フラッシュの価格が下がり、HDDに近づいている。だが、フラッシュの単価算出が非常に難しいため、購入担当者は頭を悩ませている。価格の優劣を容量当たりの単価で見ていたためだ。
オールフラッシュストレージシステム(またはオールフラッシュアレイ。以下、AFA)の価格はHDDストレージシステムの価格と変わらなくなった。少なくとも、AFA提供企業は顧客がそう考えることを望んでいる。AFAはHDDストレージシステムと同等になったという主張は、ほとんどの点で証明できる。ただし、値段が同等という主張は証明が難しい。なぜならばAFAのGB単位の正確な価格を決定するには、変更要素が無数に存在するためだ。
AFA提供企業はAFAがHDDストレージシステムと価格面においても同様だ、と主張をしている。理由は2つで、1つはNAND型フラッシュメモリの価格が下がり続けていること、2つ目は重複排除や圧縮などのデータ効率化テクノロジーが利用しやすくなったことを挙げている。
フラッシュのGB当たりの原価は、生産量の増加とフラッシュセル(データを記憶する半導体)の高密度化によって急速に下落している。企業がフラッシュを採用し始めたころは、1つのセルに1ビットのデータを書き込むシングルレベルセルが標準だった。その後、1つのセルに2ビットを記録するマルチレベルセル(MLC)が一般的になり、現在ではほとんどのフラッシュアレイにMLC NANDが用いられている。エンタープライズクラスのAFAでは、ここ半年で、1つのセルあたり3ビットを記録するトリプルレベルセルの採用も始まっている。AFAの価格は、こうした高密度化により、HDDの価格に近づいている。
高密度化にはフラッシュの耐久性が低下するというデメリットがある。基本的にはドライブのビット密度が増えるほど、フラッシュのモジュール寿命は短くなる。AFAはこの問題について幾つか対策を取っている。まずほとんどのAFAは冗長コンポーネントを用意しているため、フラッシュセルの一部が摩耗しても別の部品に置き換えることができる。次にAFA提供企業は耐久性を挙げるため、フラッシュ全体の容量を余分に設定している。中には容量の75%しかストレージシステムが使用できないようにしている提供企業もある。その理由は余分に容量を用意すれば、フラッシュセルへの書き込み回数を減らすことができるためだ。
極端な例えだが100のデータを10個のフラッシュセルに書き込む場合は、1フラッシュセル当たり10回書き込むことになる。これを100個のセルに書き込むことにすれば1フラッシュセル当たり1回の書き込みで済むようになる。結果として容量の一部は犠牲になるが、ドライブの見掛けの寿命は長くなる。
物理容量からフラッシュの価格を計算するのは比較的簡単だ。唯一の変動要素は、冗長性のために確保しているフラッシュの量だ。少なくともこの時点で問題になるのは、GB当たりの原価だけで比較すると、AFAはHDDと等価にはならないことだ。その結果として、価格が変わらないという主張を裏付けるために、ほぼ全てのAFAベンダーがデータ効率化テクノロジーを利用することになる。
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