金融、交通、電機、商社。それぞれの業界をけん引する大手4社が、パブリッククラウドやSD-WANを利用し、ITインフラの変革を進めている。その取り組みの目的とは。
東京海上日動火災保険、東日本旅客鉄道(JR東日本)、日立製作所、三井物産の大手企業4社が、パブリッククラウドの利用や、その足回りとなるネットワークの再構築を進めている。シスコシステムズが2019年2月に開催した顧客向けのセミナー/展示会「Cisco Digital Innovation Summit 2019」で、4社のIT部門幹部が登壇。各社が進める具体的な取り組みや、その目的について披露した。本稿ではその内容をかいつまんで紹介する。
4社に共通しているのは、クラウド利用を推進する点だ。まずは各社がどのようにクラウドを活用するのか、その方向性を取り上げる。
東京海上日動火災保険は、今後システムの約8割をパブリッククラウドに移行する計画だ。同社は2009年にシンクライアントを全社的に導入した際、オンプレミス型のプライベートクラウドの運用に加え、ベンダーによる2種類のホスティング型プライベートクラウドを利用していた。その後、コスト削減を目的としてパブリッククラウドである「Amazon Web Services」(AWS)の導入を決めたのは2013年のことだ。
「当初はプライベートクラウドの方が簡単に運用できたため、AWSへの移行はなかなか進まなかった」と、同社の村野剛太氏(IT企画部部長)は振り返る。だがシステムの新規構築を繰り返すうち、次第にプライベートクラウドの環境が複雑になり、運用に手間がかかるようになった。
人手を追加投入することなく効率的な運用を実現するために、東京海上日動火災保険はシステムをSoR(記録のためのシステム)とSoE(人との関係を構築するためのシステム)、SoI(新たな知見や洞察を得るためのシステム)の3種類に分類。SoE/SoIについては基本的に、開発・運用の自動化機能を利用できるパブリッククラウドのみで構築することにした。
事業の公共性の高さ故に、自前のIT基盤にこだわってきたというJR東日本も、パブリッククラウドの利用に踏み切った。その代表例は安定運行に欠かせない、線路をメンテナンスする保線作業への活用だ。
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