システムの複雑化とデータの増大で激変するバックアップ環境
アナリストに聞く、データバックアップを再考すべき理由
企業のITシステムは複雑化しており、それを取り巻くデータバックアップ環境も大きく変化している。多くの企業では、バックアップ体制を再考すべき時期に差し掛かっている。
クラウドコンピューティングやビッグデータ、IoT(モノのインターネット)に注目が集まる中、企業のIT部門が取り扱うべきデータは飛躍的に増加し、管理すべきシステムは複雑化している。それに伴い、データのバックアップを取り巻く状況は大きく変化しており、多くの企業では今、バックアップ体制を再考すべき時期に差し掛かっている。
こう語るのは、IT調査・コンサルティング会社であるアイ・ティ・アール(以下、ITR)でプリンシパル・アナリストを務める金谷敏尊氏。同氏にデータバックアップの最新事情について聞いた。
データのバックアップを複雑にする昨今の状況
企業のバックアップを取り巻く環境が複雑化している背景として、金谷氏は「SMACs」(ソーシャル、モバイル、アナリティクス、クラウド、セキュリティ)に代表されるテクノロジーの出現を指摘する。それにより、ビジネスの「デジタル化」が加速した結果、「データ量の急増」「システムのサイロ化」が課題となっているのだ。
データ量の急増について、金谷氏は「データが増えるペースにストレージの拡張が追い付いていない状況だ。バックアップデータの増大もストレージの容量不足に大きな影響を及ぼしている」と指摘する。
システムのサイロ化に関しては、「『クラウドファースト』の考えが普及しつつあるものの、仮想基盤にサーバ統合をした後にクラウドに移行する“段階移行”を取る企業が多い。一方で、外部のクラウドサービスを部分的に導入する企業も少なくない。結果的に、物理基盤、仮想基盤、クラウド基盤と、システム環境が多様化/サイロ化してしまい、バックアップシステムの構築・管理を複雑化させている」と説明する。
こうしたデータの増加やシステムの複雑化に伴い、バックアップの負荷やコストが増大する傾向にある。その中で、企業のバックアップシステムには現在、「データ特性に応じた技術やアーキテクチャの選択が求められている」(金谷氏)という。
データ管理方針の整備が鍵
そこで重要となるのが、「データ管理方針」の整備および見直しである。現在の企業では、メールデータや会計データ、Webコンテンツ、法定帳簿など、さまざまなデータが存在する。その各データの管理方針を明確化し、それぞれに適切な技術/アーキテクチャを選択するのがデータ管理方針の整備だ。
例えば、データの利用方法や利用頻度、ライフサイクルといった視点でデータの重要度を分類し、高頻度利用の業務データは高性能なフラッシュストレージ、低頻度利用の長期保存データは低コストな磁気テープに保管することなどが考えられる。全体最適の視点から、バックアップのサービスレベルやパターンに応じた保存媒体・方式を選択することで、資源を最大限に活用することができる。
「データ管理に関する指針が存在しない状況は、ストレージ基盤やバックアップ方針を整備する以前の大きな課題と認識すべきだ」(金谷氏)
また、バックアップ作業を所定の時間内に完了することができなければ、業務に支障をきたしかねない。そうした運用負荷を軽減し、バックアップ作業を高速化するには、データ転送上のボトルネックを排除すると同時に、効率性の高い重複排除技術を導入することが効果的だという。
「ファイルや音声/動画といった非構造化データを効率的に管理する階層型ストレージやアーカイブシステムも検討ポイントになる」と金谷氏は話す。
クラウド利用のリスクはデータ消失
特にクラウドサービスを用いたシステムを構築する際には、データ保護の観点が必要になる。つまり、「データを消さない」ことが最も重要だ。それについて、金谷氏は「事業者によるデータ消失」のリスクを指摘する。
事業者によるデータ消失とは、クラウドサービスなどの事業者で不慮の事故や災害、障害、人的ミスが発生し、預けていたデータが消失してしまうことだ。完全なデータの復旧が困難なケースも多く、事業に深刻な影響を及ぼしかねない。
「大半の事業者は、データ消失の免責を約款にて規定している。また、通常はデータ消失リスクの回避は、SLA(サービス品質保証)の対象外となる。そのため、万が一そのような事態になった際に、損害賠償請求をしても最低限(回復費用相当など)の損失分しか担保されない」と金谷氏は警鐘を鳴らす。
そのため、「保護対象のデータについてはサービス事業者に過度に依存せず、能動的に技術評価を行い、場合によっては自主的に対策を講じることも必要だ」と同氏は説明する。
現在の企業では、バックアップの資源不足や管理負荷が大きな問題として顕在化しつつある。そのような状況において、「ストレージ資源の効率を高める上で、データ管理方針を整備することが鍵となる」と金谷氏はあらためて強調する。
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