流通BMS対応は適材適所のクラウド活用を検討しよう受発注システム選びの勘所【第4回】

流通BMS対応の受発注システム構築を考える際にも、クラウド活用は有効だ。サーバのサイジングが難しい場合や、取引先の都合ですぐに対応しなければならない場合には特に有効な選択肢になることだろう。

2010年09月06日 08時00分 公開
[土田浩之,ウルシステムズ]

仕様としての完成度が高まった「流通BMS Ver1.3」

 2009年11月に「流通BMS Ver1.3」がリリースされたことは本連載の第1回「流通BMSの先行事例から見えてきた受発注システムの課題」で紹介した。流通BMS Ver1.3では、それまで基本形と生鮮版で分かれていたメッセージが統合され、取り扱い可能な商材は日雑、生鮮、ドラッグからホームセンターまで広がった。これにより、流通BMSの利便性・保守性がこれまで以上に高まり、本格的に普及しやすい仕様として完成度が高まったといえる。 

画像 流通BMSのバージョン

導入効果の“見える化”

 これまで流通BMS導入を検討していた企業の課題となっていたのは、既存のEDI(Electronic Data Interchange)を流通BMSへ切り替えることで自社システムにどのような効果があるのかが分かりづらいことだった。

 流通BMSの一般的な導入効果としては、通信インフラがアナログ回線からインターネットに変わることでメッセージの送受信時間が短縮され、受発注に続く業務を前倒しで進められることなどが挙げられる。しかし、そのような一般的な効果を自社のシステムまたは業務へ置き換えた場合、時間的、またはコストとしてどの程度の効果・メリットがあるのか分かりづらかったのだ。また、やりとりされるメッセージの中身に関しては、発注・受注に含まれている項目が支払い・請求まで引き継がれるという流通BMSの仕様が、同じく自社のシステムへ置き換えた場合にどの程度業務改善効果があるのかを事前に把握するが難しかった。

システム担当者としては、今でも使えている現行のEDIをやめて流通BMSへ乗りかえることは簡単には進められない。例えば「在庫の削減」や「締め処理における支払い・請求作業の軽減」など、自社の具体的な業務における効果を“見える化”する必要がある。効果の見える化が難しかったために、導入したくても必要な予算の確保につまずいてしまったシステム担当者も多かったことだろう。

 こうした課題を解決するために、流通システム標準普及推進協議会は導入企業の実績を基に効果算定モデル式を作成し、導入検討企業が自社システムになぞらえて導入効果を数値として把握できる資料(「流通BMSの導入による効果算定に関する調査研究事業報告書」)を提供している。

流通BMSのバージョンごとのメッセージ種別
メッセージ種別 バージョンごとの対応メッセージ
基本形Ver1.0 基本形Ver1.1 基本形Ver1.3
発注
出荷伝票
出荷梱包(ひも付けあり)
出荷伝票(ひも付けなし)
受領
受領訂正    
返品
請求
支払い
返品受領    
出荷荷姿    
集計表作成データ(発注)    
集計表作成データ(出荷)    
集計表作成データ(出荷梱包ひも付けあり)    
集計表作成データ(受領)    
値札  
発注予定    
納品提案    
POS売り上げ    
在庫補充勧告    
入庫予定    
入庫確定    
在庫報告    
商品提案(カタログ)    
商品提案(商品マスター)    
商品提案(価格提案)    
●新規追加、◎項目追加、△データ属性の変更、○変更なし

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