代表的なERPパッケージである「SAP ERP」を「Amazon Web Services」で稼働させる――ケンコーコムがこう決断したのは2011年だった。どのような経緯でSAP on AWSを選び、どう導入したのか。事例を紹介する。
健康食品や化粧品、医薬品などをオンラインで販売するケンコーコムが「Amazon Web Services」上に基幹システムの「SAP ERP」を構築し、2012年8月に本格稼働させた。これまでオンプレミスでの運用が常識だった基幹システムでもクラウドコンピューティングでの利用が広がるのか。ガートナージャパンが主催した「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション&アーキテクチャ サミット 2013」で講演したケンコーコム 取締役 IT本部長 新井達也氏の話をまとめた。
実際にケンコーコムのオンライン販売を利用された方もいると思うが、同社のビジネスは思った以上に複雑だ。同社はメーカーから仕入れた商品を自社で販売するだけではなく、他の販売事業者に卸す事業も行っている。加えて商品量が膨大だ。現在は20万点を扱っているが、その多くはたまにしか売れない商品。しかし、そのたまにしか売れない商品が多数あることが同社の重要な収益源となっている。いわゆるロングテール型ビジネスを行っているのだ。このような複数の業務プロセスやロングテール型ビジネスによる膨大な商品数と注文データの増加に同社は直面していた。「ERPでこの課題をどう処理するかが課題だった」と新井氏は振り返る。
ERP導入によって創業以来、乱立してきた業務システムを整理・統合したいという思いもあった。「もともとはベンチャー企業でコンパクトにビジネスをしていた。成長する過程で必要なシステムを追加してきた。その結果、システムの分断や乱立が見られる状況になってきた」(新井氏)。データの二重登録や不整合、手作業なども発生していて、システムによる効率化は優先して解決したい課題だった。
業務プロセスが分断されたままでは内部統制上の不安もあった。またIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)についても「対応せざるを得ない時期がやってくる」と考えていて、「近い将来のIFRS適用時に、大幅なシステム変更なしで対応できるようにする」というのが基本姿勢だった。
ERPパッケージは多数あり、一長一短。多くの企業はその製品選択に悩む。しかしケンコーコムはほぼ悩まずにSAP ERPに決めていた。「SAP ERPを選んだ一番大きな理由は実績」(新井氏)。さまざまな業種や企業規模で利用されているSAPの実績が同社の決断を後押しした。また広く利用されているSAP ERPであればコンサルタントやエンジニアの確保も容易と考えた。さらにSAP ERPが既にIFRSに対応していることもポイントだった。
ERPパッケージの選択以上に同社が気を遣ったのが導入パートナーの選択だ。ベンチャー企業から発展してきた同社の特徴は業務スピードや意思決定の速さだ。「ERP導入に長けている大手のベンダーと、われわれの進め方は違うと推測した」(新井氏)。Eコマース企業への導入実績を持ち、さらに意思決定が速いパートナーを探した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
企業にとっては、いかに優秀な人材を確保するかが大きな課題となっている。そこで、AIとスキルインテリジェンスを活用することで従業員満足度を高め、定着率の向上、ビジネスの成長へとつなげていくための3つのステップを紹介する。
従業員にさまざまなサービスを提供するHR業務に、生成AIを導入する動きが加速している。生成AIは、HR業務が抱えている課題をどのように解決し、従業員エクスペリエンス(EX)の品質向上と組織全体の生産性向上に貢献するのだろうか。
紙やExcelを用いた人事評価業務では、進捗管理やデータ集計に多大な労力がかかってしまう。そこで本資料では、評価ツールを導入することで、評価に関わるさまざまな作業を効率化することに成功した事例を紹介する。
2019年4月から時間外労働の上限規制が労働基準法に規定され、特別条項付きの36協定を締結した場合でも厳守しなければならない、時間外労働の限度が定められた。本資料では、36協定における基礎知識から締結時の注意点まで詳しく解説する。
人手不足が深刻化する近年、新規採用や従業員教育にコストをかける企業が増えているが、その分離職時のダメージも大きく、事業継続に影響が出るリスクもある。そこで、主な離職要因となる6つの問題について、その原因や解決策を解説する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。