製品ライフサイクルに関する1つの視点
「ネットワーク機器は3~5年で交換しなくてはいけない」は本当?
コスト削減の圧力が高まる一方で、製品のリプレースと保守メンテナンスはベンダーにいわれるままというケースは少なくない。ユーザーは「他に選択肢がない」と考えがちだが、本当のところ、どうだろうか。
ネットワーク機器の交換サイクルはどのように決まのか。多くの人は製品寿命が基準と考えているだろう。だが、米Gartnerが2012年に行った「企業のネットワーク機器の更新時期を知るには」という調査によれば、ネットワーク機器の交換時期は、実は製品寿命と関係ないことが多いという。例えばLANスイッチは、実際には7~10年は使用可能だが、多くの企業では約5年でリプレースしているという。
機器の交換時期はベンダーの都合で決まる?
同調査によれば、技術の進歩でハードウェアの品質は安定し平均故障間隔(MTBF)は飛躍的に長くなっているにもかかわらず、企業の使うIT製品の販売終了(EOS)までの期間は短いままであることが多いという。
Gartnerでは、ネットワーク機器の交換に際して、
- 使用中の機器に関するリスクと技術的要件を見直し、許容できない場合だけアップグレードを実施すること
- 別のベンダーからEOSが発表されているかという点に注意し、リスクを判断すること
- アップグレードは個別に対応し、事前に提示された更新サイクルだけで判断しないこと
を提唱している。
そうはいっても、現実的にはユーザー企業に選択の余地はほとんどない。現時点で問題なく稼働している製品ではあっても、ベンダーのサポートや保証が切れた状況下で運用を続けるのはリスクが高い。企業のIT担当者であれば、そう考えるのが普通だろう。
だが、ガートナージャパンが2014年10月に開催した年次イベント「Gartner Symposium/ITxpo 2014」で壇上に立った米Curvature 事業開発・グローバルマーケティング担当副社長のジェフ・ザナルディ氏は「企業は本来必要でないアップデートを強いられている」と訴える。
Curvatureではネットワーク機器を中心としたIT製品を新製品および再生品(型落ち品や初期不良などの理由で返品された製品を整備して再出荷したもの)で提供する一方、それらの保守サポートをサードパーティーとして提供している。2014年8月に、従来のNetwork Hardware Resaleから社名を変更した。
同社は2013年、米Forrester Researchに委託して米企業のCIOなどIT意思決定者304人を対象にネットワーク機器の運用の実態を調査した。これによると、「コスト削減に関する要求度の高まり」に対して「心配している」「非常に心配している」と回答した人は78%。一方で、79%の人が、ネットワーク機器の更新サイクルを「3~5年」と回答したという。また、ネットワーク機器の使用期間に関してベンダーからの「MTBFに関する情報」「サポート有効期間に関する情報」を重要視すると答えた人はそれぞれ89%と91%に上った。
多くの企業がコスト削減を強く意識していながら、全く問題がない製品を短いサイクルで交換している現状について、Forrester Researchは「たとえ予算を日頃から精査していたとしても、企業はベンダーの影響力を免れることができないので、ハードウェアのライフサイクル延長やサードパーティーによるメンテナンスソリューションがもたらすメリットに気が付かない」と指摘する。またこの調査で、ベンダーがサポートを継続してくれたら既存のネットワーク機器の使用を続けていたと回答した人は85%、サポートとメンテナンスの契約をサードパーティーから購入するというオプションがあれば利用すると回答した人は80%だったという。
保守契約に潜む3つのムダ
「そこにわれわれは違う選択肢を提供したい」とザナルディ氏は語る。
製品の買い替えを先延ばしにできれば、それ自体コスト低減につながるのは言うまでもないが、サードパーティーにサポートとメンテナンスを委託すると費用が安くなるというのはなぜか。
ネットワークに限った話ではないが、IT投資では機器購入時の初期コストとは別に、保守契約に伴う運用コストが発生する。保守契約には通常、ソフトウェアへのアクセスと技術的なサポート、故障時の交換の3つが含まれる。この金額は機器の価格に比例し、機器が高価であれば保守料金も高い。また、一度料金が決定すると、サポート期間中は基本的にずっと費用が発生し続ける。
保守契約に関して、重要な日付は3つある。1つ目が販売終了日(EOS)。この時点で同じ機器は提供されなくなる。2つ目がソフトウェアメンテナンスのリリース終了日(EOSM)。3つ目がサポート終了日(EOL)だ。3つの日付はいずれもベンダーによって決められる。サポートを継続したければ結局、機器を更新せざるを得ない。
Curvatureでは米Cisco Systemsをはじめ米Arista Networks、米Brocade Communications Systems、米Juniper Networks、米A10 Networksなどさまざまなベンダーの新製品だけでなく再生品を提供することで、初期費用を抑え、その結果としてサポートサービスも低価格で提供できるのだという。
また、ザナルディ氏はベンダーの保守契約の中身についてもムダが多いと指摘する。「本来無料で入手できるはずのソフトウェアを入手するために費用が掛かったり、ソフトウェアのリリースが終了してからもサポートのコストが変わらない。実際にはベンダーとの保守契約は必ずしも必要ではないのに、ただベンダーの利益のためにする更新は無意味だ」(ザナルディ氏)
ザナルディ氏によれば、北米で5000店舗を展開するあるスーパーマーケットチェーン店では、米国内4000店のネットワーク機器の保守サポートをCurvatureに移行して、それまで約320万ドル掛かっていた年間運用コストを約160万ドルへと半減させたという。またカナダの1000店では機器の調達もCurvatureに切り替え、1世代前の機器を導入することで各店のコストを7000ドルから2500ドルへ削減し、設備投資全体で450万ドルを削減。年間運用コストも90万ドルから32万ドルへと激減させたという。
“再生品は新品より故障の確率が低い”と主張する根拠
とはいえ、安かろう悪かろうでは話にならない。そもそも再生品ということだけで品質に不安を抱くユーザーもいるだろう。だが、ザナルディ氏は、「Curvatureでは出荷する製品について入念なテストを行っている。また、大半の製品のエラーは製造過程に原因があり、再生品は製品寿命の早い段階でそれが発見されて再出荷されたものなので、完全にテスト済みであれば、故障の確率はむしろ新品より低い」と、再生品の品質に問題がないと主張する。また、同社の製品にはライフタイム保証を提供しているという。
サポートの品質に関しても、24時間365日のサポート体制と迅速なハードウェア交換など、ベンダーに引けを取ることはないと自信を見せる。さらに、ベンダーでは自社製品しかサポートしないため、マルチベンダー環境では複数社のサポートを受けなければいけないが、サードパーティーならば窓口を一本化できると、強みをアピールしている。
サードパーティーによるサポートは日本で根付くか
サードパーティーによるサポートやメンテナンスについて、ある大手ベンダーに見解を求めると「可用性、セキュリティ、そしてITインフラストラクチャの柔軟性を保ち続けるためにも、EOL機器の移行とベンダーや提携パートナーの保守サポートサービスの利用をお勧めする」と想像通りの答えが返ってきたが、やはり、ベンダーでなければできないサポートというものはある。また、EOL後の製品を使い続けることによるリスクをゼロにすることはできないというのも事実だろう。
Curvatureでも、何が何でも「脱ベンダー」を促すという意図はなく、ファイアウォールやセキュリティといったミッションクリティカルな分野に関してはベンダーによるアップグレードやメンテナンスサポートを勧めているという。一方で、Curvatureでは無料のソフトウェアがある製品や新しいソフトウェアの提供がない製品などの分野において、自社で提供する製品やサポートを勧め、ユーザーにとっての費用対効果とパフォーマンスを最大化することを推奨している。
Curvatureは今後、日本での事業展開を活発化していく方針だが、現状、日本企業は総じて品質に対する期待値が高く、パートナーを精査する目も厳しい。特に大手企業においては、サードパーティーによるサポートサービスは存在すら知られていないケースも多いという。
一方で、IT担当者がコスト削減のプレッシャーを抱えている事情は他の国と変わらない。サードパーティーによるサポートをうまく活用してネットワーク機器の調達と運用に費やすお金を節約することができれば、浮いたお金をアプリケーションに回すなど、IT予算に優先順位を付けることもできるだろう。
導入面での課題を精査しなければならないことは言うまでもないが、1つの選択肢としてこうしたサービスの存在を知っておくことは、有効かもしれない。
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