Gartner Symposium/ITxpo 2014リポート
来たるハイブリッドIT時代「IT部門はブローカーになれなければ失敗する」
企業のITは今後、ハイブリッドクラウド、そしてハイブリッドITへと進化するだろう。IT部門はそれに伴い、クラウドブローカーに進化することが求められている。
「現在のプライベートクラウド/コミュニティークラウドの大半は、2017年までにハイブリッドクラウドへと進化するだろう」。米Gartnerのバイス プレジデント兼最上級アナリスト トム・ビットマン氏は2014年10月28日に開催された「Gartner Symposium/ITxpo 2014」で、来たるハイブリッドクラウドの可能性について述べた。
Gartnerによると、企業ITは約13年前にサーバ仮想化が始まって以来、パブリッククラウド(IaaS)、プライベートクラウドというステップを経て、ハイブリッドクラウド、さらにはハイブリッドITへと変革を続けているという。本稿では、企業はハイブリッドクラウドおよびハイブリッドITにどう向き合うべきかについて、セミナーを基に考える。
2017年、プライベートクラウドはハイブリッドクラウドへ
Gartnerではハイブリッドクラウドを次のように定義している。
ハイブリッドクラウド:キャパシティまたはケイパビリティを実現するために、異なるサービス・プロバイダーが提供するプライベート/パブリック/コミュニティ・クラウド・サービスのいくつかの組み合わせで構成されるクラウド・コンピューティング・サービス(出典:ガートナー、2014年10月「ハイブリッド・クラウドとハイブリッドIT:次なる未開拓領域」)
つまり、ハイブリッドクラウドとは、単一ユーザー環境で隔離されているプライベートクラウド、共通の目的を持ったグループごとに隔離されているコミュニティークラウド、ユーザー同士が隔離されていないパブリッククラウドといった3種のクラウド全ての要素が組み合わされ、調整されたクラウドの形態である。
上記でいうキャパシティーとは、複数のサービスを集約し、より規模の大きな1つにサービスにすることだ。一方、ケイパビリティーとは、複数のサービスの機能性を集約、カスタマイズあるいは1つのサービスへと統合することを指す。「真のハイブリッドクラウドでは、ユーザーがどこのベンダーのどのサービスを使うかを選んだり、意識したりする必要がない。ソースが見えないようになっている」(ビットマン氏)
同社が2013年12月に実施した「あなたの会社では2015年までにハイブリッドクラウド戦略を追求しますか?」という調査では、「はい」の回答が72%を占めたという。また、ビットマン氏によれば、ハイブリッドクラウドはプライベートクラウドよりも普及が4年程度遅れているそうだ。「約4年前、プライベートクラウドに関心のある企業はほとんどいなかったが、その後プライベートクラウドの導入は一定数あった」(ビットマン氏)。この4年前のプライベートクラウドの状況が今のハイブリッドクラウドの状態と似ているという。このことからビットマン氏は、「ハイブリッドクラウドを既に確立している企業はほとんど無いが、多くの企業が高い関心を持っている」と語る。
ハイブリッドクラウドが企業ITに合理的な選択肢になるのはどのようなケースか。ビットマン氏は以下のように述べる。
- ハイブリッドクラウドによってレイテンシの問題を回避できる場合:
イベント発生時にのみ、データをパブリッククラウドに移動し処理可能なレベルに調整するなど、要件に応じてデータベースを分割するケース。重要度の低いイメージをパブリッククラウドで、個人情報などはプライベートクラウドで運用するなどが考えられる。
- オンプレミスの効率化が必要な場合:
プライベートクラウドの使用がピークに達したとき、超過分をパブリッククラウドで処理するような実装を行うケース。年単位の開発/テストサイクル、四半期ごとの財務処理、歳末商戦時のEコマースなどがある。
- 別のプロバイダーが独自のケイパビリティーを提供している場合:
プライベートクラウドとパブリッククラウドの両方でデータ分析を実行するなどのケース。
- ステージングの通常モードとして使用する場合:
開発環境と本番環境でクラウドを使い分けるケース。パブリッククラウドでパイロット環境、プライベートクラウドで運用環境を実現する使い方などが挙げられる。
- 移行パスとして使用する場合:
ハードウェアの廃棄時にプライベートクラウドを廃止できるケース。大規模な開発/テストファームを5年かけてパブリッククラウドに移行する場合などがある。
- 選択肢の1つとして使用する場合:
プロバイダー/データセンターサイトの回復力(耐久力)を向上するために複数の拠点を管理するケース。DR(災害対策)などが挙げられる。
Gartnerは、ハイブリッドクラウドを実現する上で重要な4つのアーキテクチャとして、「Amazon Web Services」「Microsoft Azure」「OpenStack」「VMwareソリューション」を挙げている。これは、2013年12月に実施した「社内アーキテクチャを開発する際、クラウドプロバイダーの相互運用性という点で、次のどれを最も重視しますか?」という調査の結果に基づく。VMwareソリューションが42%、OpenStackが24%、Amazon Web ServicesとMicrosoftソリューションがともに16%という結果だった。
ハイブリッドクラウドよりも大きな波、ハイブリッドIT
だが、ビットマン氏は「ハイブリッドクラウドはニッチなトレンドであり、もっと大きな動きはハイブリッドITだ」と話す。同社が2013年12月に実施した「あなたの会社のIT部門は、2015年までに社内ハイブリッドIT戦略を追求しますか」という調査では、「はい」の回答が74%を占めたという。GartnerによるハイブリッドITの定義はこうだ。
ハイブリッドIT:クラウド・コンピューティングと従来型のコンピューティングの両方のスタイルを使って、すべてのITサービス(IT部門と社外プロバイダーが提供するサービスを含む) を提供する、信頼の置けるブローカー/プロバイダー(出典:ガートナー、2014年10月「ハイブリッド・クラウドとハイブリッドIT:次なる未開拓領域」)
ハイブリッドITでは、企業は従来型のIT環境を維持しつつも、重要度の高いアプリケーションをホストするプライベートクラウドを構築・管理し、必要に応じてパブリッククラウドを使いながら、クラウドプロバイダーとの関係を強化し、プロバイダーを管理していく(図1)。
このハイブリッドITの世界で重要になるのがブローカーの役割だ。単一のクラウドサービスを使うだけでは、ブローカーは必ずしも必要でないが、多様なサービス、ベンダーと関わるハイブリッドITの世界では必要になるケースが多いと考えられる。
ブローカーの役割としては、
- 複数のサービスを1つに集約し大規模/高機能なサービスとして提供する「集約」
- 産業、企業、要件に合わせてサービスを調整する「カスタマイズ」
- 複数のサービスのシナジーを高める「統合」
- サービスレベル、セキュリティ、コンプライアンス、効率的な使用を管理/徹底するといった「ガバナンス」
が期待されている。
ハイブリッドITにおいてもハイブリッドクラウド同様、ユーザーが具体的なサービスプロバイダーや製品を選んだり意識したりことはなく、それらはブローカーに委託する。「ブローカーは複数のサービスをつなぎ、付加価値を付け、ポータル画面の裏側にあるサービスプロバイダーを抽象化する」(ビットマン氏)
IT部門がブローカーになるには
今、企業のIT部門はブローカーとして歩み始めるための転換期にあるという。ビットマン氏は「大規模なIT部門はブローカーになるだろう。さもなければ失敗する」と警告する。
IT部門がブローカーになるにはどのようなステップを踏む必要があるのか。以下は、ハイブリッドITへの8つのステップである(図2)。
また、ビットマン氏はIT部門が実行すべき行動指針として、
- 直ちにハイブリッドIT戦略にコミットする
- 90日以内に、ブローカーが統合するクラウドプラットフォームの設計をする、将来のハイブリッド化を念頭に置きプライベートクラウドを設計する。将来にわたって統合と相互運用性が確保されるようにする
- 1年以内にクラウドコンピューティングのブローカーとしての付加価値を提供できる組織を創設する
ことなどを提案している。IT部門がより付加価値を付け、ビジネスを支える推進力のある部隊へと変わることの必要性を強く訴えていた。
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