現場からのボトムアップによるプロジェクト管理を支援する「PM-BOX」プロジェクト管理ツール紹介:アイナス編

プロジェクト管理の知識体系である「PMBOK」を採用する管理ツールは多い。しかし、日本のソフトウェア開発環境では、その適用は難しいという声もある。こうしたギャップを解消するために必要なこととは何だろうか。

2010年06月17日 08時00分 公開
[唐沢正和]

日本のソフトウェア開発環境に適したツールが必要

 読者の多くは「80対20の法則」という法則をご存じだろう。「全所得の8割は、人口の2割の富裕層が持つ」「売り上げの8割は、全顧客の2割に依存している」など、成果や結果の8割はその要素や要因の2割に基づくという一般法則だ。この法則はさまざまな現象や場合を説明する際に用いられる。

画像 アイナスの塩見氏

 アイナスの塩見智和氏によると、ソフトウェア開発プロジェクトにもこの法則が当てはまるという。同氏は「一般にソフトウェア開発プロジェクトの8割が赤字プロジェクトといわれ、残りの2割の成功プロジェクトで利益を出している」と分析する。また、「赤字プロジェクトに陥る原因は、プロジェクト計画での見積もり精度が低いままプロジェクトを開始することにある」と説明する。その結果、プロジェクト開始後に仕様変更が続出するなどタイムロスが発生し、収支管理がうまくいかなくなるというのだ。

 こうした課題を解決するためには、従来のような手作業によるプロジェクト管理(以下、PM)ではなく、さまざまなプロジェクト情報を定量化するツールを活用することが重要だ。しかし、そのツールにも問題があると塩見氏は指摘する。

 現在普及しているPMツールは、国際的なプロジェクト管理の知識体系である「PMBOK」を適用しているものが多い。塩見氏は「日本のソフトウェア開発環境は複数の企業が関与する重層構造になっており、また、もともと現場主導でファジーなプロジェクト管理を行ってきたので、PMBOKの手法は簡単にはなじまない」と語る。その上で「日本のソフトウェア開発の文化をうまく取り入れ、プロジェクトマネジャーや現場が抱える悩みを解消できるプロジェクト管理ツールを提供することが必要だ」と考えて開発したのが、同社のプロジェクト管理ツール「PM-BOX」であるという。今回は、アイナスのPM-BOXを紹介する。

金銭と同様に“時間”も伝票で管理する

 PM-BOXは2005年5月、ソフトウェア開発プロジェクトにおける工程集計・分析システムとして開発された。その後、2008年11月に工事進行基準に対応したプロジェクト管理システムとして機能拡充を行い、複数プロジェクトの収益総額や原価総額、進ちょく度をリアルタイムに管理する機能を搭載した。

PM-BOXの主要機能一覧(ユーザー権限によって利用制限が可能)
業務名 機能名
プロジェクト業務 プロジェクト登録・更新機能、プロジェクト参照機能
WBS(作業分解図)登録・編集機能、WBS参照機能、WBS登録情報CSV出力機能
外注情報登録・更新機能、外注情報一覧CSV出力機能
経費登録・更新機能
プロジェクト進ちょく プロジェクト進ちょく状況表示機能、プロジェクト進ちょく状況CSV出力機能
EVMグラフ、ガントチャート出力、進ちょく推移表
通常作業業務 通常作業登録・更新機能、表示作業分類設定機能、通常作業予定登録機能
業務全般 注目の業務情報表示機能、業務一覧、業務一覧CSV出力機能
業務別集計表出力機能、担当者別集計表出力機能
日報 日報登録・更新機能、日報参照機能、作業一覧表示機能
日報承認機能、日報承認メッセージ登録機能、日報承認メッセージ参照機能
日報承認リポート表示機能
月報 月報出力機能
タイムレコード表示機能
検索 プロジェクトのサイト内検索機能、作業のサイト内検索機能、最近のプロジェクト一覧表示機能、最近の作業一覧表示機能
顧客情報 顧客情報登録・編集機能、顧客情報参照機能
マスタ管理 社員の登録・編集、部署の登録・編集、ステータスの登録・編集
業務分類の登録・編集、作業分類の登録・編集、休日の登録・編集

 PM-BOXでは「時間伝票」という概念が使われている。塩見氏は「『時は金なり』という言葉があるが、時間についても、金銭の動きと同様に伝票として記録していくことで、企業の実態を正しく把握することができる」と説明する。

画像 WBS入力画面《クリックで拡大》

 PM-BOXは、会計処理において金銭の取引が発生したときに出金伝票や入金伝票を作成するように、プロジェクトメンバーの実際の作業時間を伝票に記録し、それを管理単位とする点が特徴である。プロジェクトの時間と金銭の両面の信頼性を担保し、精度の高い見積もり作成および収支管理を実現するというものだ。さらに、メンバー1人ひとりが時間伝票を付けることで、現場からのボトムアップによるプロジェクト管理も実現できるという。

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