ。計算上では、サポートの総数が多ければ多いほど、ライセンスコストを節約するためにはより多くのライセンスを削減しなければならないことになる。
このことを念頭に置いた上で、プライスホールドをもう一度見ることにしよう。Oracleの技術サポートポリシーでは、プライスホールドに準拠して注文されたソフトウェアは実質的に単一の注文にまとめられるとされている。つまり、プライスホールドをフィーチャーではなく、バグと見なすことができ、また、そう見なすべきだということだ。
リプライシングとロールインというコンセプトが分かりにくいと感じている読者もいるに違いない。どのようなライセンスの注文であれ、契約条項が企業の柔軟性を損なうものであるのかどうかが重要な問題だ。プライスホールドは何の問題もないように思えるかもしれないが、ソフトウェアを単一の注文に閉じ込めることにより、将来の業務改善に必要な柔軟性を減少させる。1%や2%の割引のために企業が契約の柔軟性を失ってしまうことも少なくない。交渉で引き出した譲歩が長期的に見れば自社の不利益になるのだ。
相対的に言えば、プライスホールドはOracleのUnlimited License Agreement(ULA)よりも柔軟だ。ULAを全面的に否定するわけではないが、この契約は全てを捨ててOracleと結婚するようなものだ。私は以前から何度もこの問題を取り上げてきたので、ここでは、ULAはフィーチャー対バグの比率を逆さにして、9対1の割合でOracleを有利にするものだとだけ指摘しておこう。これでユーザーが得をするわけがない。
逆に、ほとんどの人がバグだと見なしているけれども、実際にはフィーチャーであると思えるのは、何十件ものサポート更新が年中行われることだ。ユーザーにとっては、Oracleが全ての更新をまとめて一括請求する方が簡単に思えるかもしれない。しかしこれはOracleにしても楽な方法だといえる。同社としては、さまざまな種類のサポート更新の料金を、毎年確実に入ってくる「年金収入」に変えたいと考えているのだ。
Oracle──長期的ベンダーロックインの名人
どんな企業でも、永続的で利益率の高い収入を望むものだ。その意味ではOracleは特殊な企業ではない。だが永続的なソフトウェアというは、比較的新しく、複雑な現象だ。Oracleが特殊なのは、長期間にわたるベンダーロックインの手法を確立したことだ。代替が利かないデータベースと硬直的な契約という組み合わせこそが、Oracleに今日の地位をもたらした最大の原動力なのだ。
同社は、最初の割引率と長期的な柔軟性をバランスさせる戦略も持ち合わせている。忘れてはならないのは、Oracleの顧客の大多数は、長年にわたるOracleユーザーであるということだ。つまり、当初は妥当だった判断も、今ではそれほど合理的なものではないかもしれない。
では、Oracleのような巨大ベンダーと対等な立場に立つにはどうすればいいのだろうか。ソフトウェアの資産管理、購入と契約、導入、運用のベストプラクティスを結合するのに必要なプロセス、ツールおよび経験の各面でベンダー依存から脱却を目指すというのも1つの方法だ。これに基づいて策定される計画は、サービスレベルを低下させずにコストを削減するものでなければならない。
短期的なコスト削減は不可能かもしれないが、柔軟な契約、値引き面での優遇、資産管理の改善、合理的なシステム構成という目標に向けた取り組みを今から始めることは可能だ。
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