クラウド選びで「ベンダーロックイン」が問題にならない“これだけの根拠”クラウド時代のベンダーロックインを考える【中編】

クラウドサービスを選ぶとき、ユーザー企業はベンダーロックインを気にしなくなりつつあると同時に、クラウドベンダーもベンダーロックインの不安を解消するために工夫をしている。

2020年09月24日 08時30分 公開
[Trevor JonesTechTarget]

 調査会社Forrester Researchのバイスプレジデント兼プリンシパルアナリストのデーブ・バルトレッティ氏によると、ベンダーロックインのデメリットは、製品やサービスで問題が起こったときに改善されなかったり、利用料金が上がった場合でも使い続けなければいけなかったりすることにある。ただしクラウドサービスのユーザー企業は、ベンダーロックインを気にしなくなりつつある。

 オンプレミスのデータセンターを利用しているユーザー企業は、特定のベンダーから離れることが難しかったため、クラウドサービスの利用でもベンダーロックインを恐れる傾向にあった。最近では、クラウドサービスのベンダーロックインの話題を持ち出すのはユーザー企業側ではなく「そうした不安を利用しようとする他分野のベンダーだ」と、バルトレッティ氏は指摘する。

「ベンダーロックイン」よりも重要なこと

 主要なクラウドベンダー各社は、ベンダーロックインに対する不安を解消すべく対策を進めている。サービスを使いたいときに、使いたい分だけ利用できる従量課金の料金体系を設定するだけではなく、利用料金の値下げに踏み切るクラウドベンダーもある。新しいクラウドサービスにオープンソース技術を採用する動きも広がっている。クラウドサービスで稼働させるアプリケーションのライフサイクルがどんどん短くなっていることも、同じベンダーにいつまでも縛られる不安を和らげている。

 「クラウドサービスの場合、いつでも好きなときにやめることができ、いつでも停止できる」とバルトレッティ氏は話す。Nasuniは、ユーザー企業が複数のクラウドストレージを組み合わせて利用できるようにするクラウドストレージゲートウェイのベンダーだ。同社の最高製品責任者ラス・ケネディ氏によると、クラウドサービスの選択を左右するのはベンダーロックインの心配ではない。

 「ベンダーロックインの可能性よりも、稼働させるアプリケーションやそれぞれのクラウドサービスの長所と短所を考慮することが必要だ」とケネディ氏は言う。クラウドサービスを運用するデータセンターや、そのデータセンターで利用可能な機能、クラウドサービスの耐久性・可用性、利用料金などを基準に考えることが、クラウドサービス選定の基本だ。「ベンダーロックインについて議論はすることは、ますます少なくなりつつある」と同氏は説明する。

 ケネディ氏によると、企業がクラウドサービスで稼働させていたアプリケーションを別のクラウドサービスに移すことはあるが、それは最後の手段だ。利用料金を巡る問題や、その他何らかの問題が生じてクラウドベンダーとの関係が悪化した場合、他のクラウドサービスへの移行につながることがある。

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