新型コロナウイルス感染症の拡大は、クラウドサービスの料金競争に影響する可能性がある。コスト効果を武器に、AWS、Microsoft、Googleの大手クラウドベンダー3社を追うOracleとDigitalOceanの戦略を追う。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、クラウドサービスのニーズが高まっている。企業の間で、在宅勤務などのテレワーク向けのITツールを早急に導入する動きが生じたことが背景にある。クラウドサービスの利用料金には大幅な変動は起きていないものの、わずかに変化が生じている。「FinTech企業が新型コロナ対策のVDIを『AWS』で構築 無交渉・10営業日導入の“弊害”は」に引き続き、新型コロナウイルス感染症がクラウドサービスのコストに及ぼす影響を考察する。
2020年5月には、Amazon Web Services(AWS)がデータセキュリティサービス「Amazon Macie」の利用料金を80%引き下げた。クラウドサービス市場でAWS、Microsoft、Googleの3強を追うOracleは、最近オンラインで開催したクラウドに関するイベント「Oracle Cloud Day Online」で、同社のサービスを使用するとAWSと比較して50%のコストが削減できる点をアピールした。Oracleは大胆な料金設定が市場でのシェア拡大につながることを期待しており、クラウドサービス市場の料金競争をけん引している。
新型コロナウイルス感染症の危機に際して、クラウドサービスの利用が広がっている背景には「経済的な理由がある」というのが、調査会社Constellation Researchでアナリストとして働くオルガー・ミュラー氏の考えだ。クラウドサービスは一般的に、月ごとに利用料金を支払う料金体系を採用しており、ハードウェアを中心とした大規模な初期投資が不要だ。
企業は経営状況に応じたコストの拡大と縮小ができるように、クラウドサービスの全契約を再確認する必要がある。IaaS(Infrastructure as a Service)とPaaS(Platform as a Service)だけではなく、契約中のSaaS(Software as a Service)の運用についても「綿密な調査が必要だ」とミュラー氏は補足する。
データセンターの大半を自社で運用するSaaSベンダーの場合「設備投資のタイミングで赤字となる可能性がある」とミュラー氏は指摘。こうした事態の影響を避けたい場合は「ITインフラとして、IaaSやPaaSを活用するSaaSベンダーと契約を結ぶのが良いだろう」とアドバイスする。
クラウドベンダーDigitalOceanの事業規模は、大手クラウドベンダーと比べれば小さい。ただし新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)をきっかけに、同社のビジネスは成長したと、同社製品部門のバイスプレジデントを務めるアプルヴァ・ジョシー氏は言う。
他のクラウドベンダーと同様に、DigitalOceanでも動画やファイル共有といった特定の用途でデータ量の大幅な増加が見られるという。キャパシティーの危機が発生することはなかったが、同社は自社サービスの安定性を保つために「創意工夫をする必要があった」とジョシー氏は語る。
DigitalOceanは現在、長期的な計画に目を向けている。「将来のITインフラの増設計画を見直す必要が生じている」とジョシー氏は語る。新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけとしたクラウドサービスの利用拡大は「ピークを迎えており、今後徐々に減少する」と同氏は予測する。ただし「新型コロナウイルス感染症が発生する以前と同じレベルまで下がることはないだろう」というのが、同氏の考えだ。
最近、DigitalOceanは米サンフランシスコにデータセンターを新設した。同社の収益の約70%は海外市場で生まれており、特に東南アジア市場が大きく寄与している。同社はセールスポイントとして最低レベルの利用料金を挙げる。同社の仮想マシンサービス「Droplets」の最低月額利用料金は5ドルで、大手クラウドベンダーが提供する競合サービスと比べて安価だ。
ただし世界中のデータセンターの数や、提供サービスの数といった基準で見ると、DigitalOceanは大手クラウドベンダーに及ばない。「事業を拡大することで、いつか利用料金は大手ベンダーと同等になるだろう」とジョシー氏は話す。
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