サーバレスはPaaSの再来か
コンテナ派とサーバレス派に分かれるIT部門 理想のインフラは?(1/2 ページ)
ITインフラの将来像を描くとき、企業は「コンテナか、サーバレスか」に迷う。これは、今ITインフラの分野で最も白熱する議論といえる。
OSとアプリケーションコードの中間層にあるソフトウェア抽象化層に位置するコンテナが、市場で人気を集めている。コンテナの展開に当たっては、業界標準の「Kubernetes」が中心になることが多い。企業内クラウドにおいてワークロードを移植できる可能性があるためだ。多くのIT専門家が、コンテナは企業のコンピューティングにおける主要な単位になると考えている。
だがサーバレステクノロジー、より正確にいうなら「FaaS」(Function as a Service)は、2017年のコンテナとほぼ同レベルで人気が急上昇している。サーバレスのアプローチは、コンピューティングインフラをユーザーから完全に抽象化する。開発者はサーバレスインタフェースを通じてコードスニペットをアップロードする。これらのスニペットはサーバ、コンテナなどのコンピューティングユニットのプロビジョニングや管理をする必要なく、バックグラウンドで実行される。
コンテナとサーバレスには重なる部分がある。コンテナは、パブリッククラウドでのサーバレスフロントエンドを支えるために使用されることが多い。企業もファイアウォールの背後でこの構成を模倣しようとする。
Concur Technologies(SAPグループの1社)のDevOpsチームは、Kubernetesコンテナオーケストレーションで実行されるGraphQLデータベースを中心にサーバレスインタフェースを構築する予定だ。
「サーバレスは偶然にも、多くの形式的作業を伴うことなく、開発者がスキーマを最も簡単に更新できる方法だった」と語るのは、同社でプリンシパルソフトウェアエンジニアを務めるデール・ラガン氏だ。ただし、この環境において、サーバレスが他のインタフェースを上回るかどうかは疑問だとも話す。
「使用するのは、さまざまなものを組み合わせるアプローチになるのではないかと思う」(ラガン氏)
コンテナとサーバレスは一緒に使う必要はない。サーバレステクノロジーは、初期のコンテナベースの段階を越え、エンタープライズアプリケーションを長期導入するのに望ましい方法になる。そう予測するITプロフェッショナルもいる。
「サーバレスはマイクロサービスアーキテクチャの概念と非常に調和する」と話すのは、高等教育機関向けソフトウェアメーカーEllucianのDevOpsおよびクラウド担当のシニアディレクター、ジェイソン・ショーン氏だ。
サーバレスは、最小のコンポーネントパーツ(マイクロサービスなど)に分解されるアプリケーションの当然の帰結になると主張する賛同者もいる。「サーバレスであれば、どのPCの状態も保つ必要がないため、信じられないほどの拡張が可能になる」と同氏は話す。
併せて読みたいお薦め記事
コンテナとサーバレスを比較
マイクロサービスに取り組むには?
サーバレスはPaaSの再来か
サーバレステクノロジーは、ワークロードを断続的に必要とするアプリケーションのみに適している。例えばAmazon Web Services(AWS)の「AWS Lambda」の関数は最大5分しか実行することができない。だが、長時間実行されるアプリケーションが今後Lambdaに似たプラットフォームを使用するようになると考える専門家もいる。また、サーバレスは最終的にインフラ管理を取り除くあらゆるパブリッククラウドサービスを含むようになるとも考えられている。こうしたサービスは既に「PaaS」(Platform as a Service)として知られている。
New York Times CompanyでCTOを務めるニック・ロックウェル氏は次のように話す。「コンテナはあまり重要ではなく、大したメリットは提供しないことが多い。個人的には、IT業界側が間違ったのだと思う」
同氏のチームは「CaaS」(Containers as a Service)製品の「Google Kubernetes Engine」(GKE)を試したが、開発者の効率を上げるために同じ「Google App Engine」に乗り換えた。PaaSのアプローチは、基盤となるインフラの選択肢を制限するため、最前線を進む一部DevOps部門では人気を失っている。だが同氏は、この制限は実際には良い影響をもたらすと考えている。
「プラットフォームの条件に従わなければならないということは、アプリケーションの最も重要な部分のコーディングに取り込むしかないことを意味する」とロックウェル氏は語る。
サーバレスはPaaSの一種だが、このFaaSのアプローチは実際には以前のPaaSより制限が緩くなっていて、これからPaaSがどのような進化をたどるのかを教えてくれる。そう語るのはIDCのリサーチマネジャーであるゲイリー・チェン氏だ。ほぼ間違いなくAWSは「AWS Step Functions」でこのアプローチを順調に進めている。Step Functionsは、より複雑なアプリケーション向けにLambda関数のオーケストレーションを実行する機能だ。
この2年間で、業界はPaaSからFaaSではなくCaaSにシフトしている。PaaSの先駆者であるPivotalの「Pivotal Cloud Foundry 2.0」は「Cloud Foundry Container Runtime」を提供する。同社の担当者は、さまざまなアプリケーションでサーバレス、PaaS、コンテナの3つのインタフェースを使う方法について顧客にアドバイスするつもりだと述べている。
PaaSの問題は、関数ベースかどうかにかかわらず「依存関係」にあると語るのはConcur Technologiesのラガン氏だ。
「『Heroku』はそうした面で大変優れた働きを見せるが、ホストそのものにおいて依存関係の問題にぶつかるのは変わらない。それは導入しているコードの中とは限らない。これは、当社がコンテナの方向に進んでいる理由の1つだ。イメージをいったん作成したら、その詳細についてはほとんど考えずにサーバ間を移動できる方がずっとよい」(ラガン氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー