税務や労務について的確な指示を出してくれる税理士や労務士は、中小企業にとって頼れる存在。ITについて助言するのは「管轄外」だといわれるが、本質的な経営課題を解決しようとする働きかけはあるのだろうか。
中小企業の多くは現状、税務処理や人事・労務関連業務について、税理士、会計士、社会保険労務士といった、いわゆる「士業」の先生にお願いしている。税理士には毎月の会計処理を依頼し、社会保険労務士には社員の入・退社、給与、社会保険料、就業規則について相談したり、社員との雇用契約上の業務処理をお願いしたりする。しかし、士業は中小企業のそれぞれの後方業務が専門である。果たして企業としての本質的な課題、経営者の悩みなどの包括的な相談に乗ってもらえるのだろうか。
例えば、ITを活用する方法などを実際に提案するのは、士業本来の役割ではないので難しいとの声も聞かれるが、中小企業にとって良き助言をもらえる、最も近い外部の相談者は“士業のセンセイ”方のはずである。実際はどうなのか?
いわゆる士業と呼ばれる国家資格を有する人たちは、中小企業にとっては外部に頼れる数少ない存在といえる。実際に税理士は毎月の帳簿チェックや会計処理などの財務指示を行っており、企業との関係は深い。また社会保険労務士(以下、社労士)は、社会保険料から人事の相談まで幅広い業務相談を請け負う。特に総務部門が手薄な企業では、業務を一手に引き受けてもらうこともある。
以下の表では、税理士、社労士に加え、中小企業診断士やITコーディネータなど中小企業の経営支援に関連する代表的な士業と人数を示している。今回は、一般的な中小企業にとって最も関連の深い税理士と社労士へのインタビューから、中小企業はどのようにこの先生たちとつながっていくべきかを探りたい。
有資格者 | 所轄官庁 | 役割 | |
---|---|---|---|
税理士 | 7万1601人(2009年11月現在) | 財務省 国税庁 日本税理士会連合会 |
税務の専門家として、独立した公正な立場において納税義務者の信頼に応え、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。各種税金の申告・申請、税務書類の作成、税務相談、税に関する不服審査手続きなどを行う |
中小企業診断士 | 8500人(2009年12月現在) | 経済産業省 中小企業庁 社団法人中小企業診断協会 |
経営コンサルティングにかかわる資格の中で唯一の国家資格。資格がなくてもコンサルティングは行えるが、有資格者であれば信頼性が高まり、独立開業する場合には有利 |
社会保険労務士 | 3万4223人(2009年9月現在) | 厚生労働省 日本年金機構(旧社会保険庁) |
労働関連法令に基づく申請書の作成代行などを職業として行うための資格またはそれを職業とするもの |
ITコーディネータ | 約6000人(2009年12月現在) | 経済産業省 特定非営利活動法人ITコーディネータ協会 |
経営とIT両面に精通し、企業経営に最適なIT投資を支援・推進することができるプロフェッショナル。ユーザーとITベンダー双方の立場を理解し、経営者の立場から真に経営に役立つIT投資をサポートする |
※参考文献:各所轄官庁WebサイトおよびWikipedia |
社労士は、顧問企業からの毎月の顧問料をもらうことで成り立つ。顧問契約企業数を何社持つかで基本的な収入が決まる。例えば、30社顧問契約企業があるとすれば、1社当たり月額顧問料4万円の場合は毎月120万円の収入が得られることになる。
社労士は税理士とは違い、毎月必ず定期的な業務があるわけではなく、一度決めた社員や人事の制度が固まれば特に何もすることがないこともある。つまり、入社や退社、保険料率の変更などのイベントがなければ、何もせずとも顧問料がもらえるわけだ。社労士は一見、楽なビジネスのようにも映るが、今回取材した社労士からは以下のような本音を聞いた。
「実際、毎月指導することはあまりない。保険料や法改正などがあれば必要になるが、社員の出入りが多くなければ、税理士のように毎月顧問企業へ行くこともなく、何もしなくても顧問料はもらえる。それでいいかどうかは別にして、多くの顧問企業を持つことで、社労士のビジネスの安定性は図れる。ただし、単に顧問先を増やして個々の企業に深くかかわらないやり方だと、中小企業の本質的な改善提案はできないことは分かっている」
社労士、特に開業社労士は指導する意識が高い人が多いため、自己研さんなどの上昇志向をもともと持っている。しかし、企業からの要求や相談が少ないということもあり、その能力を十分に使い切っていないようだ。
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