JDSF会員企業座談会(3)
クラウド以後のストレージ未来予想図
新たなストレージ環境として注目されている“クラウドストレージ”。提供側であるベンダー各社はどう考えているのだろうか。ストレージ業界団体であるJDSF会員を対象にした座談会での議論を紹介する。
「ベンダー各社が考える、ストレージ統合への障壁とは?」「ストレージ仮想化の導入メリットって何ですか?」に続き、ストレージ業界団体「JDSF(Japan Data Storage Forum)」会員を対象とした座談会の模様をお届けする。今回は、クラウドストレージに関する内容を紹介する。
三木:世の中、何がクラウドか定義が曖昧なまま、クラウドという言葉がもてはやされています。ストレージにもクラウドをうたうサービスが登場しています。クラウドストレージで求められていることは、ストレージ業界が昔から言ってきたこと。それがさまざまな技術の進化で実現できるようになりました。自社の製品やサービスのクラウド対応をお伺いします。もちろん「クラウドへの対応は不要だ」という回答でも結構です。
堀本:1980年代の米国の大学機関で、クラウドストレージの先駆けと言える分散ファイルシステム「Andrew File System(AFS)」が誕生しました。今日、クラウドストレージの実用化の時期になったのでしょう。
日立製作所では「コンテンツクラウド」というコンセプトで、各拠点のファイルストレージとセンターのファイルストレージをシームレスに連携する仮想ファイルプラットフォーム「Hitachi Virtual File Platform」を提供しています。各拠点からセンターに自動的にファイルが移行され、ユーザーはそうした分散環境を意識することなく必要なデータにアクセス可能です。
星野:シマンテックも同様の機能をソフトウェアで実現する「NetBackup Cloud Storage」サービスを提供しています。
佐原:日本ではパブリッククラウドにデータを預けることに少なからず抵抗があります。そのため、自社のデータセンターにストレージを設置する傾向が強いですが、徐々にセキュリティを担保しながら、オンプレミスでアーカイブストレージを持たずにクラウドサービスを利用してデータの一部を移行するユーザーも増えてきているようです。価格を重視するパブリッククラウドサービス環境に関する一番の焦点は「クラウドの構築・運用コスト」。分散ファイルシステムやHadoopを採用するなど、いかにコストを下げるかが課題でしょう。
三木:クラウドやデータセンターサービスを提供する事業者が今後導入するストレージを考えたとき、「技術に長けた企業はHDDを並列させて自社でストレージを組み上げて運用していくが、一方でストレージ構築・運用の負荷を回避したい事業者が増える」という二極化が進んでいきそうですね。
柳瀬:最近は、スケールアウト型の分散ファイルシステムへの関心が高いようです。100台単位である程度のストレージ容量を搭載したサーバを購入し、分散ファイルシステムを自社で導入し管理することで、コストを抑えているユーザー企業もいます。クラウドサービスプロバイダーはそうしたシステムを選ぶ傾向が強くなっていると感じます。
堀本:日立製作所のユーザー企業でも二極化は進んでいます。Googleのように技術力がある企業は、安価なストレージを導入してインフラ導入にはあまり費用をかけずに自社でファイルシステムを開発しています。また、そうした技術面よりもサービス面の充実に注力し、比較的コストが高くても信頼性などを考慮し、ファイルシステムを含めたITインフラをベンダーから調達する企業もいます。
諏訪:ある程度のサービスレベルは守りたいが、それでもコストを重視する傾向にあるという企業が多いです。その中には、安価なシステムを導入したことで障害が発生してしまったというケースが少なからずあります。ストレージ業界としては、顧客のコスト抑制のニーズを考慮しつつ、サービスレベルに応じた最適なシステムを提供することに取り組んでいくべきだと考えます。
中野:パブリッククラウドを利用する企業は、ファイブ9(99.999%)までの高い信頼性を持つストレージでなくてもいいという企業もいます。EMCでは、サービスプロバイダー向けにクラウド型ストレージ「EMC Atmos」を提供しています。Googleのように自社開発でなくても、ソフトウェア機能を活用してクラウド型のシステムを安価に構築できます。
意外と高い自社運用のニーズ
三木:クラウドの焦点は「管理の自動化」です。ストレージ管理を支援するツールを活用すれば、管理者の手を煩わせることなく、一貫したサービスを迅速に提供できます。バックアップの運用を含め、ユーザーの業務負荷を少なくした上でITインフラを運用できるというチャンスが出てきました。それがプライベートクラウド的なストレージではないでしょうか。
星野:その点では、ストレージとサーバ間の連携は重要です。自動階層化はサーバ側、ストレージ側のどちらでも実現可能ですが、なかなか協働できていませんでした。私が考える究極の管理とは「ストレージ、サーバそれぞれのいいとこ取りをした完全自動化に近い管理手法」です。それが実現すると、障害が起きた場合にその切り分けについて新たな属人性が出てきます。そのため、管理担当者へのトレーニングや、ソフトウェア/ハードウェアベンダーが協力する必要が出てくると思います。
三木:大規模なストレージ環境においても、企業が自社でできる限りの運用を行っていくケースが増えていくと思いますが、いかがでしょうか。
中野:“Yes and No”ですね。EMCでは最近、ストレージ運用の委託サービスを開始しました。そのサービスでは、一定期間常駐した後、マニュアルや手順を策定してトレーニングを実施してから担当者へ運用を引き継ぐという内製化支援も行っています。コストの見直しを踏まえて、外注ではなく自社で運用にシフトしている企業もいます。
星野:完全に2つに分かれますね。どちらかというと、自社で対応したいという割合が増えていますが、その分、メーカーへの依存度が高まっている企業もあります。
堀本:運用を外部委託することによるコストメリットを追求しているユーザー企業の比率が高いです。
諏訪:ユーザーの動向は両極端。コスト削減だけでなく、変化が激しいビジネスに対応するために自社運用を選択する企業もいます。
中野:委託する場合は納期調整などの作業が入るので、自社運用のニーズが高くなるのかもしれません。比較的容易なサーバの仮想化を自社で運用している企業は多いです。
今後の方向性とは
三木:クラウドの定義をごくごく簡素化すると「利用者が利用したいものを、利用したいときに、利用したいように使える」ように支援する機能やサービスを指します。その点では今後もそうした支援機能やサービスはより進化していくでしょう。自社での将来的な展開・展望はありますか?
佐原:CTCでは、IaaS(Infrastructure as a Service)型サービス「TechnoCUVIC」によって仮想化リソースプールを提供しています。今後は、それに加えてユーザー自身による設定変更が可能なセルフサービスポータル機能を提供する予定です。また、異種混在環境におけるリソースプールのプロビジョニング作業が可能なツールなど、現行よりも簡単に利用できる仕組みを考えています。
三木:クラウドや仮想化環境における運用管理ツールはサーバ側から提供されることが多いです。しかし、ユーザーからするとベンダーから独立した管理ツールが選択肢の1つにあることが望ましいですね。
佐原:米国を含めてよりよい管理ツールを探していますが、これといったツールが見当たらないのが現状です。もしかしたら、そうしたツールは国内のベンダーの方が作成しやすいのかもしれません。
堀本:クラウドによって、サーバ、ネットワーク、ストレージの3層が垂直統合化されるという意味では、いかにプラットフォーム全体を運用管理できるかが重要になります。弊社でもJP1という運用管理製品がありますが、統合プラットフォームを提供するベンダーの1社として、そうした製品を今後さらに進化させることが求められていると思います。
三木:確かに、仮想化マシンが数多く稼働する環境でライブマイグレーションが可能になれば、ネットワークに関する設計や監視が必要になりますね。ストレージ環境について、ストレージだけを語ればいい時代ではなくなりつつあります。
中野:ストレージにおける重要なテーマとして、データのポータビリティ性が挙げられます。そのためのストレージ仮想化製品も進化してきます。面白い方法としては、データをカプセル化して移行できる「VMware Storage vMotion」ですね。この技術とVAAI(vStorage API for Array Integration)という新しいAPIによってストレージが連携していますので、データポータビリティの新しい方向性になると思います。
柳瀬:ポータビリティという点では、パブリッククラウド型のストレージサービスへの移行が進むと、別のサービス(ベンダー)への切り替えに問題が出てくるかもしれません。別のストレージへのデータ移行が難しいサービスも存在します。また、情報システム部門が子会社化されていることなどを背景に、パブリック、オンプレミスを問わずデータの使用容量に対する課金の仕組みが今後求められるでしょう。
倉持:人によって定義が曖昧なクラウドというキーワードを使わなくても、これまで開発してきた技術を活用し、クラウドサービスとしても利用できるストレージ機能の強化を引き続き進めていければと思います。
星野:シマンテックでは「ユーザーに意識させないレベルで大容量、管理コストをかけないソリューション」を模索しています。あくまで構想段階の話ですが、ファイルシステムレベルでの重複排除がその候補に上がっています。
諏訪:日本HPでは「サービスレベルの順守」について取り組んでいます。SANスイッチやストレージアレイの中での帯域制限を行うQoS(サービス品質)ではなく、サーバとストレージが連携してプライオリティを付け、そのレベルに応じたパフォーマンスを保証するというものです。
中野:日本では、ミッションクリティカル環境をVMwareで仮想化している企業はまだ多くはありません。サーバ統合を起爆剤にして、仮想環境や物理環境などを統合した、より信頼性の高い情報インフラの提供を進めていきます。特にミッションクリティカル環境を仮想化する中で、自動管理可能なストレージを提供していきたいです。
三木:確かにサーバ仮想化のおかげもあって、企業におけるデータ管理やストレージの利用方法が大きく変革した時代になりましたね。
本日はどうもありがとうございました。
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