セブン&アイが「AWS」にグループ各社のシステムを集約する“挑戦的な理由”クラウドニュースフラッシュ

新システムのインフラにクラウドサービスを採用したJR九州とセブン&アイの事例や、AWSサービスの利用動向調査の結果など、クラウドの主要なニュースを6つ紹介する。

2021年12月29日 05時00分 公開
[上田 奈々絵TechTargetジャパン]

 新しいアプリケーションを動かすインフラとして、クラウドサービスを選ぶ動きが広がっている。車両検査計画の作成するシステムのインフラにIBMのクラウドサービスを採用したJR九州の事例や、グループ全社の共通インフラをAmazon Web Services(AWS)のクラウドサービスで構築したセブン&アイホールディングス(セブン&アイ)の事例など、クラウドに関する主要なニュースを紹介する。

JR九州が“組み合わせ最適化技術”を使った車両検査計画作成システムを構築 インフラに「IBM Cloud」のベアメタルクラウドサービスを採用

 JR九州の小倉総合車両センターは、同社が保有する特急電車やSL(蒸気機関車)、観光電車などさまざまな種類の車両の検査を担っている。従来は人手で車両検査計画を作成していたが、車両ごとに検査手法が異なることから、作成には時間やスキルを要していた。車両検査計画の作成を自動化するために、モーションが開発した組み合わせ最適化技術を利用し、車両検査計画最適化システムを構築。インフラとしてIBMのクラウドサービス群「IBM Cloud」を採用した。特にベアメタルクラウドサービスの「IBM Cloud Bare Metal Servers」を使って物理サーバを専有することで、十分な計算リソースを確保できる点を評価した。(発表:モーション<2021年11月18日>)

セブン&アイがAWSでグループ会社の共通インフラを構築 その狙いとは

 セブン&アイ・ホールディングスのグループ会社は従来、各社で異なるセキュリティ規定を基に別々のオンプレミスインフラを使用していた。グループ会社間のデータ共有や会社を横断した新サービスの構築を容易にするために、共通インフラの構築を決定。顧客数の増加に応じてインフラを拡張しやすい点や、米国7-ElevenのCRM(顧客関係管理)システムのインフラとして採用されていた実績を評価し、AWSを採用した。ストレージサービスの「Amazon S3」を利用し、グループ各社の購買データを一元管理するデータレイクを構築。「Amazon GuardDuty」「AWS Security Hub」などのセキュリティサービスを利用することで、グループ統一のセキュリティ規定に沿ったインフラの運用を可能にした。セブン&アイは今後、共通インフラを用いて、顧客管理やマーケティング、商品開発などの複数のアプリケーションの開発を進める。(発表:アマゾン ウェブ サービス ジャパン<2021年11月30日>)

パーソルキャリアが「doda」のインフラを「OCI」へ移行 拡張性を確保

 総合人材サービス会社のパーソルキャリアは転職サービス「doda」の基幹データベースとして、Oracleのデータベースアプライアンス「Oracle Exadata」を運用していた。拡張しやすいインフラの構築とコスト削減を目的として、クラウドサービスへの移行を決定。第1段階として、オンプレミスインフラでOracleのクラウドサービスを利用可能にする「Oracle Exadata Cloud@Customer」を本番用インフラとし、DR(災害対策)や開発検証用インフラとしてクラウドデータベースの「Oracle Exadata Cloud Service」を利用することにした。移行後のDR用インフラには、平常時にリソースを縮小し、必要な際はリソースを拡張させる仕組みを盛り込み、コスト削減をしやすくした。加えてハードウェアのデータ転送速度が向上したことで、レスポンスの遅さに関する問い合わせ件数が減少するといった効果が得られたという。今後は第2段階として、本番用インフラのOracle Exadata Cloud Serviceへの移行を進める。(発表:日本オラクル<2021年11月17日>)

NTTスマイルエナジーがセンサーデータ蓄積に「Snowflake」を利用 その効果は

 エネルギー関連事業を手掛けるNTTスマイルエナジーは、太陽光発電を実施する個人または法人向けの遠隔監視サービス「エコめがね」を提供している。エコめがねは約8万基の太陽光発電設備を遠隔監視しており、発電状況などのセンサーデータをリアルタイムで収集している。従来はクラウドデータベースとデータレイクに膨大な量のデータを格納してきた。一方でデータ分析の技術を有するエンジニアが社内で数名に限られており、十分なデータ活用ができていなかった。データ抽出や既存システムからの移行の容易さを評価し、既存データベースをクラウドデータウェアハウス(クラウドDWH)の「Snowflake」へ移行した。データベースの専門知識のないスタッフでも即座にDWHにアクセス可能になったことで、データを容易に活用できるようになった。(発表:Snowflake<2021年11月19日>)

2016年から利用規模が1000万倍になったAWSサービスは? クラスメソッドが調査

 クラスメソッドは同社のAWS請求代行・技術支援サービス「クラスメソッドメンバーズ」の登録アカウントへの請求情報を基に、2016年1月から2021年6月までのAWS利用状況を調査した。AWSの全サービスを26個のサービスカテゴリーに分けて成長率を調査した結果、「Amazon Elastic Container Service」(Amazon ECS)や「AWS Fargate」などを含む「コンテナ」カテゴリーの成長率が最も高く、2021年Q2(4月〜6月)の利用総額は2016年Q1(1月〜3月)の利用総額と比較して1000万倍以上となった(金額は非公開)。「AWS WAF」「AWS Identity and Access Management」(AWS IAM)などのセキュリティ対策サービスを含む「セキュリティ、ID、コンプライアンス」カテゴリーと、「AWS CloudTrail」「AWS Config」などのAWSリソースの管理サービスを含む「管理とガバナンス」カテゴリーが続いた。同社はこの結果から、サーバやストレージなどの基本的なサービスだけでなく、AWSのさまざまなサービスを組み合わせてシステムを開発する動きが広がっていると考察する。(発表:クラスメソッド<2021年11月25日>)

老朽インフラからのVM移行をGUIで支援 NTTコミュニケーションズが新サービス

 新たに提供する仮想マシン(VM)サービス「IaaS Powered by VMware」では、ユーザー企業はVMwareのハイパーバイザー「VMware vSphere」でVMを構築し、1台単位で利用できる。オンプレミスインフラや他のクラウドサービスで稼働するアプリケーションとデータを、簡単な操作で移行可能なGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を備える。VM月額利用料金に上限を設けることで、計画的なコスト管理をしやすくした。老朽インフラからの移行やDR、オンプレミスインフラのリソース拡張などの用途を想定する。VM月額上限料金は1個の仮想CPU(vCPU)当たり2800円(税別)で、別途メモリやストレージ、OSなどの月額利用料金がかかる。(発表:NTTコミュニケーションズ<2021年11月25日>)

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