新型コロナウイルス感染症の対策として、AI技術とサーマルカメラを用いた非接触の体温測定を実現する製品が出回っている。そうした製品は感染症の流行が過ぎ去っても使われ続けるという声がある。その理由は何か。
2016年に創業した顔認識、視覚パターン認識ソフトウェアベンダーのKognizは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、体温を非接触で測る赤外線カメラ「サーマルカメラ」を利用した製品を提供している。同社は機械学習をはじめとするAI(人工知能)技術を基にした画像分析技術を利用して、サーマルカメラで発熱を検出するシステムを開発した。「発熱検出のために、これは長期的に重要な機器になるだろう」と、同社の共同創業者兼共同CEOのダニエル・パターマン氏は語る。
パターマン氏によると、Kognizのシステムはわずか数分でセットアップできる。人の体温は着ている服や天候などの要因によって差が出ることもあるため、機械学習技術と組み合わせて正常な体温を判定し、異常値を検出する(図)。
Kognizのシステムを利用すれば、高熱がある人を検出した際に警備員に知らせることができる。将来的に、人が互いに近づき過ぎると自動的に警報を出すことで、ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保を徹底させることにも応用できるようになる見通しだ。
サーマルカメラは恒久的に設置できるため「たとえ新型コロナウイルス感染症の流行が過ぎ去ったとしても、体温モニタリングは継続可能だ」とパターマン氏は言う。Kognizの製品は好調な売れ行きで、ユーザー企業は「新型コロナウイルス感染症の流行が過ぎ去った後も使う」と話しているという。
2014年に創業したIoT(モノのインターネット)アプリケーション開発支援製品ベンダーVANTIQのCEOであるマーティ・スプリンゼン氏も、「企業は感染症の流行が過ぎ去った後も、発熱を検出するためにサーマルカメラを使い続ける」と予想する。
VANTIQのIoTアプリケーション開発支援製品は、ユーザー企業がIoTデバイス同士を接続し、その中にAI技術を使ったアプリケーションを導入することを支援する。サーマルカメラで発熱を検出する手段として、同社製品はユーザー企業から注目を受け、同社のビジネスは弾みが付いている。「こうした用途がなくなるとは考えられない」とスプリンゼン氏は指摘。「これからもさまざまな情報を基に、人を見分けて状況を把握すべき他の要因が出てくるだろう」と考える。
サーマルカメラを使って発熱を検出することは、プライバシー侵害の可能性というデメリットをしのぐ衛生上のメリットがあるというのがパターマン氏の意見だ。「感染症の症状が出ており、他人に病気をうつす可能性がある人が、建物に入って大勢の人に感染させることを許容できるだろうか。サーマルカメラはそれを防ぐ助けになり得る」(同氏)
一部の企業は、従業員がオフィスに入る前に手作業で体温を測っている。サーマルカメラを使って自動で体温を計測する方法は、基本的にはそれと同じことだ。計測担当者が潜在的な感染者から距離を置くことができるため「サーマルカメラの方が安全なアプローチだと言える」とパターマン氏は主張する。
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