多くのクラウドサービスが登場する一方で、クラウドの本質がないがしろにされていることも多い。2013年4月に開催されたガートナーサミットからクラウドに関する講演をリポート。クラウドの本質をあらためて問う。
国内には、“クラウド”と名の付くIaaSが既に60以上存在する。それら全てが本当にクラウドコンピューティング(以下、クラウド)といえるのか? 中には、単なるホスティングと変わらないサービスも多く見受けられる(関連記事:“オレオレクラウド”にはこりごり、クラウドの本質を知る)。そんな中、クラウド市場はいよいよピークを超えようとしている。
ガートナー ジャパンは2013年4月24〜26日に「ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2013」を開催。同社のアナリストやITベンダーなどによる講演を通して、クラウド、ハードウェア、ネットワーク、モバイル、運用管理をはじめ、テクノロジーの最新動向や導入・運用ノウハウを多数紹介した。ガートナー リサーチのバイス プレジデント兼最上級アナリスト 亦賀忠明氏の講演では、パブリッククラウドとプライベートクラウドのトレンドを解説(関連記事:伸び悩むプライベートクラウド、普及の鍵は技術への正しい理解)。本稿ではこの講演の中からパブリッククラウドのトレンドを中心にリポートする。
ガートナーが2012年9月にアップデートした「ハイプ・サイクル」(※)によれば、クラウドは過度な期待をされていた「ピーク期」を過ぎ「幻滅期」に入ったという。この幻滅期とは、市場がクラウドに対して冷静な判断をする時期のことだ。ピーク期は、多くのベンダーが自社サービスに「クラウド」と名付けて売り出してきた。中には、ホスティングと何が違うのか分からない疑似クラウドも多い。幻滅期とは、そうした偽物と本物が区別される時期だ。こうしてクラウド市場は、中長期的には安定していくという。
※ハイプ・サイクル……新しい技術が登場してから普及するまでの間、その技術への期待度と成熟度の変化を時間軸とともに示した図。ガートナーでは「黎明期」「ピーク期」「幻滅期」「啓蒙活動期」「安定期」の5段階でとらえている。
市場に疑似クラウドが横行したことによって、「クラウドを導入したのにコストが安くならなかった」「クラウドサービスに申し込んだら、ベンダーの営業担当者から電話がきて、詳しい要件を聞きたいと言われた」「全社的なサーバ仮想化をプライベートクラウドと呼ぶ」ようなケースがはびこり、クラウド市場は混乱を来してきた。
このような混乱の中で、ユーザーが本物のクラウドを選ぶにはどうすればいいのか? 亦賀氏は、ベンダー/ユーザー双方がクラウドを正しく理解することが欠かせないとし、「多くの人が“クラウド”と言うけれど、本来は“クラウドコンピューティング”であり、コンピューティング、つまりテクノロジーの話であることが置き去りにされていないか」と疑問を呈した。
ガートナーではクラウドを次のように定義している。
「スケーラブルかつ弾力性のあるITによる能力を、インターネット技術を使用して、サービスとして企業内外の顧客に提供するコンピューティングスタイル」(ガートナー資料より引用)
亦賀氏はクラウドの特性として次の6つを挙げた。
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