昨今、サーバ仮想化技術が大きな注目を集めているが、一方でストレージ仮想化となるとまだ耳慣れない感が否めない。そもそもストレージの仮想化とは何をどうするもので、どのようなメリットがあるのだろう?
仮想化技術は今日、企業のITシステムにおいて重要なポジションを占めつつある。従来は、メインフレームを中心に構成されたレガシーシステムの刷新に伴い、「分散化」によるオープン環境への移行が大きなトレンドになっていた。しかし昨今では、サーバ統合やインフラ統合といったキーワードが多く聞かれるようになり、分散化とは逆の「集約化」が見直されつつある。そうした中、既存の物理サーバ環境を仮想マシン上に移行して集約する「サーバ仮想化技術」が大きな注目を集めており、製品化や実際の導入も進んでいる。
さらに仮想化技術は、サーバ以外にもインフラ分野を中心に多岐にわたって応用されている。例えば、「ネットワークの仮想化」や「ストレージの仮想化」がこれに該当する。本稿では、これらのうちストレージ仮想化について取り上げ、その仕組みや導入効果などについて考察していく。
第1回では、まず今日のストレージ領域を取り巻く環境について解説し、続いてストレージ仮想化の概要とメリットについて述べる。
今日の企業システムにおけるストレージ基盤は、以下のような状況に直面している。
情報システムの浸透と高度化に伴い、企業が抱えるデータ量は飛躍的に増加している。プラットフォームのオープン化の進行とともにサーバ台数も増加し続け、ERPやBIの導入によって経営情報管理の高度化も進んでいる。このような、情報システムの規模と適用範囲の拡大によって、システムで処理・管理するデータ量は年々増え続けている。情報システム上でやりとりされるコンテンツも、今やテキストデータだけではなく画像、音声、動画と多様化しており、個々のデータの容量も増大している。
また、情報漏えい防止や災害対策、法令順守(コンプライアンス)などのビジネス要件に対応するため、ITシステムでは「アクセスログの取得」「バックアップの強化」「メールのアーカイブ」など、データの長期保存を伴う施策を打つ必要が出てきた。こうしたトレンドも、企業システムにおけるデータ量増加の一因となっている。
加えて、新しい技術の普及も背景にある。2次元バーコードやRFIDなど、ICチップを応用したデータ管理技術の普及に伴い、より細かな商品データが収集されるようになっている。米Wal-Martが大々的に導入し、取引先への展開も積極的に推し進めているICタグによる商品管理が代表例である。物流などの業種では、ICタグの利用は今後さらに進むことが予想される。
以上のような要因により、企業システムで処理・管理するデータの量は爆発的に増加してきているのである。
ストレージ製品には多くの種類があり、それぞれ利用する記憶媒体やシステムへの接続形態に違いがある。オンラインを前提としたディスク装置には、サーバ筐体に内蔵されるHDDや、サーバと直接接続するDAS(Direct Attached Storage)、ネットワーク上で用いられる専用のストレージデバイスやファイルサーバ機能を搭載したNAS(Network Attached Storage)がある。
ディスク以外では、磁気テープを利用したテープライブラリがあり、バックアップ用途の記憶媒体として最も広く普及している。また、DVD-R(RW)などの光ディスクを利用したバックアップ装置も存在する。
このようにストレージ製品には実に多様な形態があり、また各ベンダーによって個別に製品化されていることから、今日の市場には非常に多くの種類の製品が存在している。
今日の企業では、これら多種多様なストレージ製品を複合的に利用しているケースが多い。しかも多くの企業では、部門ごとの縦割り型のシステム構築・運用が依然として一般的であり、またストレージ基盤は各プロジェクト単位で設計されることから、全社的かつ長期的な視点に立ってストレージ環境の構築・維持・改善が行われることはめったにない。
企業によっては、調達元のベンダーを一本化することで企業システム環境の煩雑化を防ごうとしているところもある。しかし、逆に特定ベンダーへのロックインにより生じる弊害を懸念し、プロジェクトを立ち上げるごとにベンダーを新たに選定し直すという企業も少なくない。そのような場合、全社的に見ると異なるベンダーの多種多様なストレージ製品が混在しており、システムの規模が拡大するにつれて管理が難しくなってくる。
こうした背景から、今日の企業システムにおけるストレージ基盤では、TCOの削減、あるいはストレージリソースの最適な配分が重要なテーマとなる。このような課題を解決する技術として、ストレージ仮想化が今注目を集めているのだ。
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