BYODユーザーが数百人から100人以下に減少
ソニー・ピクチャーズ社員が仕事で私物スマホを使いたがらない理由
企業によってさまざまな考え方やアプローチの仕方があるBYOD(私物端末の業務利用)。米Sony Pictures EntertainmentがBYODのポリシーを変更したところ、利用者が急減した。同社は何を誤ったのか。
BYOD(私物端末の業務利用)に唯一「最善」といえるアプローチは存在しない。従業員の端末に制限をかけるモバイル端末管理(MDM)を採用することもできるし、モバイルアプリケーション管理(MAM)を使って会社のアプリケーションに使われるデータのセキュリティを確保する方法もある。
BYODの形態は実に多岐にわたる。米カリフォルニア州アナハイムでこのほど開かれた米Citrix Systemsの年次カンファレンス「Citrix Synergy 2014」では、顧客討論会で幾つかのアプローチが紹介された。
Sony PicturesのBYOD失敗
ソニーの米映画子会社Sony Pictures Entertainmentは従来、「Microsoft Active Sync」を活用し、MDMを伴わないBYOD制度を導入していた。だが同社のセキュリティチームは、BYODの新しいプロセスを検討・分析するために、この制度にストップをかけてしまった。
その結果としてまとめられた9ページから成る新ポリシーが策定されると、BYODを利用するユーザーが数百人から100人以下に減ってしまった。
ITモバイル技術・統合担当ディレクターのローリー・エルモア氏は言う。「われわれは参加者を増やすことに苦労している。その理由はセキュリティチームの言い方が反発を買ったからだ。『あなたが預けた端末は私が操作でき、あなたの写真やテキストメッセージもコピーできる』という内容だった」
そこで、Sony Picturesでは、端末上で個人と会社のセクションを切り離し、BYODポリシーの文言を一部緩和して、同制度に参加するユーザーを増やすため、Citrixの「XenMobile Enterprise Edition」の追加導入を検討している。
法律が違えば異なるアプローチを採用しなければならないこともある。例えばドイツの法律では、電力会社のEnBWはMDMで端末に制限をかけることはできない。そこで同社はMAMに重点を絞ったBYODアプローチを採用したと、EnBWのITモバイルソリューションチームリーダー、ボリス・シュローダー氏は語った。
「われわれはただ、自分たちが配信するアプリケーションと、そのアプリケーションのコンテンツを管理したいだけだ」(同氏)
そのアプローチに基づき、EnBWは最近、初の「Citrix Worx Home」アプリケーションとして、「Microsoft Outlook」メールと連動する「Worx Mail」を導入した。まず試験的に20~30台の端末に導入し、いずれは従業員のセルフサービスや交通費の精算などを含めてさらにアプリケーションを増やしていきたい意向だという。
BYODの利用が最も多いのは30~39歳
「Citrix社内ではBYODに関しては自社製品を試している」と話すのは、同社ITプラクティス部門ビジネステクノロジーソリューション担当副社長のマイケル・マッキルナン氏。2013年までに、同社のグローバルネットワークに接続するBYOD端末約1万2500台を「XenMobile」で管理してきたという。
同社は6年前、コンピュータが多様化してさまざまなモバイル端末が登場する中で、BYOD制度をスタートさせた。XenMobileを導入するまではMAMにも重点を置いていた。
Citrix自身の経験では、仕事のため私物端末を自由に使えるようにすれば、パワーアップにつながる。「主眼はテクノロジーよりもエクスペリエンスにある」とマッキルナン氏は言う。
興味深いトレンドも明らかになった。どんなユーザーが私物端末を使いたがるかという点で、BYODの利用者層は、一般的な通念に反していた。Citrix社内の統計によれば、BYOD端末の利用者が最も多かったのは30~39歳の年齢層だった。
マッキルナン氏は「BYODを期待し、要求するのはミレニアル世代(18歳~30代前半)だと思われていたが、それは真実ではなかった。ミレニアル世代は単純に仕事が欲しいだけだ」と指摘する。
BYODのセキュリティリスク
BYOD制度を導入する場合、セキュリティ関連の重要な問題について検討する必要がある。Sony Picturesのスニル・ダヤル氏によれば、同社ではユーザーがノートPCを持ってきて社内のインフラに接続したいと思っても、すぐにはかなわない。
「ではなぜ、スマートデバイスに自由意志を与えるのか」と同氏は問い掛ける。
間もなく同社が導入予定のXenMobile Enterprise Editionではコンテナ化技術を利用して、MDM経由でSony Picturesのネットワークに接続するための証明書をIT部門からユーザーにプッシュ配信できる。他の端末は全て「Citrix NetScaler」経由で社内ネットワークにアクセスでき、リスク要因を回避できるという。
Citrixの場合、セキュリティインシデントは、会社保有の端末よりも、BYOD端末の方が少ない。その一因はマッキルナン氏の言う「レンタカー症候群」、つまり、会社の端末よりも自分の端末の方を大事にする傾向にある。
「新しい端末を導入した場合、BYOD端末の方がなくす確率が低く、車にひかれる割合も少なく、水に落とす頻度も少ない」(マッキルナン氏)
Sony Picturesのエルモア氏によれば、同社では端末を次から次へとなくしてしまう1人の幹部のために、1年間で13台を購入した。この幹部は申し訳ないと思い、何台かは自分で購入したという。
Worx Mailのようなコンテナ内のデータのセキュリティ対策は重要だが、本来なら送信してはならない場所へのデータ送信を防ぐことも同じくらい大切だと前出EnBWのシュローダー氏は話す。
「誰かがFacebookなどでメールの添付ファイルを開いてしまい、自分たちの重要な計画を暴露してしまうような事態は望まない」(シュローダー氏)
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