ストレージベンダーの取り組みを見る
「モノのインターネット(IoT)」攻略の鍵は“ビッグブラザー”が握る?
「モノのインターネット」が生み出す膨大なデータが、企業のストレージを圧迫している。ストレージを監視してデータ量を抑制しようというストレージベンダー各社の取り組みはIT部門にとって朗報といえそうだ。
「ビッグデータの話はもううんざり」と思っている人もいるだろうが、残念ながら、この話題は当分、消えそうにもない。企業に新たな設備投資を促そうと考えているベンダー各社は、しきりに話題を盛り上げようとしている。
だが、データ量が爆発的に増大していることは事実だ。そして、この状況が今日のストレージ製品に劇的な変化をもたらす可能性については考えてみるだけの価値がある。ビッグデータの話は、あたかも列車の転覆事故をスローモーションで見ているようなものに感じられるかもしれない、だが、一方で、サーフィンに絶好な大波が来たと興奮する人もいる。いずれにせよ、データ量の増大をもたらす最大の要因の1つになろうとしているのが、いわゆる「モノのインターネット」(Internet of Things、以下“IoT”)であることは知っておいていいだろう。
IoTがデータ増大を加速する
そもそもIoTとは、人々が日常的に使う機器に最先端の賢いセンサー(およびリモコン)が次々と組み込まれ、ほとんどあらゆる物がデータソースになることを意味する。典型的な例がスマートフォンだ。スマートフォンはユーザーがどこにいて、どこに向かい、何を使い、どう動いているのか、さらには交友関係や行動パターンまで、多岐にわたるデータを報告する能力を備えている。電子工作が得意な人であれば、安価な「Raspberry Pi」コンピュータ(訳注:英国で開発されたシングルボードコンピュータ)を購入し、自宅内のさまざまな物に組み込んで、消費電力の計測やセキュリティの監視、室内環境のモニタリングといった機能を実現できる。飼っている金魚が泳ぎ回る様子をキャプチャーしたり、夕食前に冷蔵庫のドアが何回開けられたか数えるといったことだって可能だ。
問題は、このように高度に計測化が進んだ世界では、驚異的なペースでデータが(利用価値の有無にかかわらず)生み出されるということだ。自分の家の中でのことであれば、この状況に抵抗することも可能だろう。だが、IoTの潮流は企業のデータセンターの壁をとっくに突き破ってしまっている。今日、ほとんどのIT機器には計測機能と記録機能が既に組み込まれており、現在そうした機能がない機器にも今後新たにセンサーが組み込まれていくだろう。IT機器に計測機能が組み込まれているのであれば、将来それを分析する必要が生じたときに備えて、取りあえずそのデータを収集して保存しておきたいと思うのは極めて自然なことだ。
データ量の増大に対処できなくなる恐れがある一方で、「データの履歴は多ければ多いほどよい」というビッグデータの原則が芽生えつつある。収集したデータに対して、われわれが将来どんな質問を投げ掛けるのか、全て分かっているわけではない以上、現時点では、詳細なデータ履歴を永続的に保持するのがベストということになる。そうすれば、思いもよらなかったような新しい質問にも答えられる柔軟性を常に維持できる。ついでに、時間とともにデータが増大する様子が可視化されるというメリットもある。
IoTに対処するためのツール
幸いにも、IT部門がIoTに対処するためのソリューションは既に幾つか存在する。米Splunkの「Splunk」や、米VMwareの「vCenter Log Insight」などのツールを利用すれば、ログとイベントデータを集約して効果的な分析を行うことができる。特にSplunkはIT部門での利用にとどまらず、Webユーザーのログなど、ビジネスに関連した「クロスオーバー型」データソースの分析にも威力を発揮する(例えば、マーケティング部門であれば、Webサイト上でのユーザーの振る舞いを知りたいと思うだろう)。
とはいえ、各種の独自型センサーから生成される膨大な異種データや、多数の異なるベンダーの機器のログと計測データをどう利用すればいいのかという点については、まだ明確になっていない。確固とした業界標準はまだ存在しないし、今後も標準が確立するとは思えない。モニタリング標準の策定を目指した試みはこれまでにもあったが、いずれも、CPUの利用率といった最も基本的な指標の統一的解釈すら実現できなかった。各ベンダーの機器から生成されるデータを解釈するには、ベンダー独自の深い知識が必要とされるのが現実だ。
ストレージで起きていることをベンダーと共有するメリット
ストレージベンダー各社はどんな取り組みを進めているのだろうか。ユーザー企業の社内に配備したストレージから送信されるデータストリームを分析する「コールホーム」サポートを提供している先進的なベンダーもある。「産業用モノのインターネット」(IIoT:Industrial Internet of Things)のデータは無線/有線インターネット接続を通じて直接収集されこともあるが、IT部門のストレージアレイでは、ログ、ステータス、構成、利用状況などのリポートが定期的に自動アップロードされるのが一般的だ。これらのデータを共有すれば、ベンダーとユーザー企業は新たな価値を互いに提供でき、より緊密で有用な信頼関係を築くことができる。
ストレージベンダーはコールホームデータをどう活用するのだろうか。まず、効果的かつ事前対策的なサポートを提供することがある。ストレージベンダーは、「ストレージプラットフォームで何が起きているのか」「どの機能が使われているのか」「インストール/設定済みのコンポーネントはどれか」といった情報を直接把握できるからだ。さらにベンダーは、ユーザー企業の状況を、同様の製品を運用している他の多数の顧客と比較することもできる。多くのコールホームスキームでは、ユーザー企業が処理結果を返してもらい、蓄積された知識ベースとベンダーの分析結果から新たな知見を得ることができる。
またベンダーは、ストレージに関する全ての面でユーザー企業よりも優れた手腕を発揮できる。ベンダーの製品管理部門は機能の優先順位付けを行い、サポートチームは一般的なエラーを特定して解決し、経理部門はユーザー企業が製品から最大限の価値を引き出せるようにし、マーケティングチームは効果的な販促活動のプランを策定することができる。そしてもちろん、ベンダーの販売担当者は、ユーザーの利用状況が現在のライセンスの上限に達する寸前を見計らって営業の電話をかけることができる。顧客に直接関係しない部分でのメリットもある。例えば、ストレージベンダーがフラッシュカードやHDDなどのOEMコンポーネントの現場でのパフォーマンスを把握することで、新たなサプライヤー契約を結ぶ際に交渉を有利に進めることができるかもしれない。
ストレージベンダー各社は、さらに綿密なコールホームプログラムの導入を検討したようだが、ビッグデータのIoT分析プラットフォームを大規模に構築することが競争力の強化つながらないと判断したベンダーも多い。その一方で、各社のストレージ製品を本格的なコールホームサービスにセットアップしてくれる米Glassbeamなどのコールホームソリューションプロバイダーも存在する(同社の顧客には数社の有名なストレージベンダーや工業/医療分野の多数のIoTデバイスメーカーが含まれる)。セットアップに要する期間は数週間程度だ。こうしたシステムをユーザーが独自に構築しようとすると、何カ月、あるいは何年もかかる可能性がある。
ビッグブラザーを味方に付ける
ストレージのユーザー企業としては、社内のストレージアレイが監視され、ベンダーに報告されるというのは、有用なサービスだというよりも、むしろ「1984年」(訳注:ジョージ・オーウェルの小説)に登場するビッグブラザーによる監視を連想させるかもしれない。だが「ホームに送られた」データは自社のITアーキテクチャとその利用状況に関するものであるため、競争力を高めるという目的に役立つ可能性がある。しかも、それは実際のビジネスデータではないので、特定のサポート問題を解決する際にこのデータをファイルごとに送信したとしても、何ら問題は生じないのではないだろうか。
私が勤務する米Taneja Groupでは、ストレージバイヤーに対して、「事前対策的なコールホームサポートを提供し、ユーザー企業の現場に全体的な視野を与えてくれるインテリジェントな計測機能を組み込んだソリューションを用意しているベンダー」を探すことを推奨している。基本的に、ITベンダーはユーザーにとって信頼できるアドバイザーであるべきだというのが、われわれの考えだ。現在付き合っているベンダーを信頼できないというのであれば、信頼できるベンダーを探せばいいだけだ。
本稿筆者のマイク・マッチェット氏は、米調査会社Taneja Groupの上級アナリスト兼コンサルタント。
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