「Windows 7/8.1」に新しい更新方法が導入、喜ぶ人と不安な人に真っ二つのワケ簡単になる反面、混乱の可能性も

Microsoftの新しい月例アップデートプログラムにより、Windowsのアップデートの煩雑さが緩和される。一方で、IT部門によっては大きな問題が発生する可能性もある。

2016年09月01日 07時00分 公開
[Ramin EdmondTechTarget]
日本マイクロソフトの「Windows 7 SP1 および Windows Server 2008 R2 SP1 の便利なロールアップ更新プログラム」のWebページ《クリックで拡大》

 Windowsの更新方法としてMicrosoftが新たに導入するアップデートプログラム「ロールアップ」は、IT部門にとって煩雑さを軽減するものとなる。だが、IT部門が望まないアップデートの適用を拒めないために、問題が起きる恐れもある。

 Microsoftは2016年10月から、「Windows 7」および「Windows 8.1」向けのパッチと機能アップデートを1つのアップデートプログラムにまとめて毎月リリースする計画だ。IT部門がOSを最新の状態に維持する作業を楽にするのが目的。同社は現在、月例アップデート「Patch Tuesday」を通じてパッチとアップデートを配布しているが、同じ月に追加アップデートも実施している。Microsoftでは、今後も必要に応じて追加アップデートをリリースするとしているが、その回数は減少する見込みだ。

会員登録(無料)が必要です

 MicrosoftのパートナーであるSIGMAnetの副社長 スティーブン・モンテロス氏よると、新しい更新モデルは歓迎すべき変更だという。現行のプロセスがあまりにも複雑だからだ。

 「アップデートの管理はフルタイムの仕事になる可能性もある」とモンテロス氏は話す。「Microsoftはこんなやり方を続けるわけにはいかない。新しい更新モデルは、更新がいつあるのか分かるので、管理が楽になる」(モンテロス氏)

 だが新しい更新モデルは、IT部門の業務を混乱させる恐れもある。ロールアップの一部が企業の既存のWindowsとの相性が良くなかった場合、IT部門は月例アップデートのたびにこの問題に対処しなければならなくなる。従来と同様、アップデートプログラムを導入する前にテストすることは可能だが、特定の部分だけの導入を禁止することはできない。

 「これを回避する方法はない。最初から大きな問題になりそうだ」とモンテロス氏は語る。

 他にも変更点がある。現行の方式と異なり、ロールアップにはそれ以前の月の全てのアップデートプログラムが含まれる。「この方式により、Windowsを常に最新状態に保つのが容易になり、過去のアップデートプログラムの適用を見逃す心配がなくなる」と話すのは、市場調査会社Insights and Strategy社長のパトリック・ムアヘッド氏だ。

セキュリティだけを対象としたWindowsアップデート

 さらに10月には、セキュリティだけを対象とした月例アップデートも新たに始まる。これには、全ての新しいセキュリティパッチに加え、それまでの月の累積パッチが含まれる。これにより、セキュリティパッチを個別にダウンロードできなくなる。

 Microsoftのパートナー企業Cumulus Globalの最高経営責任者(CEO)アレン・ファルコン氏は「ほとんどの企業にとって、このセキュリティパッチの月例アップデートで問題が起きることはなく、作業が簡素化されるだろう。Microsoftは、月例アップデートの複雑さを緩和しようとしている」と話す。

 フロリダアトランティック大学の最高技術責任者(CTO)メーラン・バシラトマンド氏によると、同大学のIT部門では、月例アップデートをどう管理すればよいのか不安に感じているという。「月例アップデートで起きる問題に対して、当大学で使っているサードパーティー製のパッチ管理ソフトウェアで防止できることを期待している」と同氏は語る。

 SIGMAnetのモンテロス氏は「Microsoftは問題を発見した後で緊急アップデートをリリースするタイミングについても一貫性を維持すべきだ」と話す。2016年8月に出たアップデートプログラムでは、Webカメラが使えなくなるというトラブルが発生した。Microsoftは、この問題を解決するパッチをリリースする予定だとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

事例 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート

目黒区が理想の調達を実現、業務システムの柔軟な連携を可能にする共通基盤とは

業務ごとに最適なシステムを導入したいが、連携の難しさが課題となっていた目黒区。しかし、ある共通基盤を活用することで、オールインワンの限界を打ち破り、柔軟なIT環境を構築することができた。その成功事例を紹介する。

市場調査・トレンド ニュータニックス・ジャパン合同会社

ハイブリッドマルチクラウド運用を成功へ導く、7つの戦略と考慮すべきポイント

オンプレミスのデータセンターやエッジ、複数クラウドにまたがるIT運用の理想的な形であるハイブリッドマルチクラウドモデル。しかし多くの組織は依然として、この運用モデルがもたらすビジネス価値を最大限引き出すことができていない。

事例 ニュータニックス・ジャパン合同会社

変化し続ける公共システムをにらんで、さいたま市は統合基盤をどう刷新したのか

さいたま市は、市政の中核をなす統合基盤システムを刷新し、さらなる柔軟性の向上、運用コストの最適化を実現。激変する公共システムに無駄なく着実に対応するさいたま市のDX戦略とは。

市場調査・トレンド ニュータニックス・ジャパン合同会社

ワークロードの配置先をどうする? 「ハイブリッド/マルチクラウド」の有用性

近年では、AIの登場により、「ITリソースをいかに運用・管理するか」に加え、「ワークロードの配置先」も課題となっている。そこで注目したいのが、ハイブリッド/マルチクラウドだ。この環境を導入するにはどうすればよいのだろうか。

製品資料 ニュータニックス・ジャパン合同会社

複雑なハイブリッド環境をシンプルに、ITダウンタイム減少へ向けたBCDRの新潮流

今日、企業は俊敏かつ継続的なサービスを求められており、顧客離れやブランド価値の毀損につながるシステム停止は絶対に避けるべき要件となっている。そこで重要となるのが、データ保護とBCDR(事業継続性とディザスタリカバリー)である。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...