Amazon Web Services(AWS)を運営するAmazonは、ここ最近、ハードウェアエンジニアリングの専門家を積極的に採用している。これは、AmazonがARMベースのカスタムプロセッサを独自に開発するといううわさと関係がありそうだ。
米Amazon Web Services(以下、Amazon)のここ最近の新規採用者の顔ぶれは、同社が自社サーバ向けにカスタムプロセッサの開発を目指していることを示唆しており、企業のIT担当者は、こうしたプロジェクトはクラウド料金の値下げにつながると期待を寄せている。
Amazonは既にストレージやネットワーク、サーバレベルでハードウェアをカスタマイズしており、加えてプロセッサも最適化したいと考えるのは少しも意外ではない。Amazonは「CPU・システムアーキテクト」の求人情報をサイトに掲載している他、ビジネスSNSであるLinkedInのプロファイルによれば、同社は最近、ハードウェアエンジニアリングの専門家を何人か新規に採用している。いずれも、ARMプロセッサを開発していた米Calxeda(現在は事業停止)の出身者だ。
LinkedInのプロファイルによれば、Amazonに新規に採用された人たちの肩書は、「ハードウェア開発エンジニア」「ハードウェア設計エンジニア」「シリコン最適化担当ディレクター」「ハードウェアエンジニアリングおよびシリコン最適化担当マネジャー」などとなっている。勤務地は大半が米テキサス州オースティンだ。
情報筋によれば、AmazonがARMベースのカスタムプロセッサを開発するといううわさは数カ月前から流れているという。独自プロセッサの開発は、ハードウェアのカスタマイズを進めるAmazonの戦略と合致するだけでなく、特定のニーズに合わせてプロセッサをカスタマイズしている米Facebookや米Googleといった競合Web企業の先例に倣う動きでもある。
「収益に直接の影響を及ぼす。『Amazon Web Services』(AWS)ほどの規模のクラウドサービスであれば、たとえ1〜3%程度の効率改善であっても、月換算では数百万ドルの節約になる」と、匿名希望のあるクラウドコンサルタントは語る。
AWSはこれまでにもこうしたコスト削減分を顧客に還元しており、企業のIT担当者は今回もそうした展開になることを期待している。
「カスタムプロセッサの設計で求められるのは、スペシャリストの能力だ。米Intelと米AMDのx86プロセッサは要するにゼネラリストだ。Linuxを動かすのにはもってこいだが、限られた用途に使うには効率が悪い」。AWSの顧客であり、企業向けソーシャルメディアツールを手掛ける米Sprout Socialで最高技術責任者(CTO)を務めるアーロン・ランキン氏はそう語る。
カスタムプロセッサを使えば、より少ないリソースでより多くを実現でき、消費電力を節約できるだけでなく、クロックサイクル当たりに実行できる平均命令数も増やせる。
「クラウドホスティングは公共事業のようなものであり、勝つのは、料金を最大限まで引き下げたところだ。極めて厳しい生存競争だ」と、ランキン氏は続ける。
新興企業向けのクラウドコンサルティング事業を手掛ける米Epitechのコンサルタント、マイク・ライアン氏によれば、Amazonの最近の新規採用は「良い兆候」だという。
「Amazonは既に何度もクラウド料金を値下げしている。カスタムハードウェアによってスケールメリットを生かせば、ますますプラスに作用するはずだ」と、同氏は語る。
もっとも、CPUのカスタマイズは決して容易な取り組みではない。ARMプロセッサは発展途上の技術であり、まだ64ビットアーキテクチャをサポートしていない。ただし2014年第3四半期にはこうした状況も変わる見通しだ。
Amazonからはコメントを得られていない。
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