無料の料金計算ツールも 「クラウドサービス」のコストを計算する基本的な方法クラウド移行コストを漏れなく計算する3つのステップ【中編】

クラウドサービス移行にコストメリットがあるかどうかを判断するには、クラウドサービスの利用にかかる総コストを正しく把握することが不可欠だ。コストを計算するための具体的な手段を整理する。

2021年08月12日 05時00分 公開
[Chris TozziTechTarget]

 アプリケーションのクラウドサービス移行を検討するときに、企業が考慮すべき重要な要素は、移行時のコストとクラウドサービスの利用料金だ。初めにオンプレミスシステムのコストを見積もったら、移行先として想定するクラウドサービスのコストを計算し、両者を比較する。前編「脱オンプレミスからのクラウド移行が『お得』かどうかを見極める方法」に続く本稿は、クラウドサービスのコストを計算するときのポイントを説明する。

ステップ2.クラウドサービスのコストを計算する

 コスト計算のとき、オンプレミスシステムはCAPEX(設備投資)が基本となる。対してクラウドサービスはOPEX(運用経費)が基本だ。クラウドサービスのコストは幾つもの変動要素があるため、利用料金の計算が難しい。

 ベンダーによって採用する料金体系は異なるものの、一般的にクラウドサービスの利用料金は、使用するリージョン(地域データセンター群)とリソースの使用量によって決まる。クラウドストレージの場合、大量のストレージを使用する場合の容量単価は、数GB(ギガバイト)のデータしか保存しない場合よりも安くなる。クラウドサービスの利用料金は、リソースを前もって予約するか、必要になった時点で調達するかによっても異なる。

クラウドコストの計算ツールを活用する

 クラウドサービスの利用料金を計算する最良の方法は、専用の計算ツールを使うことだ。主要なクラウドベンダーはいずれも、次のような独自の計算ツールを提供している。

  • Amazon Web Services(AWS)の「AWS Pricing Calculator」
  • Microsoftの「Pricing calculator」
  • Googleの「Google Cloud Platform Pricing Calculator」

 Microsoftの「Total Cost of Ownership (TCO) Calculator」など、既存のオンプレミスシステムのコストとクラウドサービスのコストをそれぞれ見積もり、比較するために設計されたツールもある。これらのベンダー独自の計算ツールは、各ベンダーのクラウドサービスでしか利用できない点に注意が必要だ。

 複数のクラウドサービスのコストの見積もりや比較に使えるツールを探している場合は、Apptioの「Apptio Cloudability」やCloudCheckrの同名コスト管理ツールといった、サードパーティーの代替ツールが役立つ。これらはコスト計算ツールというよりも、複数のクラウドサービスのためのコスト最適化および容量管理に利用するためのツールだ。そのためクラウドサービスの利用料金の予想精度は、クラウドベンダー各社の計算ツールには及ばない。

どのクラウドサービスを利用するかも重要

 どのようなクラウドサービスをどれくらい使用するかについても考慮が必要だ。仮想マシン(VM)サービスやクラウドストレージといった基本的なサービスの他に、コンテンツ配信を支援するCDN(コンテンツ配信ネットワーク)やDDoS(分散型サービス妨害)保護サービスなどがある。これらはアプリケーションのパフォーマンスやセキュリティを高める有益なサービスだ。こうしたサービスの導入は効果的だが、使用すればするほど、クラウドサービス移行後の利用料金や必要なスキルが増加する。


 次回は3つ目のステップ「管理ツールの利用コストを計算する」を紹介する。

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