「電子取引データ保存の義務化」に向けた準備と運用【第4回】
これは「電子取引」に該当する? 4つの“ありがちなケース”で解説
請求書や領収書などのやりとりで紙と電子データが混在していると、「これは電子取引に該当するのか否か」の判断に迷う可能性がある。実務で混乱しがちなケースを基に、判断基準の目安を解説する。
紙でやりとりしていた見積書や請求書などを、今後は「電子取引」の保存要件に沿ってデータで保管する運用ルールに変えるとなると、過去の慣例から手順を勘違いしたり見落としたりすることも当然起こり得る。実務で見落としやすいケースを中心に、電子取引データの具体的な保存方法を考えてみよう。
電子取引データ授受の具体例
併せて読みたいお薦め記事
連載:「電子取引データ保存の義務化」に向けた準備と運用
- 第1回:2022年改正電子帳簿保存法を改正前と比較、「4つの変化」とインパクト
- 第2回:どれが「電子取引」? 電子帳簿保存法改正の意外な落とし穴
- 第3回:始める前に気を付けたい、法令に準じた「電子取引データの保存環境」とは
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以下のケースは国税庁の「電子帳簿保存法一問一答」には明示されていないが、よくあるケースだ。電子帳簿保存法の内容に基づいて整理した。
ケース1
これまでは紙の請求書が郵便で届くのに時間がかかっていたので、先にメールでPDF形式の請求書を送ってもらうようにした。
上記のケースは電子取引に該当する。改正前は郵送で届いた紙の請求書を保管するルールだったが、改正後はデータが正となる。そのためデータで受け取った請求書のPDFファイルをサーバなどに保存することが必要だ。印章による押印は必須でないため、省略するか電子署名などで代替することができる。
ケース2
オンラインショップで文房具などの備品を購入した後、オンラインショップのWebサイトからPDF形式の領収書をダウンロードした。
上記のケースも電子取引に該当する。ダウンロードしたPDFファイルをサーバなどに保存し、検索可能な状態にすることが必要だ。印刷やファイリングをする必要はない。
ケース3
FAX(ファクシミリ)で届いた請求書を、複合機のスキャン機能でデータ変換して保存した。
最初に生成されたものが書面であるため、上記のケースは電子取引に該当しない。この場合はスキャナー保存要件の「見読性」を満たした状態でPDF形式などのデータに変換し、サーバやストレージなどのフォルダに適切に分類する必要がある。
ケース4
クラウドサービスから請求書や領収書をダウンロードした。
最初から請求書や領収書が電子データとして生成されたため、上記のケースは電子取引に該当する。ケース1と同様に解釈できる。
電子取引の判断基準の目安は
「電子取引に該当するかどうか」の判断基準をまとめよう。
- 電磁的方法で生成された取引書類かどうか
- 郵送書類をスキャンしてデータ化した書類は電子取引ではない(スキャナー保存)
- 電磁的方法で生成・送信された書類は電子取引に当たる
- どのような保存形式か(いずれも電子取引に当たる)
- PDF形式
- 画像形式(スクリーンショットを含む)
- 保存場所はどこか(いずれも電子取引に当たる)
- 会社のサーバ
- クラウドサービス
- PC(会社貸与)のローカルストレージ
- スマートフォン(会社貸与および個人使用)のローカルストレージ
典型的な電子取引データの保存方法は以下の通りだ。
- クラウドサービスから入手する
- サービスにサインインし、PDFファイルをダウンロードする
- メールで入手する
- 添付されたPDFファイルをダウンロードする
- メール本文の「請求書へのリンク」をクリックし、リンク先からPDFファイルをダウンロードする
- メール本文の「請求書へのリンク」をクリックし、画面に表示される請求書をPDFファイルで出力する
これまで紙でやりとりしていた書面が電子取引の保存要件に該当し、管理方法を見直す必要が生じる可能性は十分にある。書面保管を前提としたワークフローで運用していた企業は、このような業務が社内にどれだけあるのかを棚卸しして、宥恕(ゆうじょ)措置の終了までに備えてほしい。
次回は、電子取引データの保存要件を満たすシステム要件を整理し、どのように社内ルールを見直す必要があるかを解説する。
連載について
本連載は、会計とIT領域の豊富な経験を持つ公認会計士が、2022年1月施行の改正電子帳簿保存法の要点を解説する。「電子取引のデータ保存義務付け」など実務に影響する大きな改正を踏まえて、書面ベースの経理業務からペーパーレスを効率的に進める方法や、必要となる中堅・中小企業向けシステム選定と運用のポイントを紹介する。
原 幹(はら・かん)
公認会計士、公認情報システム監査人(CISA)。監査法人にて会計監査や連結会計業務支援、ITコンサルティング会社にてITを活用した業務改革支援に従事し2007年に独立。「経営に貢献するITとは?」というテーマをそのキャリアの中で一貫して追求し、公認会計士としての専門的知識と会計、IT領域の豊富な経験を生かした支援業務に従事。ベンチャー企業の社外役員としても多くの関与実績があり、コーポレートガバナンスの知識・経験も豊富。著書に『1冊でわかる!経理のテレワーク』(中央経済社)『ITエンジニアとして生き残るための会計の知識』(日経BP)など。
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「電子取引データ保存の義務化」に向けた準備と運用
本連載は、会計とIT領域の豊富な経験を持つ公認会計士が、2022年1月施行の改正電子帳簿保存法の要点を解説する。「電子取引のデータ保存義務付け」など実務に影響する大きな改正を踏まえて、書面ベースの経理業務からペーパーレスを効率的に進める方法や、必要となる中堅・中小企業向けシステム選定と運用のポイントを紹介する。
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