デスクトップ仮想化で驚異の高速化を実現した“ダブルホップ”手法とは?時間の節約だけではないVDIのメリット【後編】

デスクトップ仮想化(VDI)ベンダーに「これほど巧みにVDI技術を活用したIT部門は他に見当たらない」と言わせた米小児病院。秘密はXenAppを用いた“ダブルホップ”アーキテクチャにある。

2013年01月16日 08時00分 公開
[Karen Goulart,TechTarget]

 前編「『VDIなしでは考えられない』米小児病院のデスクトップ仮想化事例」に続き、米小児病院Seattle Children's Hospitalの業務効率を劇的に変えたデスクトップ仮想化インフラ(VDI)導入についてお伝えする。

“ダブルホップ”のVDI標準を確立

 Seattle Children's Hospitalのウェス・ライトCIO(最高情報責任者)兼上級副社長は成果を控え目に語るが、「Seattle Children's HospitalのITチームが構築したVDIは、業界標準を確立するものだ」と称賛する人もいる。先頃米サンディエゴで開催された「Catalyst」カンファレンスで、米調査会社Gartnerのアナリスト、マシュー・ブリッセ氏は「Seattle Children's HospitalのVDIプロジェクトは世界で最も成功した事例の1つだ」と語った。これについて意見を求められたライト氏は「このソリューションを提供したCitrix Systemsなどのベンダーによると、これほど巧みにVDI技術を活用したIT部門は他に見当たらないそうだ」と述べた。

 では、このプロジェクトの何がそんなに素晴らしいのだろうか。ライト氏によると、全てはアーキテクチャに懸かっているという。

 VDIソリューションは多種多様なアーキテクチャが可能だ。多くのIT部門ではアプリケーションを埋め込む方式を採用している。だがこの方式では、ユーザーが仮想デスクトップにログオンすると、そのユーザー用のアプリケーションが全て組み込まれ、非常に重い仮想デスクトップになってしまう。

 これに対し、Seattle Children's Hospitalの仮想デスクトップにはWindows 7のデスクトップのみが組み込まれており、スタートメニュー内のアプリケーションおよびアイテムは全て、仮想アプリケーションサーバのCitrix XenAppを参照する仕組みになっている。「これにより、仮想デスクトップのロードとアンロードが非常に速くなる」と同氏は説明する。「IOPS(1秒間当たりのI/O数)という視点から見れば、各仮想デスクトップに要する時間を正確に把握できる」

 プロビジョニングサーバは仮想デスクトップのプロビジョニング用としてだけでなく、XenAppサーバのプロビジョニング用としても使われているため、サイロ内のXenAppサーバが全て同じであることは間違いない。つまり、Citrix Systemsのスイート全体を本来の方法で使っているということだ」とライト氏は話す。「われわれはこの方式を『ダブルホップ(2回跳び)』と呼んでいる。デスクトップからアプリケーションに到達するまでに、2回跳躍する格好になるからだ。この方式のユニークさは、何よりもこの“ダブルホップ”アーキテクチャにある」

 ライト氏は同病院のVDIソリューションについて、「実に頭の良い」Citrix Systemsの専門家チームの貢献が大きかったことをしきりに強調した。彼らは安定性と速度を改善するために、何度もアーキテクチャを調整したという。「われわれはパフォーマンスを絶えず改善するという方針に基づいて無駄の排除を進めている。ここで1秒、そこで1秒といった無駄が、多数の医師の間で積み重なると大きな損失になる。われわれはその1秒を半分にすることを常に目指している」と同氏は話す。

 それにはマンパワーが必要だ。ライト氏のチームでは5人のスタッフがVDIを担当している。「当病院の業務はVDIに大きく依存している」と同氏は話す。日中のピーク時には、仮想デスクトップを利用するユーザー数が2800人に達することもあるという。「このインフラを担当する立場に立つ者は、それを支える技術に絶対的な自信を持っていなくてはならず、その技術の信頼性と速度の向上を図るために、毎日、一歩ずつ改善に取り組む必要がある」と同氏は付け加える。

VDI 2.0:次のキラーアプリケーション

 最先端の技術の導入が完了したら、次は何を目指せばいいのだろうか。ライト氏の場合、それは次に登場する技術の創出を支援することだ。同氏のチームは、タブレット端末と電子カルテ(EMR)ソフトウェアを組み合わせた斬新な技術につながる可能性のある取り組みを開始した。

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