使えるビッグデータを買う時代が到来?
ビッグデータ活用に満足な企業は6%――米CompTIA調査
「幹部がビッグデータを理解できていない」「データを単一のビューで参照できない」「そもそも使えるデータがない」。幾多のハードルが、ビッグデータ活用を難しくする。
これから必ず起こるであろうデータ戦争において、大半の企業はただやみくもに戦い、必要な情報は外部から入手することになるだろう。非営利の業界団体である米コンピュータ技術産業協会(CompTIA)が最近発表した調査報告書によると、IT部門とビジネス部門の幹部のうち、「ビッグデータの概念をしっかりと理解していない」と答えた人が全体の63%に上る。さらに、そう答えた幹部らは、ビッグデータを理解できていないことを懸念しているという。
「今、ビッグデータを理解するための対策を講じなければ、生産性とビジネスアジリティ(事業の俊敏性)の点で敗北を喫しかねない」と、こうした幹部らは考えている。「優先順位をめぐる混乱」が社内に生じることで、企業は身動きを取れなくなり、「非効率的なオペレーションのせいで利益幅が縮小」する事態に陥りかねないというわけだ。
44ページにわたる報告書「Big Data Insights and Opportunities」(ビッグデータに関する洞察と展望)は、約500人のIT幹部とビジネス幹部を対象に、2012年7月に実施された2つのオンライン調査に基づく。報告書によると、「ビジネスを順調に成長させる上で、規模の大小を問わず、データがいかに重要か」については、IT部門とビジネス部門のどちらの幹部もよく理解しているようだ。回答者の3分の2は、「自社の保有データを活用できれば、さらに強力なビジネスを確立できるはず」との考えに同意している。
ただしデータの確保は、今後ますます難しくなる一方のようだ。米市場調査会社のIDCは、2012年における世界のデータ量は2.7Z(ゼタ)バイト(※訳注)に拡大し、今後その量は約2年ごとに倍増すると予想している。
※訳注:1ゼタバイトは10の21乗バイトで、10億Tバイトおよび1兆Gバイトに相当。
「多くの幹部は実際、依然としてビッグデータのラーニングカーブに沿って理解を深めつつある段階にいる」と、CompTIAの調査担当副社長であるティム・ハーバート氏は、報告書に添付した調査メモで指摘する。
これは当然のことだろう。ただし険しいのは、ビッグデータや来たるべきさらに大規模なビッグデータのラーニングカーブだけではない。CompTIAの報告書によれば、大半の企業は、まだ社内でデータ戦争をしている状況にあるようだ。4社に3社近くの企業は、「社内に中規模から大規模のデータサイロがあり、データを単一のビューで参照できていない」と回答している。
まだデータ活用の目標を達成できていない分野として、回答者の80%が「Webトラフィックパターンの分析」を挙げた他、85%が「メールキャンペーンの効果の測定」、88%が「ソーシャルメディアのモニタリング」を挙げる。音声や動画のファイル、ソーシャルメディアのストリーミングデータといった非構造化データは、企業が扱い慣れている従来型のデータベースには簡単に格納できないため、多くの企業はこうしたデータを活用できずにいる。
先を見据えた計画も進行中だ。向こう2年間の予定について、大企業の41%が「ビッグデータ活用のためのデータ分析とビジネスインテリジェンス(BI)の要件を満たすべく、新たに従業員を雇う計画だ」と回答し、39%が「外部のコンサルタントやベンダーを利用する計画だ」と答えた。
ただし、こうした計画は「活用するデータを持っていてこそ」実現できる。例えば、「事業継続と災害復旧のための包括的な計画を用意している」と答えた企業は、全体のわずか3分の1にとどまる。つまり、多くの企業は、単なる「データ損失」が原因でデータ戦争に負けることになりかねないのだ。
関連記事
データ戦争で勝てるのは少数
データの管理と利用に関して、「まさに希望通りの状態にある」とした回答者は、全体の6%にとどまった。「まさに」というところが、難しい注文なのだろう。実際、回答者の3分の1は「ほぼ希望に近い状態にある」と答え、47%は「どちらかといえば希望に近い状態にある」と答えている。
だが今後は、こうした6%の企業(何%であれ、ビッグデータをよく理解しているほんの一握りの企業)が、各業界や顧客に対して途方もなく大きな影響を及ぼすかもしれない。この報告書は、幾つかの事例を挙げている。
例えば、米大手小売りチェーンのWal-Mart StoresやTargetは、大量のソーシャルデータを選別し、購買予測に活用していることで知られている。また米ニュージャージー州をはじめとする米国各州では、交通情報や気象情報の他、運転者や携帯電話のデータ、各種のストリームデータを利用して、交通輸送網に関するリアルタイムのスナップショットを入手し、遅延の予想や事故へのより迅速な対応に役立てている。
ビッグデータを活用する企業とそうでない企業の隔たりは、今後広がる一方となりそうだ。私は最近、米PayPalの主席サイエンティストであるモック・オー氏にインタビューした。この世界的な電子決済サービス企業で「広く科学に関する社内のあらゆること」を担当しているという同氏は、「目下のところ、私はビッグデータとデータサイエンスに重点を置いている」と語っている。
オー氏によると、ビッグデータに対する多くの人たちの認識は間違っているという。Fortune 500企業のCIOの多くは今後、ビッグデータ分析のためのインフラの構築に(オー氏の言葉を借りれば、「ビッグデータにアクセスするための大掛かりなツールを入手するために」)、何千万ドルものコストを費やすことになるというのだ。
ツールの導入は、単に「配管の構築」を済ませたにすぎないとオー氏は言う。PayPalでは目下、こうした配管を敷設中であり、さらにPayPalのマーチャント(売り手)とバイヤー(買い手)を引き合わせるためのデータ分析にも取り組んでいる。データ分析は、一般的なレベルだけでなく、タコスの屋台のレベルで(つまり、1億人のアクティブユーザーと何百万というマーチャントで構成されるPayPalのビジネスにおいて、想像し得る限りのあらゆるユースケースに関して)実施する方針だという。
そしてオー氏は、「配管」や「顧客が何を購入しているか」だけでなく、「コンシューマーが次に何を購入するか」にも大いに注目しているという。PayPalは、われわれコンシューマー本人よりも詳しく、コンシューマーの買い物習慣について知ろうとしているのだ。オー氏がビッグデータで追求しているのは、人の潜在意識に他ならない。
だが残念な見通しもある。「何百万人もの顧客を持たない企業や、もっと専門化された企業にとっても、こうしたビッグデータ分析を行うメリットはあるのか」と尋ねたところ、オー氏の答えは次のようなものだった。「それはケースバイケースだ。最近は、『データは資産であり、自分たちで所有してフルに活用すべきである』ということに気付く人たちが徐々に増えてきている。今後、データの入手はますます難しくなっていくだろう」
企業の中には、ビッグデータを活用してビジネスの洞察に役立てたくても、そのためのリソースを持たないところもある。そうした企業はデータの購入が必要となるだろう。いずれは、自社でビッグデータを所有する大企業が、こうした小規模企業に対して、データ(ただし、売りたいと思うデータだけ)を販売することになるのだろう。
データがいかに貴重なのかを示す証拠としては、「iPhone 5」を見れば十分だ。iPhone 5には、米Googleの地図アプリ「Google Maps」が搭載されていない。地図の検索履歴といった貴重な情報を米Appleが競合他社に無償で提供する理由など、あるわけがない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
実際に悪用される脆弱性は4%前後 優先的に対処すべき脆弱性を把握するには? -
事例
三菱ケミカルが脆弱性への迅速な対応フローを実現した方法とは? -
技術文書・技術解説
MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ -
事例
大阪市の未来を創る「行政DX」の本質と、その取り組みを支える統合基盤の実力 -
事例
【行政DX先進事例】横浜市が「市民に大切な時間を返す」を実現できた理由とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
2
「生成AI導入・活用状況」に関するアンケート
-
3
「データ集約」はリスクだらけ? 分散型データセンターが“必然”になる理由
-
4
「HDD終了」は本当か 巨大クラウド2社が下した大容量フラッシュへの決断
-
5
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
6
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
【基本情報技術者試験】私用スマホを業務で使う「BYOD」に潜むリスクとは?
-
9
弁当の玉子屋がSalesforceを導入 属人化した営業管理から脱却する
-
10
ただなのに「12時間以内の復旧」も要求 無償OSSに商用レベルを求める企業の末路
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
2
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
3
属人化や仕様バグはなぜ起きる? AI時代に必須のドキュメント文化の作り方
-
4
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
5
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
6
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
7
中小企業必見、Microsoft 365でゼロトラストセキュリティを実現する方法
-
8
5分で分かる「AI駆動開発エージェント」 要件定義から設計・実装・テストまで
-
9
動画で知るランサムウェア被害企業のリアル、会計データが無事だった理由とは
-
10
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー